A 髄鞘染色(Klüver—Barrera染色)では前索,前索から側索にかけて広範な脱髄を認める。B 抗アクアポリン4(AQP4)抗体を用いた免疫染色では,病変部位において高度な染色性低下 整形・災害外科 頚髄C2—4椎体レベルにわたり,髄内にT2強調像で高信号を認める。一部では脊髄の腫大がみられる。を認める。― 594 ―ようになった11)。これまで多発性硬化症やアクアポリン4抗体陰性視神経脊髄炎スペクトラム障害と診断されていた症例の中に,MOG抗体関連疾患が一定数含まれていたものと推測されている。MOG抗体関連疾患は小児から高齢者まで幅広い年代で発症し,脊髄炎,視神経炎,脳炎,急性散在性脳脊髄炎などの表現型を呈する11)。 MOG抗体関連疾患の脊髄病変は典型的には横断性脊髄炎の病像を呈し,3椎体以上にわたる長大病変が出現する。しかし,特に高齢者においてはより短い病変がみられる場合がある11)。頚髄よりも下部胸髄や脊髄円錐に病変がみられることが多い11)。脊髄中心部に陰影がみられやすく,急性期には腫脹や造影効果を伴いやすい11)。Ⅴ神経サルコイドーシス1 疾患の概要 サルコイドーシスは乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫の出現を特徴とする,原因不明の多臓器疾患である。神経系への障害はサルコイドーシス全体の約3~10%にみられると報告されている12)。神経サルコイドーシスでは脊髄を含め脳神経,髄膜,脳実質,末梢神経など,神経系のあらゆる部位が障害されうる。2 画像所見と背景病理 神経サルコイドーシスによる脊髄障害は頚胸髄に起こりやすい13)。発症早期には病変部が造影さAB周囲などにも病変が出現しうる。 病理学的には,脊髄中心部から灰白質を巻き込んで不規則に広がる病変が多くみられ,軟化壊死が強く囊胞化をきたすことが特徴とされる8)。抗アクアポリン4抗体の免疫染色では血管周囲性に染色性が低下する8)(図4)。ⅣMOG抗体関連疾患1 疾患の概要 MOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein)は中枢神経に存在する髄鞘蛋白の一種であり,MOGに対する自己抗体である抗MOG抗体の存在により炎症や脱髄が惹起されることが知られる図3 視神経脊髄炎スペクトラム障害症例の頚髄MRI図4 視神経脊髄炎スペクトラム障害症例の脊髄病理(図3と同一症例)2 画 像 所 見AQP450.0μm
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