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AIを用いた脊椎脊髄疾患の画像診断の進歩ⅤⅤ Key words Deep learning, Automatic diagnosis, Spinal cord tumor 利益相反 なし*1)  Sadayuki ITO et al,名古屋大学大学院医学系研究*2)  Masahiro ODA et al,名古屋大学大学院情報学研する際に予想外の場所にある脊髄腫瘍の検出や診断を支援し,様々なMRI設定における微妙な変化を解釈し識別するためのツールが必要であると考える。 深層学習はコンピュータ自身が特徴量を探して学習を行う手法であり,機械学習の一種で12)~15),MRIデータは医療画像診断においてその診断精度を大幅に改善するために使用されてきた16)。しかし,脊髄腫瘍に対するMRIによる自動診断は未だ十分な実用化に至っていない。脊髄腫瘍は専門医でなければ診断が困難なことが多い希少疾患であるため,自動診断が実用化に至れば,脊髄腫瘍の見逃しが減り,早期診断が可能となり,専門医の負担が軽減されることが期待される。われわれはこれまでに,MRIデータを用いて,You Only Look Once(YOLO)version 3(v3)ソフトウェアで,高精度に神経鞘腫の位置を特定する自動検出システムを開発し,報告した17)。神経鞘腫だけでなく,より多くの脊髄腫瘍で自動検出が可能になれば,放射線科医の負担が軽減されると考える。整・災外66:657   665,2023―  657  ―伊藤 定之*1) 中島 宏彰*1) 町野 正明*1) 小田 昌宏*2) 森  健策*2) 今釜 史郎*1)は じ め に要 旨 脊髄腫瘍は頻度の低い脊髄疾患であり,MRIを用いても診断が困難な場合が多い。これらの腫瘍の見落としを減らし,診断精度を向上させるために,自動診断システムの導入が望まれる。MRIを用いた深層学習で脊髄腫瘍の自動検出・診断システムを開発した。症例数の多い神経鞘腫と髄膜腫の患者それぞれ50人と45人のデータを検討した。矢状面のT1強調像(T1WI)とT2強調像(T2WI)を用いて,物体検出,分類,学習,検証を行い,You Only Look Once(YOLO)version 4(v4)を用いて,自動検出・診断システムを開発し,精度を算出した。T1WI,T2WI,T1WI+T2WIに基づく自動検出精度は,それぞれ78.1%,87.1%,91.8%であった。T1WI,T2WI,T1WI+T2WIに基づく診断精度は,それぞれ76.4%,83.3%,84.1%であった。MRIを用いた深層学習で開発したシステムで神経鞘腫と髄膜腫の正確な自動検出と診断を実証した。本システムは,放射線診断の支援に有用であると考えられる。今後はそのほかの脊髄腫瘍の自動診断システムも開発する予定である。究科,知能システム学専攻Automated detection and diagnosis of spinal cord tumor using deep learning and magnetic resonance imagingAIを用いた脊椎脊髄疾患の画像診断の進歩 脊髄損傷,脊柱管狭窄症,椎体骨折などの脊椎疾患の診断には,MRIが有用である1)~5)。予期せぬレベルの腫瘍や無症状の腫瘍が偶然に存在することがある6)~8)。それゆえ,いくつかの症例ではこれらの腫瘍が見落とされている可能性がある9)。脊髄腫瘍の読影は特にマルチモーダルMRIプロトコルの場合には時間を要する。さらに,診断は個々の放射線科医の判断に依存する10)11)。したがって,放射線科医や脊椎外科医がMRIを読影科,整形外科学深層学習を用いたMRIでの脊髄腫瘍自動診断システム28

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