外傷治療のシステム* Yoshihiko TSUCHIDA,湘南鎌倉総合病院,外傷セⅠ湘南鎌倉総合病院外傷センターにおけるⅡⅡ土田 芳彦*要旨臨時手術が主体になる外傷と予定手術が主体になる変性疾患ではスケジュールの立て方が異なるため,「整形外科外傷専用のユニット」が必要である。湘南鎌倉総合病院外傷センターは外傷整形外科医療に特化し専用施設を有している。その設備は外傷整形外科外来や病棟,手術室,リハビリテーション室などを備え,スタッフも専属医師や理学療法士,ハンドセラピストが多数在籍している。「整形外科外傷専用のユニット」として,「外傷再建センター」と「骨折センター」の2つが考えられるが,それぞれに必要な治療体制がある。外傷再建センターは高度な治療提供を常に必要とするため大きなスケールが必要だが,骨折センターは緊急性が少なく比較的小規模でよい。日本で外傷整形外科治療を適切に行うためには,これら外傷再建センターと骨折センターの設立,教育体制の充実,リーダーの育成,労働環境の改善が必要だが,その実現には上層指導部の理解と積極的な行動が不可欠である。 筆者が大学病院救急部における外傷整形外科医としての職を辞し,民間病院に整形外科外傷センターを構築しようとしたのは2006年のことであった。その理由は大学病院が実地医療において「あまりにも手狭だった」からである。 その後紆余曲折し,2013年に湘南鎌倉総合病院に赴任し,2022年にようやくインフラ(専用施設)が整うこととなった。非常に長い期間を要したが,想定範囲内のことである。 構築された専用施設は,1階に外傷整形外科外来が5ブースあり,X線透視室も備わっている。How can we appropriately provide orthopaedic trauma care in Japan ? considering the Shonan Kamakura General Hospital Trauma Center as a modelンターKeywordsWork style reformOrthopaedic trauma unit, Education, また3階に外傷整形外科病棟が70床と専用カンファレンス室があり,5階に専用手術室が5室,そして6階に専用リハビリテーション室がある。 スタッフは2024年現在,外傷整形外科専属医師が13名,理学療法士6名,ハンドセラピスト4名が在籍しており,年間2,600件以上の手術を施行し,そのうち重度四肢外傷は50~70例程度である。 湘南鎌倉総合病院外傷センターは整形外科外傷治療に特化しており,一般整形外科外来業務はない。治療対象患者は救急車による搬送例か,他病院からの紹介患者である。 治療法は独自に作成したマニュアルによって統一され(図1),担当医が初期診療をもとに病態を分析し,プレゼンテーションスライドを作成する。スライドは全例Workplaceなるネットワークにuploadされ,オンラインで質疑応答がなされる(図2)。そして,月曜日から土曜日までの午前7整・災外67:449 454,2024― 449 ―外傷医療と教育外傷治療のシステム日本で外傷整形外科治療を適切に行うにはどうすればよいか?―湘南鎌倉総合病院外傷センターをモデルに考える―
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