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細菌感染症Ⅰ*Osamu YAMASAKI,島根大学医学部,皮膚科学講座4壊死性筋膜炎壊死性筋膜炎,フルニエ壊疽,レンサ球菌,抗菌薬301909山﨑  修*図1Streptococcus pyogenesによる壊死性筋膜炎。皮膚壊死,脂肪織の露出を認める。臨床像(43歳,男性)第章 細菌感染症1.概要 壊死性筋膜炎(necrotizing fasciitis)は電撃的な経過で強い全身症状とともに浅筋膜を中心とする皮膚,皮下組織の壊死を伴う重症の皮膚軟部組織感染症である1)2)。1980年代から重症のレンサ球菌感染症の再興が注目され,劇症型レンサ球菌感染症とよばれているtoxic shock-like syndrome(以下TSLS)のひとつの症状である3)。しかしながらA群レンサ球菌以外でも複数菌の関与する壊死性筋膜炎も多い。皮膚科領域のみではなく多数の診療科でも報告され,実際にたずさわることが多い。壊死の深さにより,壊死性蜂窩織炎(gangre-nous cellulitis),壊死性筋膜炎,壊死性筋炎(myo-necrosis)となり,それらはオーバーラップしていることもあり,壊死性軟部組織感染症として包括的な病名で記載されることもある4)。2.臨床症状 初期には蜂巣炎病変であり,びまん性の潮紅,腫脹,浮腫である。急速に水疱,血疱,表皮剝離,紫斑,点状出血,壊死などを生じる(図1)。壊死部では無痛性となる。水疱や壊死の後に急速に潰瘍化することもある。高熱,激烈な関節痛,筋肉痛,悪心,嘔吐,全身倦怠感を伴い,進行すると血圧低下,呼吸困難,肝障害,腎障害,消化器症状,中枢神経症状などを呈する。3.診断・検査 典型的な皮膚症状で診断は可能であるが,難しい場合は筋膜の直接観察とfinger testが重要である。局所麻酔下に小切開を加え,指または鈍なゾンデを挿入すると,容易に皮下を水平方向に進めることが診断の目安となる5)。筋膜の色調不良,出血の欠如,壊死組織の存在,切開後の濁ったコメのとぎ汁様の滲出液などが壊死性筋膜炎の診断を示唆する。凍結切片を用いた筋膜生検は,早期診断のために提案されているが,実施と分析に時間がかかり,実用的ではない。 画像検査ではX線,CT,MRIなどで病変の深さ,範囲,ガスの貯留の有無を確認する。血液検査では白血球増多,血小板増多,肝酵素の上昇,CRPの上昇がみられる。播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,以下DIC)関連,レンサ球菌関連酵素などの血液検査病態

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