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ⅡⅢ第章 細菌感染症図291230472時間の間に炎症が広範囲になり,皮膚が変色し,その後紫斑になり,水疱が現れる。菌血症が頻繁にみられ,転移性感染巣が発生する可能性がある。非常に急速に,皮膚は明らかに壊死になり,広範囲に及ぶ。 緊急のデブリードマン,全身管理,大量の抗菌薬が原則である。感染の進行を止めるには,外科的デブリードマンを早期かつ積極的に行う必要がある。デブリードマンは病変部を皮膚壊死部,発赤部,非感染部に分けて考えていく14)。壊死部は電気メスで筋膜まですべて切除する。発赤部は皮下に壊死が及んでいる場合があるが,皮膚は回復可能と考え,切開に留める(図2)。非感染部は慎重に経過観察し,壊死が疑われる場合は翌日以降,追加のデブリードマンを加える。開放創として1~2週間後を目安として植皮術を行う。 抗菌薬は混合感染も多く,緊急を要するので多剤併用のempiric therapyを行う。最初に広域スペクトラムの抗菌薬を使用し,デブリードマン時の滲出液や組織の培養結果と臨床的効果をみて,不要な抗菌薬を中止し,より狭いスペクトラムの抗菌薬に変更するデ・エスカレーションが適応になる。米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America,以下IDSA)のガイドライン15)を示す(表3)。フルニエ壊疽では,デブリードマン時に人工肛門造設術も選択肢であるが,その適応については慎重に決定する。広範囲のデブリードメント8.TSLSとの関係 S. pyogenesによる上気道感染,創傷感染に続発し,敗血症,壊死性筋膜炎・筋炎を併発し,急激にショック症状・多臓器不全などを伴う重篤な病態が進行する場合は,黄色ブドウ球菌によるtoxic shock syndrome(以下TSS)と同様にショックを伴い多臓器不全に陥ることより,TSLS,strepto-coccal TSSとよばれる。本邦では劇症型A群レンサ球菌感染症として知られている。発症機序は不明であるが,菌体表層成分であるM蛋白とS. pyogenesの外毒素(Streptococcal pyrogenic exo-toxin A,B,Cなど)によるとされている。TSLSは高率に壊死性筋膜炎を伴うため,壊死性筋膜炎に伴う種々の症状(血圧低下,DIC,肝障害など)があり,S. pyogenesが検出されれば,TSLSの診断基準を満たすことになる。TSLSは壊死性筋膜炎を伴わない全身の発疹と落屑だけの例もある。またA群以外のB群やC群レンサ球菌によるTSLSの報告も散見される。TSLSは高度な敗血症をきたすため確定診断は容易であるが,病態は急速に悪化するため,診断基準に拘束されることなく早期の診断が必要である。1.注射薬❶ 抗菌薬a)混合感染 頭頸部,腹部,会陰,または婦人科領域の好気性菌と嫌気性菌の混合感染症の場合,確実な治療はグラム染色,細菌培養の感受性結果に基づく必要がある。グラム陽性菌および腸内細菌科における抗菌薬耐性のため,特に患者が最近入院または抗菌薬で治療された場合は,より広域な抗菌薬の選択が必要になる。 耐性の出現は地理的に決定され,特異的であるため,治療は地域の抗菌薬によっても導かれるべ病態と対応した治療の基本方針病態からみた治療薬の意義

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