760152図3 a :角層直下の水疱で好中球を混じる。 b :Neutrophil elastase染色;好中球の表皮内から角層下への浸潤像がみられる。abⅡⅢ第Ⅶ章 膿疱症病理組織像り,両者の合併例にはIgA単クローン性免疫グロブリン血症が高率に認められている6)7)。少なくとも一部の症例では,合併症と共通の免疫異常の基盤を有している可能性が推察される。薬剤や先行感染との関連が示唆されている症例や悪性腫瘍との合併例の報告もあるが,いずれも少数であり一定の傾向はない。そのなかでは,Mycoplasma pneumoniae感染と関連する症例が複数報告されており,特に若年者において多く,躯幹が好発部位で,再発が少ないという特徴がある3)8)。 角層下膿疱症の鑑別診断として,IgA天疱瘡や膿疱性乾癬があげられる。角層下膿疱症タイプのIgA天疱瘡と角層下膿疱症は,臨床的にも組織学的にも鑑別が不可能4)で,確定診断のために蛍光抗体法は必須である。膿疱性乾癬(特に環状型)との鑑別もときに困難であり,Kogojの海綿状膿疱の有無や全身症状の有無などを踏まえて総合的な判断が必要となる症例も存在する。 薬物療法が治療の中心である。まれな疾患であり,治療法について比較試験などは行われておらず,治療薬は経験的な治療成功例の集積に基づいている。生活上の悪化因子についても明らかになっていない。病態と対応した治療の基本方針病態からみた治療薬の意義1.外用薬❶ 副腎皮質ステロイド外用薬 副腎皮質ステロイド外用薬のみで軽快した症例も報告されている。角層下膿疱症における膿疱は無菌性であり,組織学的に表皮内に好中球が浸潤し角層下に集積するとともに,真皮上層にはリンパ球の浸潤も認められる。そのためステロイドによる免疫抑制作用やサイトカインやケモカインの抑制作用などが効果的に働くと考えられる。下記の内服療法に副腎皮質ステロイド外用療法を併用することもよく行われている。副腎皮質ステロイド以外の外用薬(タクロリムス水和物外用薬など)については報告が少なく,現時点で効果を評価できるものはない。2.内服薬❶ ジアフェニルスルホン SneddonとWilkinsonの最初の論文でも有効性が述べられており,現在まで内服の第一選択薬である。ジアフェニルスルホン(DDS)は,ジヒドロ葉酸の合成を阻害するスルホンアミド様の作用をもち,微生物の葉酸合成を阻害する抗菌薬としての作用のほかに,抗炎症作用も有し,適応外使用を含めさまざまな皮膚疾患に用いられてい
元のページ ../index.html#10