1蕁麻疹*Hayato MIZUNO & Akio TANAKA,広島大学大学院医系科学研究科,皮膚科学65244水野 隼登* 田中 暁生*蕁麻疹,アレルギー,抗ヒスタミン薬,副腎皮質ステロイド薬,オマリズマブ 蕁麻疹は日常診療でよく遭遇する疾患であり,瘙痒を伴った一過性の浮腫性紅斑や膨疹が出没を繰り返すことを特徴とする。その病態としては,一般に皮膚マスト細胞や好塩基球が何らかの機序により脱顆粒し,皮膚組織内に放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質が皮膚微小血管と神経に作用して血管拡張(紅斑),血漿成分の漏出(膨疹)と痒みを生じることが中心である(図1)。しかし,皮膚マスト細胞や好塩基球が脱顆粒に至る刺激や分子メカニズムに関しては不明な点が多く,現在でも活発に研究が行われている。 蕁麻疹の誘発機序としてはⅠ型アレルギーが広く知られているが,実際には原因となる抗原を同定できることは少ない。一方,蕁麻疹にはⅠ型アレルギー以外の物理的刺激や薬剤,運動,体温上昇などに対する過敏性によるもの,誘因なく自発的に膨疹が出現するものなどがある1)。 その病型によって治療方法や予後,日常生活における対処の仕方は大きく異なるため,正しい病型診断が重要である。で,地図状や環状の膨疹(図2‒a,b)が毎日のように出没する。多くは数十分~数時間以内に消退し,個疹が数日持続することは少ない。医療機関を受診する蕁麻疹のなかではもっとも多い2)。 一部では感染,食物,疲労,ストレス,IgEまたは高親和性IgE受容体に対する自己抗体などが背景,悪化因子となり得るが,病態のすべてを説明できるものではない。 急性蕁麻疹では上気道などの一過性の細菌・ウイルス感染に伴うものがあり,この場合はしばしば感染症が軽快することによって蕁麻疹も消失する。また原因は特定されなくても適切な治療のもとに1カ月以内に治癒する例が多い3)。一方,慢性蕁麻疹は夕方から夜間にかけて症状が出現,悪化する症例が多く,基本的に原因の特定は困難で治療期間は数カ月~数年にわたる。病態第Ⅱ章 蕁麻疹・血管性浮腫Ⅰ1.特発性の蕁麻疹 詳細な病歴聴取を行っても特定の誘因なく自発的に膨疹が出現していることが判明した場合は,特発性の蕁麻疹と判断する。発症してからの期間が6週間以内のものを急性蕁麻疹,6週間を超えたものを慢性蕁麻疹とよぶ。皮疹の形はさまざま2.刺激誘発型の蕁麻疹 特定の刺激により症状が誘発されるもので,症状は刺激の有無により1日のうち何度も出没することもあれば,数日~数カ月間現れないこともある。アナフィラキシーショックを呈するものも含まれる。❶ アレルギー性の蕁麻疹 食物,薬品,植物,昆虫の毒素などに曝露されることで生じる。抗原物質に対する特異的IgEを介した即時型アレルギー反応で,通常は抗原への曝露後数分から数時間以内に生じる。 しかし,アレルギー性の蕁麻疹は蕁麻疹患者全体に占める割合としてはかなり低く,本邦での検
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