65446図3ab第Ⅱ章 蕁麻疹・血管性浮腫癒合傾向のない膨疹や紅斑射,外用により誘発される蕁麻疹である。外来物質による非アレルギー性の蕁麻疹の一種だが,必ずしも構造の類似しない複数のNSAIDsに対しても過敏性を示すことが多い。原因物質に曝露後膨疹が現れるまでの時間には数分~数時間の幅が認められる。また,これらの物質は単独で蕁麻疹を誘発するだけでなく,慢性蕁麻疹や食物依存性運動誘発アナフィラキシーなど他の蕁麻疹の増悪因子としても作用することがある6)。❺ 物理性蕁麻疹 皮膚表面の機械的擦過,寒冷曝露,日光照射,温熱負荷,圧迫,水との接触,振動などにより生じる。刺激の種類によりおのおの機械性蕁麻疹,寒冷蕁麻疹,日光蕁麻疹,温熱蕁麻疹,遅延性圧蕁麻疹,水蕁麻疹,振動蕁麻疹とよぶ。❻ コリン性蕁麻疹 入浴,運動,精神的緊張など,発汗や発汗を促す刺激が加わったときに生じる。小児から30歳台前半までの成人に好発し,皮疹の多くは粟粒大~小豆大の癒合傾向のない膨疹や紅斑(図3‒a,b)である。これらの皮疹は痒みを伴うことが多いが,ピリピリした痛みのこともある。皮疹は出現後数分~2時間以内に消退することが多いが,眼瞼・口唇に血管性浮腫を伴うこともある7)。3.血管性浮腫 皮膚・粘膜の限局した範囲に生じる深部浮腫で,数日以内に跡形なく消退する。顔面,特に口唇,眼瞼に好発し,強い気道浮腫を生じると窒息の危険性がある。突然出現しては消退する経過は他の蕁麻疹と同様であるが,必ずしも痒みはなく,皮疹は2,3日持続することが多い。詳細は血管性浮腫の項を参照いただきたい。4.その他の蕁麻疹および蕁麻疹類似疾患 前述のいずれにも当てはまらない蕁麻疹類似疾患に分類される疾患群がある。❶ 蕁麻疹様血管炎 皮疹の性状と経過は慢性蕁麻疹に似ているが,皮疹が24時間以上持続し,皮疹消退後に落屑や色素沈着といった器質的変化を伴う。病理組織学的に血管炎の像がみられ,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)に合併・移行する例がある8)。❷ 色素性蕁麻疹 皮膚局所にマスト細胞の過剰な集簇と色素沈着を認める疾患で,多くは多発性に出現する。皮疹部を擦過するとその部位に一致して膨疹を生じるダリエ徴候は色素性蕁麻疹の診断の手がかりとなる。
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