076372022045T
6/10

1乾癬*Akihiko ASAHINA,東京慈恵会医科大学,皮膚科710102朝比奈昭彦*皮膚免疫疾患,病態,外用療法,全身療法,生物学的製剤 乾癬は,何らかの遺伝的素因にさまざまな環境因子が複雑に関わることで,免疫応答の異常による皮膚の炎症を生じたものである。炎症が悪循環に陥ることで,慢性の経過をたどる。その病態には以下に述べる側面がある。 乾癬の皮疹部における表皮の肥厚と落屑は,表皮角化細胞の過剰な増殖を反映する1)。角化細胞の細胞周期(cell cycle)は正常の1/8まで短縮し,表皮幹細胞のほぼすべてが増殖サイクルに入る。分裂した細胞は基底層から表皮の上層まで急速に移動し,角化が不完全なまま剝がれ落ちる。表皮交代時間(turnover time)は,乾癬では5~6日と正常の約1.5カ月に比べて著しく短縮している。皮増殖や炎症,抗菌ペプチド産生をもたらす。特にIL—22は角化細胞にSTAT3を誘導して増殖させ,正常な分化を抑制する。一方,IL—17AとIL—17F(特に前者)は角化細胞から各種の炎症性サイトカインやケモカインの産生を誘導して炎症反応を惹起する。刺激を受けた角化細胞が産生するCCL20は,その受容体であるCCR6を発現する骨髄DC(myeloid DC,以下mDC)やTh17をさらに浸潤させ,CXCL1やCXCL8(IL—8)は好中球を皮内に遊走させる。 mDCに代表される抗原提示細胞は,IL—23を産生することでTh17を活性化する。さらにmDCはTNF-αや一酸化窒素合成酵素(iNOS)を多量に産生して炎症に関わるため,TIP(TNF-/iNOS-producing)-DCともよばれる2)4)7)。TNF-αが活性化mDCによって産生され,mDC自らもそのTNF-αでオートクライン機構により活性化されることから,TNF-αをIL—23より上流のサイトカインと位置づける考えもある。しかしながら,TNF-αはmDCのみならず,T細胞や角化細胞を含めて多くの細胞が産生し,IL—17やIL—22とともに角化細胞を刺激するなど,上流から下流まで幅広く炎症・免疫反応に関わる3)~5)。病態第Ⅴ章 炎症性角化症・角化症Ⅰ1.表皮角化細胞(ケラチノサイト)の2.炎症・免疫応答の活性化 乾癬の皮疹部には,樹状細胞(dendritic cell,以下DC)やT細胞など多数の免疫担当細胞が浸潤する。角化細胞に増殖反応性の亢進があるとしても,その増殖や炎症を引き起こすのは,液性因子,特に,主に活性化T細胞が産生するサイトカインであると考えられている2)~7)(図1)。 皮疹部に浸潤するヘルパーT細胞(以下Th)は主にTh17であり,Th17が産生するIL—17A,IL—17FとIL—22が協調して角化細胞を刺激して,表増殖と分化異常3.T細胞に関する新しい知見 獲得免疫系のT細胞にはThのほかにTc(CD8陽性のcytotoxic T細胞)があるが,乾癬皮疹の表皮内にはTcの浸潤が目立ち,何らかの抗原に最初に反応するのがTcである可能性が指摘されている。また,抗菌ペプチドのLL—37やメラノサイ

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る