炎症性角化症・角化症103711図1乾癬は,樹状細胞やT細胞が関わる免疫病であり,表皮角化細胞の増殖と炎症を引き起こすのは,液性因子,特に活性化T細胞が産生するサイトカインと考えられている。IL—23/Th17軸の役割がもっとも大きい。[IL—22産生T細胞のうちIL—17Aを産生しないものはT22(Th/c22)とよばれる]pDC:plasmacytoid dendritic cell(形質細胞様樹状細胞),mDC:myeloid DC(骨髄樹状細胞),TIP-DC:TNF- and iNOS-producing dendritic cell,ILC3:group 3 innate lymphoid cell(3型自然リンパ球),MAIT:mucosal associated invariant T cell,NETs:neutrophil extracellular traps(好中球細胞外トラップ)(筆者作成)皮膚科の臨床 Vol.64 No.5 2022乾癬の免疫学的病態ト由来抗原のADAMTSL5は,T細胞の活性化をもたらす自己抗原の候補である8)。IL—17産生能を有するTh17とTc17のうち,Tc17は皮疹の軽快後もレジデントメモリーT細胞として皮内にとどまり,皮疹の再燃に関わる9)10)。 一方,乾癬の皮疹部では,炎症反応を抑制する制御性T細胞(以下Treg)の機能の低下が知られている。また,乾癬の皮疹部では,IL—23の作用でTregのFoxp3発現が抑制されてIL—17を産生する炎症性Tregとなり,乾癬皮疹を増悪させると考えられている9)11)。血管内皮細胞の接着分子の発現亢進は,炎症細胞の皮内への浸潤につながる。Ⅴ4.血管増殖と血管内皮細胞の活性化 乾癬の皮疹部では,真皮乳頭部の毛細血管の増殖・新生や拡張を認め,活性化した角化細胞由来のVEGFやTNF-α,ならびに活性酸素などでこれが惹起されると考えられている。TNF-αによる5.乾癬のトリガーと自然免疫系の関与 乾癬においてIL—17Aを産生・放出する細胞は,獲得免疫系の細胞であるTh17あるいはTc17に限らず,自然免疫系の細胞であるγδT細胞やILC3細胞,好中球や肥満細胞なども知られ,IL—23に依存せずにIL—17Aを産生するものも含まれる7)12)。好中球については,cathepsin GがIL—36,PR3がLL—37をそれぞれ切断して活性化し,また活性酸素が角化細胞の増殖や血管新生をもたらす。さらに,好中球が崩壊して形成された好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps,以下NETs)も炎症反応を助長する13)。 表皮への刺激や傷害が皮疹を誘発する仕組みもわかってきた2)7)13)(図1)。角化細胞が抗菌ペプチ
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