2角層下膿疱症膿疱症ⅠⅦ*Megumi KISHIMOTO & Mayumi KOMINE,自治医科大学,皮膚科学講座151759図1環状を呈して拡大し,中心治癒傾向を示す。図2下半分に膿が溜まっているようにみえる。岸本 恵美* 小宮根真弓*角層下膿疱症,好中球性皮膚症,ジアフェニルスルホン臨床像(典型例)臨床像(膿疱) 角層下膿疱症は,好中球性皮膚症のひとつに分類されるまれな疾患で,1956年にSneddonとWilkinsonが6例をまとめて報告したのが嚆矢である1)。典型例では,躯幹,間擦部,四肢屈側などに無菌性,非毛孔性の膿疱が出現し,環状や蛇行状を呈して拡大する(図1)。個疹は初めから膿疱で始まるか,または水疱で始まり膿疱化し,それらが比較的速やかに痂皮を形成する。中心治癒傾向を示しながら,再発を繰り返して慢性に経過することが多い。汎発性膿疱性乾癬や急性汎発性発疹性膿疱症と異なり,発熱などの全身症状を伴うことは少ない。膿疱は,half-pustular,half-clear2)またはhypopyon(前房蓄膿)-like3)と表現される弛緩性膿疱である(図2)。中年以降の女性に好発するが,小児例も報告されている2)。組織学的には,角層下の好中球の集積が特徴的であり,ときに好酸球も混在する(図3—a)。一般的には海綿状態や棘融解はみられず,下床の表皮には変化が乏しい(ただし古い病変では棘融解を伴う症例もある)。好中球の表皮内浸潤像もみられる(図3—b)。 角層下膿疱症の発症基盤として,ほかの好中球性皮膚症と同様に好中球の機能異常が推測されているが,病因は不明である。痂皮や水疱中に,好中球の活性化や走化に関わるTNF-α,IL—8,補体フラグメントC5aが認められ4)5),それらの関与も示唆されるが詳細な病態は解明されていない。つまり,好中球を遊走させるトリガーはわかっていない。関節リウマチや全身性エリテマトーデス,Sjögren症候群などの膠原病,甲状腺疾患,炎症性腸疾患,単クローン性免疫グロブリン血症や多発性骨髄腫などの血液疾患との合併症例が報告されている4)5)。また同じく好中球性皮膚症である壊疽性膿皮症との合併例も複数報告されてお病態第Ⅶ章 膿疱症
元のページ ../index.html#9