皮疹をみたときの診断プロセス過性という特徴をもつ「膨疹」というのもある。また,「原発疹」「続発疹」としてあげられる発疹以外にも,「疱疹」や「苔癬化」といった特殊な用語が存在する。 発疹を把握することで直ちに診断に結びつく場合がある。例えば発疹が「膨疹」なら診断は蕁麻疹だし,「苔癬化」なら慢性湿疹である。そこまで対応がよくなくとも,「囊腫」なら多くの場合は粉瘤で,鑑別は囊腫を形成する腫瘍,「疱疹」ならまず単純疱疹か帯状疱疹である。「白斑」の場合は,先天性か後天性か,限局性か汎発性か,色素脱失が完全か不完全かの条件を組み合わせて診断を絞り込むことができる。発疹学は皮膚科学のイロハだから,まずはそこから頑張ってください。ICに呼ばれてしまったので失礼するよ。(退場)ありがとうございました。……「あた皮膚」読み直すかな。ちょっと,お話ししてもいいですか。はい,大丈夫です。(紳士的な雰囲気の先生だ)。若手先生は最初に「皮膚科医は皮疹を見ればすぐに病名がわかる」云々と言いましたが,この認識は間違っています。白癬を見た目だけで診断していたら皮膚真菌症を専門にしている教授に叱られますぞ。はぁ,すみません。(ん? 揚げ足取り?)。70270214ヨウガク先生の話 「発疹」という言葉は,トウヨウ先生が説明したように一般に「皮膚に現れる変化の総称」とされているが,異なる認識もある。若手先生が持っている「あたらしい皮膚科学」の「発疹学」の項1)には「皮膚に現れる病変を総称して皮疹(skin lesion)といい,特に比較的急速に出現した皮疹を発疹(eruption)という」と書いてある。トウヨウ先生は発疹のほうが広い概念だとしたが,この考え方だと皮疹のほうが広くなる。また,この教科書では「発疹学」の項の英語タイトルは「description of skin lesion(皮疹の記載)」であって「description of eruption(発疹の記載)」とはしていない。 上述のごとく「発疹」という言葉が意味するところは人によって違うため,用語としては「皮疹」が好まれる傾向にある。例えば,アトピー性皮膚炎診療ガイドライン20212)では「皮疹」は163カ所で出現するが,「発疹」は「カポジ水痘様発疹症」以外では使われていない。 「発疹学」という言葉には少なくとも60年以上の歴史があるが,このように用語や病名として定着している場合を除いて「発疹」という言葉を避け,皮膚病変の総称としては「皮疹」あるいは「skin lesion」を直訳した「皮膚病変」そのものを使ったほうが紛れが少ないと思われる。 さて,若手先生の希望する診断プロセスの話に移る。エキスパートの仕事を代行する場合,ア
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