*Akemi YAMAMOTO,旭川医科大学,皮膚科学講座KEY WORDS臨床症状から病名を推定して,その病気だったらあんな病理組織像が得られるはず,とわかったうえだと適切な生検ができるよ。それに,病名までは推定できなくても,皮疹から病変の深さなどを推定して生検すると診断に結びつく検体が得られやすいよ。例をあげて説明するね。 患者にステージの異なる皮疹がみられた場合,どの皮疹を生検するか適切に判断することが求められる。図1は発熱などの全身症状を伴って全身に皮疹が出現した症例である。症状から汎発型の膿疱性乾癬を考え生検するとき,図1の矢印で示す2カ所,A,Bのうちより適切な生検部位はどちらだろうか。正解はBである。本症の病理組織学的所見のうち厚生労働省の指定難病の対象疾患として認められるために証明することが必須となっているのは,Kogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱であり,これは活動性のある早期の小さな膿疱を生検しなければ得られない所見である。拡大して大型の膿疱となったものや,痂皮を付した古い皮疹では浸潤していた好中球は角層内に移行してしまっており,Kogoj海綿状膿疱の所見は得られない(図2)。 同様のことは水疱症でもいえる。水疱性類天疱瘡も時間が経った古い皮疹では,当初は表皮下水疱であったものが,再上皮化が進むにつれて表皮内水疱となってしまう。落葉状天疱瘡も顆粒層に生じていた棘融解性の水疱は,時間が経過すると角層内の位置に移行してしまうので同定が難しくなる。IgA血管炎なども新しい皮疹を選ばないと蛍光抗体直接法でIgAの沈着が得られず,診断に苦慮することがある。皮疹をよく観察し,疾患に特徴的な病理組織像が得られる個疹から生検することが求められる。病理組織診断,皮膚生検,顕微鏡病理像を想像しながら皮疹をみることが大切と言われましたが,どういうことかよくわかりません。山本 明美*72672638ベーシックステージ皮疹のみかた ②皮疹から想像する病理像~病理組織所見の特徴を踏まえた生検のコツ~生検に適切な皮疹の選択Ⅰ
元のページ ../index.html#6