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Ⅱ外陰部に使用できる外用薬3治療の実際984984186論文のポイント⃝外陰部皮膚は角層が薄く湿潤しやすい。また粘膜との境界部位であり刺激に敏感である。⃝外用薬の経皮吸収量は他部位に比べて多く,副作用が出やすい傾向にある。⃝皮膚萎縮,潮紅,感染症などの副作用に注意しながら外用薬を選択していく必要がある。⃝粘膜もしくは外陰部には使用不可となっている外用薬があることに注意する。*Atsuyuki IGARASHI,いがらし皮膚科東五反田外陰部,粘膜,外用薬,経皮吸収 外陰部は皮膚と粘膜の境界領域である。間擦部のひとつであり皮膚は薄く,デリケートゾーンといわれるように,他の部位に比べてデリケートで刺激に敏感である。女性では外陰部皮膚は性ホルモンの影響を受け,月経や妊娠などに伴って生理的に変化するといわれている。 また,尿道口や腟,肛門に近いためこれらからの分泌物や発汗により蒸れやすく,こうした湿潤環境は細菌や真菌の増殖を助長するため感染症を発症しやすい状況にある。 成人では外陰部には陰毛が存在し,これらが間擦部の摩擦を減じ保護する役割を果たしている一方,毛の存在は湿潤環境を助長するため,細菌などの増殖による感染症のリスクがある。 皮膚が薄く角層も少ないため,外用薬の経皮吸収量は多く効果が出やすい反面,副作用のリスクも高くなる。ステロイド外用薬の部位別吸収率についてはFeldmannの有名な論文があるが,前腕内側での経皮吸収を1とした場合,陰囊では42倍と頰部の13倍に比べても著しく高い1)。 以上から,外陰部の外用療法では刺激症状,皮膚萎縮や潮紅,細菌・真菌感染症に注意するべきである。 詳しくはコラム「亀頭部は皮膚? 粘膜?」を参照いただきたい。特にタクロリムス軟膏(プロトピック®軟膏)は「皮膚以外の部位(粘膜等)及び外陰部には使用しないこと」との適用上の注意記載がある。また,尿素製剤は粘膜機能を障害するため粘膜には禁忌もしくは使用しないこととなっている。一方,サリチル酸ワセリンやヘパリン類似物質含有製剤には粘膜の使用に関する記述はない。五十嵐敦之*1)外陰部外用療法における留意点Ⅰ外陰部の皮膚の特性

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