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4性感染症の診療3)性感染症の診断Ⅰ梅毒の診断と検査10161016218論文のポイント⃝性感染症の診断は,性感染症への罹患について疑うことから始まる。⃝性感染症のなかには問診と臨床的な所見観察のみで診断を下せるものもある。⃝他疾患との鑑別を要する場合などに,性感染症としての診断を確定し,もっとも適切な治療の選択をするために必要な検査を行う。⃝性感染症によって,診断や治癒の判定に必要な検査項目に違いがあるので,それぞれの性感染症の病原体の臨床的性質と発症病理を理解したうえで適切な検査を選択する必要がある。*ShinichiroYASUMOTO,安元ひふ科クリニック性感染症,診断,検査,検査値の解釈 性感染症を診断するということは,診断する医師にとって,患者の身体的なプライベートパーツを診察する必要があるとともに,性感染症への罹患やその原因となった背景などの患者個人の社会的なプライベートパーツ(個人情報など)に触れることを意味するため,慎重かつ確実に行うことが要求される。性感染症として扱われる疾患のなかには,問診と臨床症状の観察のみから診断を確定できるものもあるが,性感染症以外の疾患との鑑別が必要な場合や,梅毒など診断のみならず治癒の判定にも検査値の評価が必要なものもある。性感染症をなるべく見逃さないためには,常に性感染症への罹患を疑ってプライベートパーツの皮膚粘膜病変を診察することが重要である。 ここでは皮膚科領域で遭遇する頻度が高いと思われる梅毒,性器ヘルペス,尖圭コンジローマを中心に診断に必要な検査内容と診断に至るまでの手順について解説し,その他の性感染症の診断と検査についても説明する。 梅毒は近年本邦でその症例数が毎年増加傾向にあり,社会的な注目を浴びている性感染症である。感染が成立してから時間が経過するに従って,感染局所の硬結,潰瘍,続いて菌血症に伴う多彩な皮膚粘膜病変を全身各所に生じる1)2)。伝統的に感染初期の梅毒トレポネーマが侵入した部位を中心に病変が生じる時期を第1期梅毒とよび,病原体の全身への波及による皮疹が生じる時期を第2期梅毒とよんでいるが,局所と全身の皮疹は重ねて生じることもあり,また,他者への感染を生じやすい時期でもあることから,最近では両者をあわせて初期梅毒(感染後概ね1年以内)とよぶことがある。肉芽腫形成や神経,血管系の不可逆的病変が生じるが,伝搬の可能性安元慎一郎*はじめに

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