11 脳腫瘍には,頻度の高いものから非常にまれなものまで多数の組織型がある。2022年の現時点では,脳腫瘍は“WHO Classification of Tumours, 5th edition:Central Nervous Sys-tem(CNS)Tumours”1)(WHO 2021脳腫瘍分類)に基づいた診断を行うことが標準的である。 前分類であるWHO 2016脳腫瘍分類では,それ以前の病理組織学的な形態診断に分子診断による遺伝子変異の情報を加味した統合診断が取り入れられ,大きなパラダイムシフトがあった。WHO 2016脳腫瘍分類の発表後も,脳腫瘍診断に関する最新の知見が日々発表・蓄積されていく中で,WHO 2016脳腫瘍分類の確立に関わった専門家グループは新分類の改訂に先立ちそれらの新たな情報をcIMPACT—NOW(the Consortium to Inform Molecular and Practical Approaches to CNS Tumor Taxonomy—Not Official WHO)Updateという形で公開した。WHO 2021脳腫瘍分類にはcIMPACT—NOW Update 1~7にて発表された知見が取り入れられ,結果として前分類よりもさらに分子診断の重要性が増したものとなった。WHO 2021脳腫瘍分類の概要については本誌の趣旨とは大きく異なるため本稿での記載は行わないが,成書1)はもちろん簡潔なサマリー2)3)を参照することでも要点を把握できるため,脳腫瘍の画像診断を行う際には参照して,その概要を把握しておくことが望ましい。 WHO 2021脳腫瘍分類に基づいた脳腫瘍診断においては,腫瘍の種類によっては顕微鏡的観察をもとに行う形態診断よりも分子診断の所見が優先され,またそのような腫瘍の正確な診断には分子診断が必須となっている。しかし2022年の現時点においてそのような分子診断をすべて自施設内で施行可能な施設は我が国ではかなり限られていると予想する。また,これまで様々な脳腫瘍の画像所見に関する研究報告がなされ知識や経験が蓄積されてきたが,WHO 2021脳腫瘍分類で疾患概念が大きく変化してしまった腫瘍や,画像所見の報告・知見の蓄積が現時点で少なすぎる腫瘍が存在する。これらのこともふまえたうえで,施設の脳神経外科医や病理医とコミュニケーションをとり,臨床を前に進める,臨床判断に役立つような画像診断報告書を記載することが望ましいと考えている。 本稿ではすべての脳腫瘍を網羅することは到底できないため,頻度の高い原発性脳腫瘍としてadult—type diffuse glioma, meningioma, pitu-脳神経1141* 東京医科歯科大学 放射線診断科【索引用語】 glioma,神経膠腫,髄膜腫,下垂体腺腫/下垂体神経内分泌腫瘍臨床放射線 Vol. 67 No. 11 2022大山 潤 *第 章1はじめに脳腫瘍
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