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こともあり,手術での摘出部位を示して放射線治療(ブースト照射時など)の際のマーカーとしても用いられることがある。施設や術者によってクリップ使用の有無や方法は異なるので,方針を確認しておくとよい。 乳癌の術後や放射線治療後には様々な生理的な反応がみられる。術後早期には画像を撮ることは少ないが,炎症性変化が起こり,皮膚の肥厚や発赤,術後欠損部や皮下から乳房内深部において液体貯留(漿液腫:seroma)が起こる5)。症例1(図1)は術後1年後に観察された漿液腫であるが,均一な液体だけではなくフィブリンの析出などと思われる結節状の構造が壁在して散見する。同部に血流はみられず,またその後も増大や再発は認めていない。 しばしばseroma形成は遷延することや,遷延する炎症を伴うことや,感染,膿瘍形成を起こすこともあるので,画像にそれらの炎症が反映されることもある。 放射線治療後には,皮膚肥厚や皮膚の拘縮を起こすこともあり,早期だけでなく遷延することや,晩期の障害として現れることもある。また,皮下や乳腺内の浮腫を呈することがあり,マンモグラフィでは浮腫を反映した梁柱の肥厚,超音波では浮腫によって皮下脂肪内が高エコーにみられる。 術後の特徴的な変化として,脂肪壊死(fat necrosis)がある。術後の血行障害などによって,非化膿性に脂肪変性をきたすものである。症例2(図2)のようにマンモグラフィやCTでは脂肪組織であることで明瞭に判断できるので,脂肪壊死であることを報告したい。超音波では,oil cystとして被包された液体貯留となった状態であればわかりやすいが,時に混合性腫瘤としてみられることがある。この際,周辺には血流はあるとしても,内部に血流は生じないため,鑑別の一助となる。時間経過すると後述する異栄養性の石灰化を伴う3)5)。 症例3(図3)は左乳癌に対しての乳房温存療法(部分切除術および放射線治療)後であり,治療1年後にはマンモグラフィでは皮膚の肥厚とともに乳腺内に梁柱肥厚,濃度上昇域がみられていた。超音波でも肥厚した皮膚と連続して皮下脂肪が高エコーに描出され,4 cmの混合性腫1536AA図1 症例1(40歳代,女性)A,B:超音波検査乳房温存療法後。漿液腫(seroma)内部にフィブリンの析出などと思われる結節状の構造が壁在している(扌)。BB臨床放射線 Vol. 67 No. 11 2022

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