112 頭頸部癌は口腔や鼻腔・副鼻腔,咽頭・喉頭,唾液腺,甲状腺に発症する悪性腫瘍の総称で,それぞれの部位で病期分類が異なる。頭頸部癌の病期ステージによって,手術,放射線治療,化学療法が選択される。この三つの治療法を組み合わせた集学的治療が一般的で,画像診断レポートは手術を行う耳鼻咽喉科医(頭頸部外科)だけでなく,化学療法を専門とする腫瘍内科医,放射線治療科医など様々な臨床医の目に触れることになる。そのため,各臨床医が着目する項目をわかりやすく画像診断レポートで指摘する必要がある。また頭頸部領域の解剖学的特徴を理解することは,画像診断レポートを作成するにあたり重要な事項の一つである。この項目では具体的な症例を提示しながら,画像診断レポートで伝えるべきポイントに絞って概説していく。 頭頸部癌は複数の部位が含まれるため,各疾患で病期分類が異なる。頭頸部癌は胃癌や大腸癌,肺癌などと比べると頻度は低いが,頭頸部領域は呼吸や咀嚼,嚥下,発声,聴覚などの日常生活に必須な重要な機能を含んでおり,その複雑な解剖学的特徴に対する理解を深める必要がある。 頭頸部癌の危険因子として,喫煙や飲酒,口腔内不衛生が挙げられる。上咽頭癌や中咽頭癌ではウイルス感染との関連も注目されており,2018年以降の「頭頸部癌取扱い規約」1)ではEpstein—Barr virus(EBV)およびhuman papil-lomavirus(HPV/p16)の有無が病期診断に反映されている。また,上咽頭癌および中咽頭癌は原発巣が不明でも,頸部リンパ節腫脹で発見され,組織学的にEBVやHPV/p16が証明されれば,上咽頭癌(T0)もしくは中咽頭癌(T0)として診断されるようになった。頭頸部癌の大半は中高年男性に好発するが,上咽頭癌,中咽頭癌,甲状腺癌などでは若年者や女性にも発生する。 頭頸部癌の診断はまずは問診および視診・触診を行い,各原発巣に応じて喉頭鏡検査を加える。その後,腫瘍の深部浸潤,隣接臓器への浸潤,転移の評価のため,CTもしくはMRIなどの画像検査が施行される。頭頸部癌の原発巣の診断にはCTおよびMRIが有用であるが,口腔・中咽頭領域では歯冠修復物などによる金属アーチファクトのため,深達度診断が困難なこ頭頸部1215* 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科(現 DN画像診断クリニック東京)【索引用語】 頭頸部癌,depth of invasion(DOI),リンパ節転移節外浸潤臨床放射線 Vol. 67 No. 11 2022久保優子*第 章2はじめに頭頸部癌の診断頭頸部癌
元のページ ../index.html#3