212 付属器腫瘤(卵巣/卵管腫瘤)の診断は,まずは産婦人科医による超音波検査にて行われるが,診断がつかない症例では精査のためX線被ばくがなく組織コントラストに優れたMRI検査がオーダーされる。また,悪性腫瘍が疑われる場合には病期診断のため躯幹部CTの適応となる。本稿ではこれらの画像診断レポート作成時の留意点について概説する。① 腫瘤の由来臓器 付属器腫瘤の疑いでオーダーされる症例には,実際には子宮や消化管,泌尿器,腸間膜,後腹膜腔など,様々な臓器由来の腫瘤が含まれており,依頼書に「卵巣腫瘍疑い」とあっても先入観から卵巣由来と決めつけないことも重要である1)。女性骨盤部腫瘤のMRI診断では,まず付属器由来かどうかの確認のため,T2強調像にて正常卵巣を同定する。また,年齢や月経周期の影響もあるが,一般に生殖可能年齢では卵巣実質は拡散強調像にて高信号を呈し,同定に有用なことがある2)。腫瘤とは別に両側の卵巣が同定される場合は,付属器以外からの発生を考慮する必要がある(図1)。なお,線維腫や成熟奇形腫などの良性腫瘍や3),漿液性境界悪性腫瘍では時に卵巣から外方性に発育することがあるため,beak signなど卵巣実質との連続性の有無に注意して読影する(図2)。② 腫瘤の性状と信号パターン 付属器には様々な組織型の良性,境界悪性,悪性の腫瘍が発生し,多彩な画像所見を呈する。また,生理的な状態の変化やホルモン環境の影響などにより腫瘍と紛らわしい腫瘍類似疾患(出血性黄体嚢胞,卵巣広汎性浮腫,内膜症性嚢胞の脱落膜化,黄体化過剰反応,卵巣線維腫症,ポリープ状子宮内膜症など)を認めることがあり,妊孕性や機能温存のためにも正確な診断により過剰な治療による侵襲を避ける必要がある。組織コントラストに優れるMRIは良悪性の鑑別や腫瘍と非腫瘍性の病態の鑑別などに有用であり,keyとなりうる所見については余すところなくレポートに記載すべきである。 付属器腫瘤の性状についての適切な記載は,鑑別診断を進めるうえで重要な情報となる。まずは嚢胞性腫瘤か充実性腫瘤かに大別される産婦人科1)付属器腫瘤が疑われる症例のMRI診断レポート1423*1 徳島大学医学部 放射線科 *2 徳島文理大学保健福祉学部 診療放射線学科【索引用語】卵巣, 卵管, MRI臨床放射線 Vol. 67 No. 11 2022竹内麻由美 *1 松崎健司 *1,2 原田雅史 *1第 章6はじめに画像診断レポート作成のポイント卵巣/卵管腫瘤
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