312死の抑制を目的とした放射線治療(特に乳房温存療法では必須),潜在的な微小転移の根絶・制御(により治癒および長い生存期間)を目指して薬物療法が行われる1)。現在は温存か全切除か(乳癌診療ガイドライン1)や乳癌取扱い規約2)では「全摘」という俗語は用いていない)だけではなく乳房再建も増えており,詳述はしないが近年はラジオ波熱凝固療法(radiofrequency ablation:RFA)や凍結療法(cryoablation)といった治療法も導入されつつある。治療方法を知ったうえで局所の画像診断を行えるようにしたい。1)乳房部分切除術 乳房部分切除術の適応としては,乳癌を断端陰性で切除しつつ,整容性が保たれることが求められる。したがって,術式は大きさだけでなく病変の部位や患者の希望によって選択される。乳房部分切除術が行われた際には,温存乳房への放射線照射を行うことが標準的治療であり,これらを併せて乳房温存療法という1)。 術後の変化としては,手術によって切除された腔(cavity)がみられたり,縮小した切除腔や瘢痕がマンモグラフィでは構築の乱れ(archi-tectural distortion)を伴って描出されたりする3)4)。手術時には金属クリップが用いられる乳 房1535*1 獨協医科大学埼玉医療センター 放射線科 *2 東京医科歯科大学 放射線診断科【索引用語】 乳癌手術後,脂肪壊死,漿液腫(senoma),インプラント断裂臨床放射線 Vol. 67 No. 11 2022久保田一徳 *1 藤岡友之 *2 森 美央 *2 中田 学 *1 伊藤悠子 *1 渡邊 馨 *1 乳癌術後の画像診断は,術後の経過観察や再発・転移検索のCTなどを含めると放射線科で最も多く目にするものの一つであろう。乳癌の治療の進歩にもあわせて局所や腋窩の手術を含めたマネージメントが変化してきており,これらの術式や術後の変化についても理解しておきたい。術後の画像診断では再発や転移を見落とさないことが第一の目的ではあるが,術後の生理的な変化を知っておかないと,やみくもに疑い病変を増やしかねない。本稿では,画像診断レポート作成の際に必要となる,術式や術後の変化について,典型的な症例を提示しつつ解説する。 非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS, stage 0)および早期乳癌[stage Ⅰ~ⅢA:欧米のearly breast cancerの定義に準じて,我が国でも切除可能なT3 and/or N2(stage ⅢA)までを早期乳癌と定義することとなった1)]においては,乳癌の根治を目指して手術療法が行われ,さらに必要に応じて再発・乳癌第 章8はじめに乳癌の手術方法とその後の変化乳癌:術後の変化と再発
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