4その他肩・肘・手関節123AB千葉大学医学部附属病院 画像診断センター 橘川 薫26骨軟部 肩関節,肘関節,手関節の臨床所見と画像診断における類似疾患,間違えやすい疾患として,肩関節と肘関節に関連した上腕二頭筋腱損傷,キーンベック病と尺骨突き上げ症候群,三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex:TFCC)損傷と尺側手根伸筋腱腱症,de Quervain病とintersection syndromeについて解説する。 上腕二頭筋長頭腱は肩甲骨関節窩上部の関節上結節に起始部をもち,肩甲上腕関節内を通過して結節間溝を下行,烏口突起から起始する短頭と合して橈骨粗面に停止する。上腕二頭筋長頭腱は上腕骨頭と烏口肩峰アーチとの間のインピンジメントや結節間溝における摩擦などで腱の損傷が起こり,肩痛を発症することがある。腱板断裂との合併が多い。病理学的には線維化や粘液変性,うっ血,退行性石灰化などがみられる。MRIでは腱の腫大や信号上昇を認める(図1)。関節鏡所見や組織学的所見との対比ではMRI所見との一致率は高くなく,特に軽度の腱変性や線維化はルーチンMRIでは異常として捉えにくい1)。しかしながら上腕二頭筋長頭腱完全断裂のMRI診断能は正確度70~88%で,手術方針の決定に貢献できるとの報告がある2)。 上腕二頭筋長頭腱が結節間溝から内側に脱臼も上腕二頭筋長頭腱損傷(40代,女性)臨床放射線 Vol. 68 No. 12 2023【索引用語】 肩関節,肘関節,手関節図1MRI脂肪抑制プロトン密度強調斜冠状断像(A),STIR斜矢状断像(B)にて上腕二頭筋長頭腱は結節間溝上部で腫大し,信号上昇を認める(A,B)。腱鞘に液体が貯留している(A▷)。1367はじめに上腕二頭筋長頭腱損傷上腕二頭筋長頭腱脱臼26 骨軟部 肩・肘・手関節
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