BAC4しくは前内側に亜脱臼することがある。腱自体の損傷をしばしば伴う。脱臼した腱により,上腕骨小結節に停止する肩甲下筋腱の腱内断裂,付着部の腱剝離をきたす。腱が脱臼するとMRI横断像で結節間溝内に上腕二頭筋長頭腱が同定できない。断裂との区別は,斜矢状断や斜冠状断も参照し,脱臼した腱の連続性が追跡できるかどうかで判断する。肩甲下筋腱の腫大や断裂の有無を評価する際に,腱内に入り込んだ上腕二頭筋長頭腱が認められることがある。斜矢状断で肩甲下筋の萎縮がみられると診断の一助となる(図2)。 上腕二頭筋腱が橈骨粗面に停止する近傍で断裂することがある。人口の高年齢層の活動性が上がったことで,近年頻度が高くなっている3)。重いものを持ち上げるにあたり急激に肘関節を屈曲するときに痛みと脱力を訴え発症するが,時に診断が遅れ肘屈曲力の低下で発見される場合もある。病理組織学的には橈骨粗面1~2 cm近位に腱の変性が起こりやすく,損傷の好発部位となっている。橈骨粗面と尺骨近位の間隙が回外位で最大となり,回内位では狭くなるが,橈骨粗面に骨棘が形成されたり,上腕二頭筋腱遠位部が変性などで肥厚することで,腱のインピンジメントをきた上腕二頭筋長頭腱脱臼,肩甲下筋腱断裂(50代,女性)臨床放射線 Vol. 68 No. 12 2023MRI T2強調横断像(A,B)にて上腕二頭筋長頭腱は結節間溝内にみられず,内側に脱臼している(A,B)。脱臼した上腕二頭筋長頭腱が肩甲下筋腱の中に入り込み,断裂をきたしている(B▷)。T2強調斜矢状断像(C)では肩甲下筋の萎縮がみられる(C)。1368図2遠位上腕二頭筋腱断裂
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