2127呼吸器胸部間質性肺炎7 呼吸器 間質性肺炎独立行政法人労働者健康安全機構関西労災病院 放射線科 上甲 剛 間質性肺炎には多くの疾患があり,それを網羅的に非典型症例と類似疾患の観点より論じるのは量的にも容易なことではない。そこで本稿では,原因不明の間質性肺炎で頻度の点で上位2位を示し,各種間質性肺炎の病理組織像でも同じく上位2位を示す,通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)と線維化性非特異的間質性肺炎(fibrosing non—specific interstitial pneumo-nia:FNSIP)の2病態に関して非典型症例と類似疾患の観点より論じることとする。 UIPとは慢性に経過する間質性肺炎であり,病理組織学的には,1つの二次小葉内で正常の肺胞領域から,進行した線維化所見までの,新旧の病変が混在(temporal or spatial heterogenity)している。病変は小葉(細葉)の辺縁に強く,小葉(細葉)辺縁性分布(periacinar pattern)と呼ばれる。病変の終末像はいわゆる蜂巣肺(honeycombing)を示す1)2)。 特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibro-sis:IPF)/UIPの米国呼吸器学会(American Thoracic Society:ATS),欧州呼吸器学会(Euro-pean Respiratory Society:ERS),日本呼吸器学会(Japan Respiratory Society:JRS),Latin American Thoracic Association(ALAT)診療ガイドラインでは発刊以来1),2022年改訂の最新版2)まで,IPF/UIPの典型的でかつ診断に最重要なCT所見として蜂巣肺を挙げている。すなわち,IPF/UIPのCT像の典型像[CT分類上の(defi-nite)UIP pattern]としては下肺野胸膜下優位で不均一な分布を示し,蜂巣肺を伴うもの1)2)としている(図1)。 したがって,IPF/UIPの非典型例の代表としては,蜂巣肺を伴わないものとなる。蜂巣肺を伴わないUIPには,① 蜂巣肺が粘液貯留によりCTで描出されないもの(図2)と,② 進行しても蜂巣肺が生じないもの(図3)とが挙げられる。 蜂巣肺がない(possible)UIPの診断基準は,① 胸膜直下,肺底優位であり,② 網状影をもち,③ 牽引性気管支拡張を伴うが,④ UIPに合致しない所見がないことの4点のみであり,UIPの形態上重要な特徴である,時間的・空間的不均一性(temporal or spatial heterogeneity)や小葉・細葉辺縁性分布(perilobular/periacinar predomi-nance)は盛り込まれていない。すなわち,類似疾IPF/UIPの典型像【索引用語】 特発性肺線維症,蜂巣肺,通常型間質性肺炎,線維化性非特異性間質性肺炎臨床放射線 Vol. 68 No. 12 2023図1下肺野胸膜下主体に蜂巣肺がみられる。1193はじめに通常型間質性肺炎(UIP)
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