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有用である。 脂肪成分が固形を呈する場合:通常の成熟奇形の脂肪成分は体温で液状を示すが,まれに固形の脂肪成分があたかもボールのように嚢胞内を浮遊する所見(floating balls sign)を認めることがある。非典型的所見ではあるが,非常に特徴的な所見である(図4)。 粘液性腫瘍の合併:粘液性腫瘍の5%に成熟奇形腫を合併する1)。粘液性腫瘍は悪性の場合もあるため,脂肪が存在する嚢胞性腫瘍でも,Roki-tansky protuberanceとは異なる充実性成分がある場合は注意が必要である。 卵巣甲状腺腫(struma ovarii):すべて,あるいは大部分が甲状腺組織からなる奇形腫で,奇形腫全体の3%程度である。ほとんどが他の成熟した奇形腫成分を伴う。甲状腺組織が充実性の非常に強く濃染する成分として認められることから,悪性腫瘍との鑑別が問題となる。分葉状の形態を示し,コロイド成分を反映したT2強調像で低信号域を伴うことが特徴的である(図5)。3)鑑別疾患 未熟奇形腫:未熟な胎児性成分を伴う奇形腫で,全奇形腫の約3%に認められる。成熟奇形腫典型例:歯牙を伴った右卵巣成熟奇形腫(30代) B : 腹部単純X線。右骨盤内に歯牙が明瞭に描出されている(扌)。図1 A : 単純CT。骨盤内に脂肪を含む嚢胞性腫瘤あり(扌)。腹側に脂肪成分,背側に脂肪以外の貯留物を含んだ液成分があり,fluid—fluid levelを形成している。右側には歯牙を反映した石灰化あり。ABは広い年齢層に認められるが,未熟奇形腫は30代までの比較的若年層に多い。若年者の成熟奇形腫で腫瘍マーカーであるAFPが上昇している場合などは要注意である。画像上は成熟奇形腫のように豊富な脂肪成分が主体の嚢胞性病変をとらず,漿液性の嚢胞成分が主体で豊富な充実成分とその充実性成分に散らばるように石灰化や脂肪組織が認められるのが典型例とされている(図6)2)。 悪性転化を伴った成熟奇形腫(図7):成熟奇形腫の約2%程度にみられ,高齢者に多い。80%が扁平上皮癌と多く,腫瘍マーカーSCCの上昇を認める。周囲へ浸潤するような症例は予後が悪い。日常診療上,高齢者の奇形腫で周囲に浸潤する不整な充実性成分を伴う場合は可能性を疑う。MRIでは拡散低下を伴う3)。ただ,わずかに悪性転化した成分が奇形腫内に混在するような場合は術後標本で初めて明らかとなることもしばしば経験する。 混合型胚細胞性腫瘍:2種類以上の悪性胚細胞性腫瘍の組織型が混在した腫瘍で,未熟奇形腫を伴う場合は脂肪成分を含む。若年者に多く,他の未分化胚細胞腫や卵黄嚢腫瘍の成分を反映してAFP,LDH,hCGなどが高値となる。成熟奇形腫臨床放射線 Vol. 68 No. 12 20231296

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