だれも教えてくれなかった ホルター心電図の読み方、使い方

はじめてでもデキる! 12誘導心電図にはない読み方が、ここに。

荻ノ沢 泰司
定 価 3,520円
(3,200円+税)
発行日 2025/11/10
ISBN 978-4-307-05056-2

A5判・162頁・図数:24枚・カラー図数:70枚

在庫状況 なし

ホルター心電図は24時間以上の日常における心臓の異常を記録することができ、リスクの高い不整脈や狭心症の診療上不可欠な検査となっている。しかし、膨大なデータから危険な心電図を鑑別することは容易ではない。本書では、発作の始まりから終わりまでの全貌を見渡すことができるホルター心電図の特性を活かした読み方、使い方を初心者にもわかりやすい内容で解説する。また、オーダー医にほめられること間違いなしのホルターレポートの「型」は、判読医必見である。「大量で長い心電図は苦手!」を、楽しいホルターライフへと変える道標となる本。
I ホルター心電図の使い方
 ホルター心電図の目的・適応
 ホルター心電図の種類
 ホルター心電図の誘導方法  
 ホルター心電図の検査の流れ 
 ホルター心電図の付け方 
 ホルター心電図のトラブル時の対応 

II ホルター心電図の読み方
 ホルター心電図と12誘導心電図の読み方の違い 
 ホルター心電図の読み方の原則 
  P波とQRS波の関係を見極める 
  キャリパーで関係性を読む 
  隠れたP波をさがす
  QRS波形―Narrow?or Wide?
 ホルター心電図特有の読み方
  Onset―開始は?
  Trend―心拍の推移は?
  Transition―変化時の所見は?
  Termination―停止は?

III ホルター心電図の見方
 心房性不整脈
  心房期外収縮
   変行伝導を伴う心房期外収縮
   非伝導性心房期外収縮
  心房細動
  心房粗動
  洞頻脈
  洞不全症候群
  発作性上室頻拍
   房室結節リエントリー頻拍
   房室回帰頻拍
   特殊なAVRT
   心房期外収縮によるデルタ波の顕在化
   心房細動に伴うwide QRS tachycardia
   心房頻拍
 心室性不整脈
  心室期外収縮
  心室頻拍
  Torsade de Pointes
  心室細動
  房室伝導障害
   右脚ブロック
   左脚ブロック
   房室ブロック
    1度房室ブロック
    2度房室ブロック
    高度房室ブロック
    3度房室ブロック
 心筋虚血

IV ホルターレポートの書き方
 ホルターレポート解析の準備
 ホルターレポートの型

V ホルター心電図を読んでみよう
 Case 1
 Case 2
 Case 3
 Case 4
 Case 5
 24時間ホルター心電図は、総合病院の循環器科のみならず、市中のクリニックにおいても広く普及しており、診療上不可欠な検査として(1)発作性に出現する症状・不整脈・心筋虚血イベントの捕捉や(2)持続性不整脈の重症度評価、(3)薬効およびペーシング等治療の効果判定、(4)自律神経機能評価など、日常診療において様々な目的で用いられています。さらに近年では、技術の進歩とともにベルト型・パッチ型・着用型など多様な形態のものが登場し、数日〜数週間という長期間の観察が可能となりました。記録時間の延長に伴いイベントを捉える確率が向上する一方で、膨大な心電図記録を評価しなければならなくなっています。AIに代表される自動解析機能の進歩により、注目すべき波形や診断の提案は表示されるようになりましたが、最終的には医療資格を持つ医師が自ら所見を吟味したうえで確定診断を行い、責任を持って適切な治療方針を決定することが必要です。
 しかし、ホルター心電図に関する成書はここ10年ほどほとんど出版されておらず、特に初学者にとっては、ホルター心電図の使い方・読み方を学ぶ機会はきわめて限られていました。このような状況の中、日本不整脈心電学会とフクダ電子が共催する心電図判読セミナーにて講演させていただいた「ホルター心電図の基本・読み方・考え方」に関する講義したところ、非常に好評をいただき、そのご縁で本書の出版に至りました。
 12誘導心電図が解像度の高い静止画とするならば、ホルター心電図はイベントの始まりから終わりまでその全貌を見渡すことができる、いわば動画にたとえることができます(ただし、記録誘導数の少なさから12誘導心電図と比べて残念ながら空間的解像度は低いといわざるを得ません)。ホルター心電図の特性と判読のポイントを理解することで、まるで動画を巻き戻したり早送りしたりするように、イベント記録中の縮小波形やトレンドを俯瞰し、診断に必要な拡大波形を確認・分析することができます。これにより適切な評価と正確な診断が可能となります。
 本書では、古典的な24時間ホルター心電図の基本的知識に加え、限られた誘導波形からどのように診断を行うのか、連続記録によって得られる付加的情報をどのように評価するのか、分かりやすいレポートの作成方法など、ホルター心電図を初めて学ぶ医師にも理解しやすいように構成されています。ホルター心電図の判読に「どこを見ればよいのか分からない」「面倒だ」と敬遠していた方も、この本を通じて見るべきポイントを掴み、自信を持って診断できるようになるでしょう。その結果、ホルター心電図波形を見てどんな所見が得られるのかワクワク楽しみながら、ホルター判読がもっと楽しくなることでしょう。
 さらに医師だけでなく、患者さんへのホルター心電図の装着や拡大波形の出力を担当する臨床検査技師や看護師にも大いに役立つ内容が盛り込まれています。また、ホルター心電図に留まらず、通常の12誘導心電図やモニター波形・長時間心電計の読み方・考え方も深められるように工夫されています。心電図の読み方をさらに深めたい方や、「心電図検定」の上級合格を目指す受検生にも、本書は非常に有用なものになると自負しております。
 最後に、金原出版の稲葉小春さんには、本書の企画段階から読者に分かりやすくなるような多くのご指導ご支援をいただき、心より感謝申し上げます。この場を借りて御礼申し上げます。
 本書が皆様の楽しいホルターライフの一助になることを心から願っております。

2025年11月
産業医科大学不整脈先端治療学 教授
著者 荻ノ沢 泰司