臨床脳波検査スキルアップ 第2版補訂版

基礎から応用まで脳波検査を網羅的に学べる1冊!

著 者 所司 睦文 / 小野澤 裕也
定 価 5,720円
(5,200円+税)
発行日 2025/11/20
ISBN 978-4-307-05058-6

B5判・316頁・図数:296枚

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第2版発行から8年、てんかんの名称変更に対応し、補訂版として発行することとなった。とっつきにくいと思われがちな脳波検査を簡明に解説し、ビギナーからエキスパートまで満足できる内容となっている。脳波検査に苦手意識を持つ臨床検査技師だけでなく、さらなるスキルアップを目指すベテラン臨床検査技師も必読。豊富な脳波波形図・イラスト・提示症例で、基礎から応用まで網羅的に学べる1冊となっている。
第1章 脳波計測
1 脳波
2 脳波計測のしくみ

第2章 基礎律動(基礎波)の評価
1 脳波評価のリアルタイム性
2 健常者の脳波所見
3 α波の問題脳波所見
4 非突発性の問題脳波所見
5 突発性の問題脳波所見
6 特殊な脳波所見

第3章 脳波賦活試験の評価
1 脳波賦活試験の概要
2 開閉眼賦活試験
3 閃光賦活試験
4 過呼吸賦活試験
5 睡眠賦活試験

第4章 脳波に混入するノイズ
1 ノイズ(アーチファクト、雑音)総論
2 代表的な環境由来のノイズ
3 代表的な患者由来のノイズ

第5章 疾病・病態と問題脳波
1 問題脳波の基礎
2 てんかんの概要
3 代表的なてんかん発作と脳波
 1)欠神発作
 2)強直間代発作
 3)複雑部分発作
 4)前頭葉てんかん
 5)内側側頭葉てんかん
 6)高齢者てんかん
 7)レム睡眠行動異常症(RBD)とてんかんの鑑別
 8)乳児てんかん性スパズム症候群(ウエスト症候群)
 9)レノックス・ガストー症候群
 10)中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん
 11)ミオクロニー発作
 12)外傷性てんかん
 13)熱性けいれん
 14)自律神経発作を伴う自然終息性てんかん(パナイトポーラス症候群)
 15)徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症
 16)症候性部分てんかん
4 心因性非てんかん発作とてんかん発作の鑑別
5 てんかん以外の代表的な疾患または病態と脳波
 1)孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病
 2)亜急性硬化性全脳炎
 3)ヘルペス脳炎
 4)抗NMDA受容体脳炎
 5)肝性脳症
 6)意識障害
 7)低酸素脳症(蘇生後脳症)
 8)アルツハイマー病
 9)脳死

第6章 法的脳死判定の脳波検査
1 導出法
2 電極装着
3 電極インピーダンス(電極接触抵抗)
4 心電図の同時記録
5 電極間距離
6 測定時間
7 脳波計の感度
8 フィルタの設定
9 頭部外モニタ
10 検査室温
11 脳波計の条件・環境
12 ペーパーレス脳波計使用時の注意
13 実際の脳波記録
14 脳波の判定
15 法的脳死判定の間隔
16 聴性脳幹反応(ABR)と体性感覚誘導電位(SEP)

第7章 頭蓋内脳波
1 頭蓋内脳波検査の概要
2 頭蓋内電極
3 皮質脳波(ECoG)の特徴
4 皮質脳波(ECoG)の適応

第8章 臨床脳波検査の実際
1 臨床脳波検査を実施する上での注目ポイント
2 臨床脳波検査の流れ
3 検査オーダー受付
4 臨床脳波検査の実施(患者への声かけ例)
5 検査結果報告
6 検査情報データベース化
7 電極装着の事前準備と事後処理
8 皿電極を用いる国際標準電極配置法(10/20法)
9 風船とマークシールを使った10/20法に基づく電極装着トレーニング
10 エレクトロキャップを用いる10/20法
11 脳波スケールの使い方

第9章 臨床脳波所見記録書の書き方
1 臨床脳波所見記録書の意義
2 臨床脳波所見記録書のモデル
3 臨床脳波所見記録書(モデル)の記載方法

補章 臨地実習での学生指導
1 学生教育の重要性
2 臨地実習のリスクマネジメント
3 脳波検査実習のヒント

コラム一覧
索引
 第2版が刊行された年、国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy)から、てんかん発作型分類2017(Operational Classification of Seizure Types、2017)が発表され、従来、臨床現場で使われていた同分類が改定されました。
 2019年に発生したCOVID-19に伴い、日本臨床神経生理学会や日本てんかん学会等から、臨床脳波検査時の検査の過呼吸賦活に関して、検査の必要性を慎重に評価し(不要な実施しない)、実施する場合は十分な換気を行う(検査間隔を空ける)こと、臨床検査技師はN95マスクを着用し、電極装着時にグローブを着用すること、患者はマスクを着用すること、清掃・消毒を徹底すること、などの注意喚起が示されました。
 2021年、アメリカ臨床神経生理学会から最新の神経救急脳波用語(ACNS2021)が発表され、救急救命、ICU等での原因不明の意識障害の患者に実施されるCritical Care EEG(持続的脳波モニタリング)で用いられる脳波判読アルゴリズムが提示されました。
 国際的な分類・用語において、例えば、以前Rolandic epilepsyと呼ばれていたBECTS(benign epilepsy with centrotemporal spikes)という疾患名が、CECTS(childhood epilepsy with centrotemporal spikes)、そしてSeLECTS(self-limited epilepsy with centrotemporal spikes)に更新されました。また、ウエスト症候群も乳児てんかん性スパズム症候群(infantile epileptic spasms syndrome)に更新されています。
 2025年3月、臓器提供に係る医療者教育に資する研究/法的脳死判定マニュアル改訂班によって法的脳死判定マニュアル2024が発表されました。
 そして、2025年、前述のてんかん発作分類の改訂版が国際抗てんかん連盟によって導入される予定です。
 このように、近年、臨床脳波検査分野の時流はものすごく速いです。今回の補訂版では、これらすべてを盛り込むことはあきらめ、てんかん発作型分類2017等に基づき用語の付記に留めました。
 臨床脳波検査を担っている臨床検査技師ほかの皆さん、記録手技の基本は今も昔も殆ど変わっていません。臨床脳波検査を取り巻く、関連知識の更新に努めて下さい。
 大学等で臨床検査学を学ぶ学生さん、臨床脳波検査に関わる用語・病名がここ数年で大きく変わり、戸惑うことが多いかも知れません。しかし、若くて柔軟な脳をフル活用しつつ、整理して覚えていって欲しいと願っています。
 末筆ながら、共著者の麻布大学小野澤裕也先生、補訂版発刊にご尽力いただいた金原出版編集部今村久美子さんほか、本書出版に関わっていただいたすべての関係者の方々に心から深謝致します。

京都山科にて
2025年10月
所司 睦文