新版 骨関節のX線診断

骨関節疾患の単純X線読影をMRI・CTも加え、圧倒的な画像数で分かりやすく解説した!

著 者 江原 茂
定 価 13,200円
(12,000円+税)
発行日 2019/09/30
ISBN 978-4-307-07112-3

B5判・488頁・図数:852枚

在庫状況 あり

骨軟部における単純X線撮影は、従来より簡便で有効な診断手段であり、画像診断において揺るがない地位を保っている。さらに近年、CT・MRIの知見のフィードバックにより、従来を越える深い病態の理解が可能になった。
本書では骨関節疾患の単純X線読影を、CT・MRIを交え、膨大な写真で分かりやすく解説している。
放射線科のみならず、整形外科、リウマチ科、小児科など幅広い読者を対象とした長くご愛用していただける1冊です。
■1.外傷
1.総論
 1.骨折の記述法
 2.小児の骨折の特殊性
 3.骨折の特殊型
 4.脱臼・亜脱臼
 5.特殊検査法
2.脊椎
 1.頸椎
 2.胸・腰椎
3.上肢
 1.肩・上腕
 2.肘・前腕
 3.手および手関節
4.骨盤・下肢
 1.骨盤
 2.股関節・大腿骨
 3.膝・下腿
 4.足関節
5.足
6.副骨

■2.骨・軟部腫瘍とその類似疾患
1.骨の破壊性変化の鑑別診断
 1.病変の分布
 2.発生部位
 3.辺縁の解析
 4.石灰化ないし骨化した基質
 5.骨膜反応の解析
 6.その他の単純X線撮影に基づく付随所見
 7.CT.による密度分析
 8.MRIの相対的信号強度と組織との相関
 9.嚢胞の診断
 10.リンパ節転移
 11.病変の発生頻度による統計学的アプローチ
2.軟骨原性腫瘍
 1.良性腫瘍
 2.軟骨肉腫
3.骨原性骨腫瘍
 1.良性腫瘍
 2.悪性腫瘍(骨肉腫)
4.線維性骨腫瘍
 1.良性腫瘍
 2.悪性腫瘍
5.血管性骨腫瘍
 1.良性腫瘍
 2.中間群ないしは悪性腫瘍(血管内皮腫および血管肉腫).186
6.骨髄細胞由来の腫瘍
 1.形質細胞腫と多発性骨髄腫
7.その他の腫瘍
 1.嚢胞
 2.骨内脂肪腫
 3.骨巨細胞腫
 4.脊索腫
 5.アダマンチノーマ
 6.非感染性肉芽腫
 7.皮質欠損を伴う正常変異
8.転移性骨腫瘍
 1.硬化性転移
 2.単発性転移
 3.皮質転移
 4.指尖部転移
 5.骨格筋転移
 6.骨梁間転移
9.二次性腫瘍
 1.放射線照射後
 2.骨Paget病
 3.骨壊死
 4.線維性骨異形成
 5.骨軟骨腫症および多発性骨軟骨腫症
 6.その他
10.軟部腫瘍
 1.良性軟部腫瘍
 2.悪性軟部腫瘍
 3.軟部腫瘍の鑑別診断
11.骨・関節周囲の骨化性腫瘍
 1.限局性骨化性筋炎
 2.進行性骨化性線維異形成

■3.関節炎
1.関節疾患診断へのアプローチ
 1.画像診断の前に
 2.単関節炎か多関節炎か
 3.罹患関節の分布
 4.ターゲット・エリア・アプローチ
2.四肢の滑膜関節の変化
 1.軟部組織腫脹
 2.骨の密度
 3.関節裂隙の狭小化
 4.骨侵食(エロジォン)
 5.アライメント
 6.骨の増殖性変化
 7.関節周囲の嚢胞形成
 8.関節内・関節周囲石灰化
 9.腱靭帯付着部症
3.関節異常の分布
 1.手および手関節
 2.肩関節
 3.股関節
 4.膝関節
4.関節リウマチおよび血清反応陰性関節炎の滑膜関節の変化
 1.共通する変化
 2.関節リウマチ
 3.リウマチ因子陰性関節リウマチ
 4.その他の関節炎(血清反応陰性関節炎)
 5.結合織病
5.脊椎関節炎
 1.HLA-B27
 2.一般的特徴
 3.強直性脊椎炎
 4.乾癬性関節炎と反応性関節炎
 5.腸疾患合併脊椎関節炎
 6.鑑別診断
6.変形性関節症
 1.変形性関節症の所見
 2.合併症
 3.特殊型
 4.変形性脊椎症
7.その他の関節炎
 1.結晶性滑膜炎
 2.神経障害性関節症
 3.内分泌疾患に伴う関節症
 4.代謝疾患に伴う関節症
 5.血友病性関節症
 6.腫瘍ないし腫瘍類似疾患
8.その他の関節周囲病変
 1.絞扼神経障害
 2.関節周囲の嚢胞性病変

■4.人工関節の画像診断
1.人工関節材料
2.人工股関節のデザイン
3.股関節置換による物理的・生理的変化と関節のゆるみ
 1.応力遮蔽
 2.沈み込み
 3.pivot運動と内反変形
 4.人工膝関節置換後の変化
 5.その他の合併症
 6.特殊検査の役割

■5.腰痛症へのアプローチ
1.腰痛症
 1.急性期腰痛症
 2.亜急性期腰痛症
 3.慢性期腰痛症
2.椎間板変性疾患
 1.線維輪の膨隆
 2.椎間板ヘルニア
 3.脊柱管狭窄症
 4.椎間関節疾患
 5.脊椎の過形成病変
 6.脊椎分離症と脊椎すべり症

■6.小児の骨・関節疾患
1.骨成長の評価
2.形成異常へのアプローチ
 1.四肢の長管骨
 2.脊椎
 3.骨盤
 4.頭蓋
 5.胸部
 6.小人症の診断
 7.硬化性骨異形成
 8.その他の多系統疾患
3.神経・筋疾患
 1.脳性まひ
 2.髄膜脊髄瘤
 3.後天性麻痺
4.脊椎
 1.先天奇形
 2.特発性側弯症
 3.若年性後弯
5.上肢
 1.鎖骨の先天性偽関節
 2.Sprengel変形
 3.橈骨頭脱臼
 4.橈尺骨癒合症
 5.橈骨形成不全
 6.尺骨形成不全
 7.Madelung変形
 8.絞扼輪
 9.指節癒合症
 10.Poland.症候群
6.股関節・大腿
 1.脚長差
 2.発育性股関節形成不全
 3.内反股
 4.Perthes病
 5.大腿骨頭すべり症
 6.近位大腿欠損症
 7.単純性股関節炎
7.膝・下腿
 1.膝の円板状半月
 2.脛骨・腓骨の先天性弯曲
 3.内反脛骨
8.足
 1.先天性内反足
 2.先天性垂直距骨
 3.外反扁平足
 4.凹足
 5.足根骨癒合
 6.外反母趾

■7.骨・関節の感染症
1.骨髄炎
 1.血行性感染
 2.非血行性感染
 3.特殊検査
 4.診断上の問題点
 5.合併症
2.化膿性関節炎
3.脊椎・仙骨の感染症
 1.化膿性脊椎炎
 2.化膿性仙腸関節炎
4.特殊菌による感染症
 1.結核
 2.梅毒
5.非感染性も含めた特殊な炎症
 1.サルコイドーシス
 2.SAPHO症候群
 3.硬化性鎖骨炎
 4.細菌性血管腫症
 5.IgG4関連疾患

■8.骨壊死および外傷以外の物理的骨傷害
1.骨壊死
 1.原因
 2.病理
 3.大腿骨頭壊死の病期分類
2.骨端症
3.放射線による骨傷害
 1.成人の骨の放射線による変化
4.成長過程の骨の放射線による傷害
 1.病態
 2.傷害の決定因子
 3.画像所見
 4.照射後に発生する腫瘍
 5.熱傷・凍傷による骨傷害

■9.代謝性骨疾患
1.骨粗鬆症
 1.全般性の骨粗鬆症
 2.局在性骨粗鬆症
2.骨軟化症・クル病
 1.クル病
 2.骨軟化症
 3.骨軟化症・クル病をきたすビタミンDの代謝異常
 4.ビタミンD代謝異常を伴わない疾患
3.副甲状腺機能亢進症
 1.骨吸収
 2.褐色腫
 3.関節変化
4.その他の内分泌疾患
 1.先端巨大症・巨人症
 2.甲状腺機能亢進症
 3.甲状腺機能低下症
 4.Cushing症候群
 5.副甲状腺機能低下症
5.血液疾患
 1.造血組織の分布と脂肪髄への転換と赤色髄の再転換
 2.骨髄疾患の所見
 3.代表的疾患
6.中毒疾患
 1.フッ素中毒
 2.鉛中毒
 3.アルミニウム中毒
 4.薬物中毒
7.その他の代謝性あるいは類似疾患
 1.高ホスファターゼ血症
 2.Gaucher病
 3.アミロイドーシス
 4.Paget病

■10.骨・軟部病変の経皮針生検
1.経皮針生検の適応
 1.適応
 2.禁忌
 3.準備
2.経皮針生検の手技と成績
 1.生検針
 2.前処置
 3.イメージングによるガイド
 4.穿刺経路の決定
 5.検体の採取法
 6.後処置
 7.合併症
 8.検査成績

・索引
・コラム
本書の初版である「骨・関節のX線診断」が出版されたのは、レントゲン博士がX 線を発見した1895年の100年記念にあたる1995年であった。私がアメリカでの研修を終えて岩手医科大学に赴任したのが1989年であり、それから6年かけて仕上げたこの懐かしい教科書は、その当時には類書のなかった骨・軟部領域を扱ったこともあり、それなりの価値を認めていただいた点は幸いであった。当時の私は、放射線診断業務の日米の違いに戸惑いながらも、日常の業務をこなすのに忙しく、それでもこの教科書をまとめ上げることは大きな励みになった。それに加えて、この初版は骨・軟部の画像診断を学び始めた臨床医の方々に便利に使っていただき、私なりの反省材料も得ることができた。それから20年以上が経ち、新たな知見を含めた改訂版の可能性のお問い合わせを受けたが、著者にその十分な余裕がなく、今日になってしまった。
この20年を超える歳月のなかでの骨・軟部画像診断の発展は著しく、特にCTやMRIを含めたコンピュータ断層撮影の新知見の集積は目覚ましく、それが病態の解釈にも反映して深い理解が得られる状況になっている。そのなかで、本書が主題に挙げているX線診断は、放射線診断業務全体に占める割合の低下が目立ちながらも、依然として簡便で有効な診断手段であり、骨・軟部診断における単純X 線撮影の揺るがない地位には変わりはない。さらにコンピュータ断層撮影の知見のフィードバックにより、従来を超える深い病態の理解が可能になってきている。
初版当時から今日に至るまで、私の周囲には興味深い画像診断の知識を共有し、その発展にともに寄与してくださった画像診断医ならびに整形外科医の方々がおられ、それらの方々と多くのことを学ぶことができた。この2019年、著者が29年勤務した岩手医科大学を定年退職するにあたり、それまでの資料を整理しながら、本書の改訂を遅まきながら果たすことができた。この改訂にあたって、私が岩手医科大学在職中に画像診断の知識を発展させ、さらにはいくらかの新たな知見の発掘にお手伝いくださった放射線診断や整形外科の先達や同僚、さらにはこの改訂を可能にしてくださった放射線医学講座や中央放射線部の仲間や秘書の方々に深い感謝を申し上げる次第である。

2019年9月

江原 茂(岩手医科大学名誉教授、東北医科薬科大学病院教授)