患者さんと家族のための放射線治療Q&A 2020年版 第2版

患者さんと家族にとって必要な“正しい”情報を一冊で網羅。

編 集 日本放射線腫瘍学会
定 価 2,420円
(2,200円+税)
発行日 2020/09/30
ISBN 978-4-307-07115-4

B5判・228頁・カラー図数:116枚

在庫状況 あり

放射線治療は、手術や薬物療法と並ぶ主要ながんの治療法の一つで、保険適用されるがんも増えています。2015年版からの改訂に際し、進歩が著しい機器や治療法はもちろん、「放射線皮膚炎」「被ばくの影響」「セカンドオピニオン」といった患者さんが気になるトピックも充実させました。また、複雑な放射線治療のしくみや実際の治療なども具体的にイメージできるようにイラストを70点以上追加・刷新しました。
序文
出版にあたって
執筆者一覧

・放射線治療とはどのような治療ですか。
Q1 10 放射線治療は手術や薬物療法とは何が違うのですか。
Q2 放射線治療と放射線診断は何が違うのですか。
Q3 放射線治療やセカンドオピニオンはどこで受けることができ、誰が行うのですか。
 放射線治療についてのセカンドオピニオンはできますか。
 放射線治療はどのような病気によく使われていますか。
Q4 転移したがんにも放射線治療は有効ですか。

・放射線治療を受けるにあたってよく質問されることを教えてください。
Q5 放射線治療はからだに悪くないですか。
 1 放射線による悪影響(副作用)について教えてください。
 2 家族や周囲の人に影響はありませんか。
 3 妊娠や出産に影響はありませんか。
Q6 放射線治療の費用はどれくらいかかりますか。粒子線治療の費用や高額療養費制度、先進医療などについても教えてください。
Q7 放射線治療はどれくらいの日数がかかりますか。
Q8 放射線治療中も普通に生活できますか。

・放射線治療のしくみについて教えてください。
Q9 放射線治療は、なぜがんに有効なのですか。
 1 放射線治療でどのようにがんが治るのですか。
 2 放射線治療が効きにくいがん、効きやすいがんはあるのですか。
 3 正常な部分に影響はないのでしょうか。
 4 放射線治療はがん以外の病気にも効くのですか。
Q10 治療に使う放射線の種類と装置について教えてください。
 1 放射線とは何で、どんな種類や単位があるのですか。
 2 放射線治療にはどの放射線を使うのですか。
 3 放射線治療にはどのような装置を使うのですか。
Q11 放射線治療の方法について教えてください。
 1 外部照射について教えてください。
 2 定位放射線治療について教えてください。
 3 画像誘導放射線治療(IGRT)について教えてください。
 4 強度変調放射線治療(IMRT)について教えてください。
 5 粒子線治療について教えてください。
 6 照射中には息を止めなくてはなりませんか。
 7 小線源治療について教えてください。
 8 内用療法(標的アイソトープ治療)について教えてください。

・放射線治療を受けることにしましたがもう少し教えてください。
Q12放射線治療の実際の手順について教えてください。
 1 放射線治療をするかどうかはどのように決めるのですか。
 2 放射線治療計画とは何ですか。
 3 どのように放射線治療が進むのか教えてください。
 4 照射法の変更をすることがあるのはなぜですか。
 5 放射線治療は外来通院と入院のどちらがよいのでしょうか。
 6 土日、祝日の照射を休みにすると、治療の効果は弱くなりますか。
 7 自分の都合で治療を休んでも、効果に影響はないですか?
 8 患者によって治療の回数が違うのはなぜですか。
 9 放射線治療を一度受けたら、繰り返し受けられないのですか。
Q13 放射線治療の併用療法について教えてください。
 1 薬物療法との併用はどのような場合に有効ですか。
 2 手術との併用はどのような場合に有効ですか。
 3 そのほかの治療方法との併用は有効か教えてください。
 4 治療用の印が消えそうなのですが。
 5 治療中に咳やくしゃみが出そうになったらどうすればよいですか。
Q14 放射線治療の効果はどのように判定するのか教えてください。
 1 放射線治療の効果はいつわかるのですか。
 2 放射線治療の効果はどのような方法でわかるのですか。

・放射線治療中の生活や注意点について教えてください。
Q15 放射線治療中から直後の生活上の注意について教えてください。
 1 食事で気をつける点はありますか。 91
 2 入浴、温泉、サウナ、岩盤浴は大丈夫でしょうか。
 3 仕事や家事は今までどおり可能ですか。
 4 旅行やスポーツはどの程度できますか。
 5 飲み薬や塗り薬は今までどおり使ってよいですか。
 6 インフルエンザなどの予防接種を受けてよいですか。
 7 タバコを吸ったりお酒を飲んだりしてもよいですか。
 8 ムダ毛の処理は今までどおり行ってよいですか。
 9 あんま、マッサージ、針、灸、エステなどは大丈夫ですか。
Q16 放射線治療中に不安になりがちな点について教えてください。
 1 治療の悪影響がない時は、治療効果もないのでしょうか。
 2 悪影響がいつ出るか心配なのですが。
 3 治療箇所と違う場所に印が付いているのですが。
 4 治療用の印が消えそうなのですが。
 5 治療中に咳やくしゃみが出そうになったらどうすればよいですか。

・放射線治療部位別の治療法を教えてください。
Q17 脳・脊髄への放射線治療について教えてください。
 1 脳に放射線を当てて大丈夫なのでしょうか。治療の悪影響と対処法について教えてください。
 2 脳腫瘍のタイプによって放射線治療法が違いますか。
 3 全脳照射、全中枢神経系照射(全脳全脊髄照射)とはどのような治療ですか。
 4 定位放射線治療はどのような時に有効ですか。
 5 脳転移に対する放射線治療について教えてください。
 6 脳腫瘍に粒子線治療は有効ですか。
 7 散髪、洗髪、白髪染め、パーマをしても大丈夫でしょうか。脱毛はいつ頃治りますか。
 8 良性の病気ではどのような時に有効ですか。
 9 脊髄腫瘍への放射線治療はどのような時に有効ですか。
 10 脊髄圧迫に対する放射線治療はどのような時に有効ですか。
Q18 頭頸部(顔からのど)への放射線治療について教えてください。
 1 手術より放射線治療のよい点は何ですか。
 2 喉頭がんは声への影響はありませんか。
 3 治療法を選ぶ時のポイントはどのような点ですか。
 4 口やのどの治療による悪影響と対処法について教えてください。いつ頃治りますか。
 5 治療中のひげ剃りや化粧品の使用は問題ありませんか。
 6 歯みがきや歯科治療は問題ありませんか。
 7 甲状腺がんへの放射線治療について教えてください。
 8 眼の腫瘍ですが視力への影響はありませんか。
Q19 胸部(乳房、肺、食道など)への放射線治療について教えてください。
 1 肺がんの治療法を選ぶ時のポイントはどのような点ですか。
 2 一般的な肺がんの放射線治療はどのように行うのでしょうか。
 3 肺気腫や間質性肺炎があっても治療できますか。
 4 肺がんに対する定位放射線治療とはどのような治療ですか。
 5 肺がんに対する粒子線治療はどのような時に有利ですか。
 6 肺がんで放射線治療に薬物療法を加える必要はありますか。
 7 肺がんに対する放射線治療の悪影響と対処法について教えてください。
 8 乳がん術後の放射線治療は必要なのでしょうか。
 9 乳房温存術後の放射線治療はどのようにするのでしょうか。
 10 乳房切除術後の放射線治療はどのようにするのでしょうか。
 11 乳がん術後の放射線治療の悪影響と対処法について教えてください。
 12 乳がんを手術せずに放射線治療で治せますか。
 13 放射線治療後に乳房再建はできますか。乳房再建後には放射線治療はできないのですか。
 14 食道がんの治療法を選ぶ時のポイントはどのような点ですか。
 15 一般的な食道がんの放射線治療はどのように行うのでしょうか。
 16 食道がんへの放射線治療の悪影響と対処法について教えてください。
Q20上腹部(膵、肝など)への放射線治療について教えてください。
 1 膵がんの治療法を選ぶ時のポイントはどのような点ですか。
 2 一般的な局所進行膵がんの放射線治療について教えてください。
 3 肝臓がんへの放射線治療はどのような時に行いますか。
 4 肝臓がんへの定位放射線治療や粒子線治療はどのような時に有利ですか。
 5 肝臓がんの体幹部定位放射線治療はどのように行うのか教えてください。
 6 胆道がんへの放射線治療はどのような時に行いますか。
 7 腎がんでは放射線治療はどのような時に有利ですか。
 8 胃がんや大腸がんではどのような時に放射線治療を行いますか。
Q21 下腹部(前立腺、子宮、膀胱、直腸など)への放射線治療について教えてください。
 1 前立腺がんの治療法を選ぶ時のポイントはどのような点ですか。
 2 前立腺がんの外部照射はどのように行うか教えてください。
 3 前立腺がんに対する小線源治療はどのように行うか教えてください。
 4 前立腺がんに対する放射線治療の悪影響と対処法について教えてください。
 5 子宮頸がんの治療法を選ぶ時のポイントはどのような点ですか。
 6 子宮頸がんでは腔内照射は必要なのでしょうか。
 7 子宮頸がんの放射線治療はどのように行うか教えてください。
 8 子宮頸がんに対する放射線治療の悪影響と対処法について教えてください。
 9 子宮体がん、卵巣がん、腟がんや外陰がんでは放射線治療はどのような時に有用ですか。
 10 直腸がんへの放射線治療はどのような時に行いますか。
 11 肛門がんで放射線治療を行うメリットについて教えてください。
 12 膀胱がんで放射線治療を行うメリットについて教えてください。
 13 精巣(睾丸)腫瘍、陰茎がんではどのような時に放射線治療を行いますか。
Q22骨軟部(骨、筋肉など)・皮膚への放射線治療について教えてください。
 1 骨転移に放射線治療は効きますか。
 2 骨転移に対する放射線治療の方法について教えてください。
 3 骨軟部肉腫に放射線治療は効きますか。
 4 骨軟部腫瘍への粒子線治療はどのような場合に有用ですか。
 5 骨軟部腫瘍への放射線治療の悪影響について教えてください。
 6 皮膚がんへの放射線治療はどのような時に行いますか。
 7 悪性黒色腫に放射線治療は効きますか。
 6 がんのリンパ節転移に放射線治療は効きますか。
Q24こどもへの放射線治療について教えてください。
 1 こどもに放射線治療をして大丈夫なのですか。
 2 こどもとおとなでは照射の仕方が違いますか。
 3 小児白血病に対する全脳照射はどのような時に行いますか。
 4 ウィルムス腫瘍ではどのような時に放射線治療を行いますか。
 5 神経芽腫ではどのような時に放射線治療を行いますか。
 6 こどもの肉腫ではどのような時に放射線治療を行いますか。
 7 こどもへの放射線治療の後遺症と対処法について教えてください。
Q23リンパ・血液のがんへの放射線治療について教えてください。
 1 悪性リンパ腫の放射線治療はどのような場合に有用ですか。
 2 悪性リンパ腫への放射線治療の悪影響について教えてください。
 3 骨髄腫に放射線治療は効きますか。 185
 4 造血幹細胞移植(骨髄移植)のための全身照射とはどのような治療ですか。
 5 全身照射の悪影響について教えてください。
Q25がん以外の病気(良性疾患)での放射線治療について教えてください。
 1 がん以外ではどのような病気に放射線治療を行うのでしょうか。
 2 甲状腺眼症ではどのような時に放射線治療を行いますか。
 3 ケロイドではどのような場合に放射線治療を行いますか。
 4 血管腫ではどのような場合に放射線治療を行いますか。
 5 動静脈奇形ではどのような場合に放射線治療を行いますか。
 6 がんでなくても放射線治療の悪影響は問題ないのでしょうか。

・放射線治療後の生活について教えてください。
 1 食事など生活上で気をつける点はありますか。
 2 後遺症が心配なのですが。
 3 放射線腫瘍科(放射線治療科)にも通う必要があるのですか。
 4 胃腸の不快な症状の対処法について教えてください。
 5 直腸出血や膀胱出血が起こった時の対処法について教えてください。
 6 後遺症の可能性がある時は誰に相談すればよいですか。

付表1. 代表的な外部放射線治療の照射法
付表2. 施設一覧(放射線治療実施施設)
付表3. 参考書籍
付表4. 参考ウェブサイト
<序文>

 『患者さんと家族のための放射線治療Q&A』(2020年版)を刊行することとなりました。この放射線治療Q&Aは患者さんに非常に好評であった日本放射線腫瘍学会(JASTRO)ホームページ(https://www.jastro.or.jp/customer/)に設けられている患者さんのためのQ&Aコーナーに新たな質問を追加したうえで、前版の2015年版を改訂し、日本放射線腫瘍学会広報委員会が一冊の本にまとめたものです。執筆・校正に多くの時間と労力を注がれた中川恵一 広報委員長、唐澤久美子 編集責任者をはじめ、広報委員諸氏に敬意を表します。
 本書には、放射線治療基礎となる物理学的、生物学的背景をはじめ、実臨床における放射線治療の適応となる疾患および病態、照射部位別に発生の可能性のある有害事象とその対策などがわかりやすく書かれています。近年の放射線治療では、放射線を可能な限り腫瘍のみに集中させ、正常組織の線量を下げることで、照射精度および治療精度の向上とともに副作用の低減を目指した努力を積み重ね、新規治療計画装置や治療機器の開発により、大きな展開が認められております。強度変調放射線治療、定位放射線治療、画像誘導放射線治療、粒子線治療などの最新の高精度放射線治療、また患者さんの体内に放射線物質を留置して行う、腔内照射・組織内照射に関しても患者さんの疑問にくわしく答えております。
 現在、日本人の約半数ががんに罹患し、約3分の1の方ががんで亡くなる時代といわれております。しかしながら、全がんの患者さんの5年生存率は60%を超えております。がん治療は大きく進歩しており、放射線治療の進展に関して患者さんにご理解いただけることを切に願います。2015年のJASTROの調査によりますと、がん患者さんの25%に放射線治療が施行されていますが、欧米における放射線治療施行患者割合の半分以下となっております。本邦ではこれまで、根治できるがん治療は手術であり、手術できないときは致し方なく放射線治療を行うというような古典的な考え方が残っていました。背景として本邦がまた唯一の原爆被曝国であり、原発事故などにともない、放射線に対する拒否感覚が起因しているのではないかとも考られます。
 本書はそのような方々の心配や疑問にも答える形式で記載されており、安心かつご納得して放射線治療を受けられる患者さんが増えることを期待しています。
 日本放射線腫瘍学会は2010年に日本医学会の分科会となり、2012年に公益社団法人に認められました。がんの放射線治療について普及、啓発活動は学会事業の柱です。本書が放射線治療に関して患者さんのご理解のお役に立つことを祈念します。

公益社団法人 日本放射線腫瘍学会 理事長 茂松 直之


<2020年版の出版にあたって>

 放射線治療は、手術、薬物療法と並ぶ「がんの3大治療法」の1つで、日本でも多くの患者さんが受けている治療です。また、がん以外の病気の治療に使われることもあります。しかし、手術や薬の治療と比べるとなじみが薄く、「放射線」がもつ一般の方には縁遠いイメージから、その利用が他国並みには進んでいませんでした。
 そのような状況の中、日本放射線腫瘍学会では2015年に、放射線治療を理解して上手に利用し、病気と闘っていただくために、『患者さんと家族のための放射線治療Q&A』を刊行しました。多くの反響をいただきましたが、発行から5年が経過し、放射線治療の進歩や粒子線治療の保険適用などを含め、現状にそぐわない点も出てきました。それを受け、現状に即して改訂したのが本書です。
 本書では、患者さんや患者さんのご家族のために、放射線治療の幅広い内容を「問いに答える形式(Q&A)」でわかりやすく解説しています。放射線治療の基本原理、放射線治療の種類、使用する装置、実際の治療の進め方、各がんに対して行われる放射線治療の実際、治療中と治療後の生活上の注意点、悪影響が生じた場合の対処方法までを記載しました。放射線治療のガイドライン(治療のための指針)としての役割とともに、闘病中の実生活におけるガイドブック(具体的なヒント)の役割をも果たすものと考えています。本書の編集と執筆は、日本放射線腫瘍学会の広報委員会を中心に行われました。わかりにくい表現や不十分な説明を改めるように心がけましたが、今後も読者の皆様のご意見をもとに内容を改訂していきたいと考えています。本書に対するご意見は、日本放射線腫瘍学会の広報委員会宛にお手紙で、あるいは日本放射線腫瘍学会のホームページ上の「ご意見・ご質問」にあるフォームからお寄せいただければ幸いです(https://www.jastro.or.jp/contact/)。
 本書が、多くの皆様のお役に立つことを願っています。

2020年10月吉日
日本放射線腫瘍学会広報委員会 委員長 中川 恵一
編集責任者 唐澤 久美子