放射線治療計画ガイドライン 2024年版 第6版

新項目が盛り込まれ、高精度放射線治療や品質管理の記載も強化!

編 集 日本放射線腫瘍学会
定 価 5,940円
(5,400円+税)
発行日 2024/11/20
ISBN 978-4-307-07131-4

B5判・528頁・カラー図数:410枚

在庫状況 あり

今回の改訂では、新規項目として総論に「即時適応放射線治療」、泌尿器章に「腎癌」、緩和・転移章に「オリゴ転移」、「緊急照射:消化管出血」、付表に体幹部定位照射における正常組織耐容線量基準としてAAPM_TG101を追加しました。
また、2022年にガイドライン委員会で施行した2020年版の実施状況に関する「放射線治療計画ガイドラインモニタリング指標に関する研究」の結果を各項目に記載しています。
序文
放射線治療計画ガイドライン2024 年版(改訂第6版)発刊にあたって
作成資金と利益相反
ガイドライン委員会

総論
I.放射線治療計画総論
II.通常の外部放射線治療における品質管理
III.定位放射線照射の手法と品質管理─頭部─
IV.定位放射線治療の手法と品質管理─体幹部─
V.呼吸性移動対策の手法と品質管理
VI.IMRTの手法と品質管理
VII.IGRTの手法と品質管理
VIII.即時適応放射線治療の手法と品質管理
IX.粒子線治療の手法と品質管理
X.正常組織反応
XI.リスク分析

中枢神経
I.悪性神経膠腫
II.低悪性度神経膠腫
III.髄芽腫
IV.上衣腫
V.頭蓋内胚細胞腫(旧 脳胚腫)
VI.下垂体神経内分泌腫瘍
VII.聴神経腫瘍
VIII.髄膜腫
IX.脊髄腫瘍

頭頸部
I.総論
II.眼・眼窩腫瘍
III.上顎洞癌
IV.上咽頭癌
V.中咽頭癌
VI.下咽頭癌
VII.喉頭癌
VIII.口腔癌
IX.唾液腺腫瘍
X.甲状腺癌
XI.原発不明頸部リンパ節転移
XII.CTVアトラス(頭頸部癌リンパ節領域)

胸部
I.非小細胞肺癌
II.小細胞肺癌
III.肺癌に対する定位放射線治療
IV.悪性胸膜中皮腫
V.縦隔腫瘍
VI.CTVアトラス(肺癌)
VII.乳癌
VIII.CTVアトラス(乳癌リンパ節領域)

消化器
I.食道癌
II.CTVアトラス(胸部食道癌リンパ節領域)
III.直腸癌
IV.肛門癌
V.直腸癌・肛門癌 リンパ節領域アトラス
VI.原発性肝癌
VII.胆道癌
VIII.膵癌

泌尿器
I.膀胱癌
II.前立腺癌根治照射
III.前立腺全摘除術後の放射線治療
IV.前立腺癌─高線量率組織内照射─
V.前立腺癌─密封小線源永久挿入療法─
VI.CTVアトラス(前立腺)
VII.精巣(睾丸)腫瘍
VIII.陰茎癌

婦人科
I.子宮頸癌
II.子宮体癌
III.腟癌・外陰癌
IV.婦人科癌のIGBT
V.CTVアトラス(子宮頸癌)

血液・リンパ・皮膚・骨・軟部
I.ホジキンリンパ腫
II.非ホジキンリンパ腫
III.節外性リンパ腫
IV.骨髄腫
V.皮膚腫瘍
VI.骨・軟部腫瘍
VII.骨・軟部腫瘍の粒子線治療

小児
I.総論
II.小児腎腫瘍(腎芽腫とその他の小児腎腫瘍)
III.横紋筋肉腫
IV.神経芽腫
V.ユーイング肉腫
VI.小児白血病
VII.小児がんの陽子線治療

転移・緩和
I.脳転移
II.骨転移
III.緊急照射
IV.オリゴ転移

良性疾患
I.甲状腺眼症
II.ケロイド・翼状片
III.血管腫・血管奇形
IV.脳動静脈奇形
V.脾機能亢進・脾腫

付表1.通常分割照射における正常組織の耐容線量
付表2.QUANTECによる正常組織の耐容線量
付表3.AAPM Task Group 101による正常組織の耐容線量
索引
<序文>

 わが国ではがん罹患数が100 万人を超える時代を迎え、女性の約3 人に1 人、男性の約2 人に1人が生涯のうちにがんを経験する時代となりました。診断技術の進歩により早期発見が増加している一方で、治療が困難な進行例や再発例もいまだ多く、日本人の死因第1 位として約30%を占めています。このような状況下において、放射線治療は科学技術の進歩に支えられ、がんの根治から症状緩和、さらには遠隔転移例の予後改善まで、幅広い患者に対し、重要な役割を担う治療法として飛躍的な進展を遂げています。その適応範囲と多様性は、他の3 大治療法である外科手術や薬物療法を凌ぐ広がりを見せています。

 『放射線治療計画ガイドライン』は、2004 年に日本放射線科専門医会・医会の放射線診療ガイドライン策定事業の一環として初版が発刊されて以降、放射線治療技術の進歩、がん診療形態の変化や国民の期待、医療政策や保険診療制度の変革に対応しつつ、4 年ごとの改訂を重ねてきました。
本書は初版から20年を経て、第6 版として刊行されることとなりました。本ガイドラインは、通常の診療ガイドラインのようにCQ(臨床的疑問)を設定しEBM(根拠に基づく医療)に依拠する形ではなく、専門家によるコンセンサスに基づいた記載を基本としています。しかしながら、井垣 浩ガイドライン委員長および辻野 佳世子ガイドライン改訂作業委員長が「発刊にあたって」で述べているように、エビデンスに基づく記載をできる限り取り入れることで、他の診療ガイドラインとの整合性が図られています。本版では総論で即時適応放射線治療、各論では腎癌やオリゴ転移などさまざまな新項目が盛り込まれ、高精度放射線治療の手法と品質管理に関する記載も強化されています。

 本ガイドラインが、あらゆる臨床現場において放射線腫瘍医の重要な指針となること、また放射線治療に関わるすべての職種にとって有益な教科書となることを期待しています。提示された標準的な放射線治療計画が礎となり、安全で高精度な治療を提供できる体制の構築と、地域や施設の規模を問わず放射線治療が提供される社会の実現に寄与することを願います。最後に、本ガイドラインの作成に尽力されたガイドライン委員、執筆者、編集関係者の皆様に深謝申し上げます。

2024年10月
公益社団法人日本放射線腫瘍学会
宇野 隆


<放射線治療計画ガイドライン2024年版(改訂第6版)発刊にあたって>

 日本放射線腫瘍学会(JASTRO)ガイドライン委員会では、2004年の第1版発刊以来、最新情報を追加しながら4年ごとに放射線治療計画ガイドラインの改訂を行ってきた。今回、最新のエビデンスや2024年の診療報酬改定の内容を反映した改訂第6版として「放射線治療計画ガイドライン2024年版」を出版する運びとなった。

 読者にとって有用性の高い書籍になることを目指し、2016年版以来掲載している代表的な疾患の臨床標的体積(CTV)アトラスだけでなく、疾患ごとのCTVの代表的設定例の画像もなるべく多くの疾患で掲載するようにした点、本文とは区別しやすいように解説部分を紫色にして一見で把握できる様にした点なども、前版の形式を踏襲しつつ、更に本書を活用しやすくなるようにした。
さらには、多様ながん治療領域で発行されている各種診療ガイドラインでも、放射線治療に関するエビデンスや推奨が記載されているものが多いが、それらの診療ガイドラインの記載との整合性にもできる限りの配慮をした。本ガイドラインを各種診療ガイドラインと相補的に利用することによって、放射線腫瘍医には勿論、他領域の専門医にも日常診療の場面でより多くの有用な情報を提供できれば幸いである。
今回の改訂の方針として、“放射線治療計画”という特殊性から“診療ガイドライン”のようなGRADE形式(CQ設定など)はとらず、従来通り文献およびエキスパートコンセンサスに基づく説明文形式とすること、ただし経験的私見や少数の後方視的研究はなるべく排除し可能なかぎりエビデンスに基づく記載とすることを改訂ワーキングで合意し執筆を開始した。その上で今回の改訂の主な特徴・変更点を以下にまとめる。

1)執筆前に2020年版に対するご意見、さらに初稿完成後に初稿に対するパブコメをJASTRO会員に募り、内容に反映した。
2)2022年にガイドライン委員会で施行した2020年版の実施状況に関する「放射線治療計画ガイドラインモニタリング指標に関する研究」の結果を「2020年版アンケート調査結果」として各項目説明文内に記載した。
3)新規項目として、総論に“即時適応放射線治療”、泌尿器章(章扉)に“腎癌”、転移・緩和章に“オリゴ転移”、“緊急照射:消化管出血”、付表に体幹部定位照射における正常組織耐容線量基準としてAAPM_TG101を追加した。
4)各論の構成としてまず“放射線治療計画“の項目で治療計画の概要をまとめた。
5)可能な限り章にまたがる用字統一を行った。ただし、放射線治療計画の種々体積については、例えば原発腫瘍のCTVをみてもCTVp,CTVprimary,CTV1など種々の表現があり、疾患毎に慣用的に用いられているものも多いため、今回はあえて統一しなかったが、今後の課題である。

 最後に、本ガイドラインの執筆、編集、校正の作業にご尽力くださったJASTROガイドライン委員、執筆担当者、JASTRO理事会ならびにJASTRO事務局の方々、そして、出版までの全工程を通じて多大なるご協力をいただいた金原出版の石黒大介様と須之内和也様に感謝の意を表します。

2024年10月
ガイドライン委員長 井垣 浩
ガイドライン改訂作業委員長 辻野 佳世子