がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン 2016年版

緩和ケアに携わる医療者必携 緩和医療ガイドラインの第6弾!

編 集 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会
定 価 2,200円
(2,000円+税)
発行日 2016/06/20
ISBN 978-4-307-10179-0

B5判・112頁・図数:22枚

在庫状況 あり

がん患者の訴える泌尿器症状は多岐にわたる。その対応に際しては、処置が患者に与える有益性だけでなく、負の側面についても検討し、患者中心に考えることが重要である。本書では、II章「背景知識」で進行がん患者の泌尿器症状で遭遇する頻度の高い7症状と、現場からの要望が大きい尿路カテーテル管理について解説。III章「推奨」では計8の臨床疑問を収載し、エビデンスと専門家の見解に基づく治療指針を示した。
I章 はじめに
 1. ガイドライン作成の経緯と目的
 2. ガイドラインの使用上の注意
 3. エビデンスと推奨の強さ
  1. エビデンスの強さ
  2. 推奨の強さ
 4. 用語の定義と概念

II章 背景知識
 1. 血尿
  はじめに
  1. 症候
  2. 病態生理
  3. 評価と検査
  4. 治療
  まとめ
 2. 下部尿路症状
  はじめに
  1. メカニズム、病態生理
  2. 評価、身体所見と検査
  3. 診断と治療
  まとめ
 3. 上部尿路閉塞・腎後性腎不全
  はじめに
  1. 病態生理
  2. 上部尿路閉塞の原因
  3. 評価と検査
  4. 治療方法
  まとめ
 4. 膀胱部痛・膀胱けいれん
  はじめに
  1. 病態生理
  2. 評価
  3. 治療
 5. 陰部浮腫
  はじめに
  1. 病態生理
  2. 鑑別診断
  3. 評価と検査
  4. 治療
  まとめ
 6. 尿路感染症
  はじめに
  1. 病態生理
  2. 原因菌(病因)
  3. 病態の評価
  4. 症状と検査
  5. 治療の解説
  まとめ
 7. 尿路カテーテル管理
  はじめに
  1. 尿路カテーテルの適応
  2. 管理の実際
  まとめ
 8. 性機能障害
  はじめに
  1. 病態生理と原因
  2. がん患者に生じたEDの評価と検査
  3. がん患者に生じたEDに対する治療
  4. 女性がん患者における性機能障害

III章 推奨
 1. 血尿
 2. 下部尿路症状(尿閉)
 3. 下部尿路症状(頻尿・尿失禁)
 4. 上部尿路閉塞・腎後性腎不全
 5. 膀胱部痛・膀胱けいれん

IV章 資料
 1. 作成過程
  1. 概要
  2. 臨床疑問の設定
  3. 系統的文献検索
  4. ガイドラインと教科書
  5. 妥当性の検証
  6. ガイドライン作成者と利益相反
 2. 文献検索式
 3. 今後の検討課題

索引
発刊にあたって

 泌尿器症状は、ある程度進行したがん患者から終末期のがん患者に生じることが多く、臨床の場ではしばしば経験される身体症状の一つとして知られています。日本緩和医療学会は、2008年に「終末期がん患者の泌尿器症状対応マニュアル(Web版)」を上梓していますが、このマニュアルは主に終末期のがん患者の泌尿器症状を対象としていました。また、すぐに泌尿器科専門医にコンサルトできない施設で泌尿器症状に遭遇した場合への対応について書かれたものであり、現場で対応可能な検査や処置が記載され、対応不可の場合は泌尿器科専門医への紹介を推奨するという内容でした。しかし、近年、緩和ケアの概念が“がん”と診断されたときからの緩和ケアの提供へと拡がり、がん患者のさまざまな症状への取り組みについても必然的に変化が生じてきています。
 このような背景から、終末期だけでないがん患者の泌尿器症状への対応を網羅したガイドラインが必要であるとの声が高まり、外部委員も含めた「泌尿器症状ガイドライン作成Working Practitioner Group(WPG)」が日本緩和医療学会に組織されました。
 まず、対象患者を前マニュアルより広く「進行がんの病変そのもの、または治療による副作用で泌尿器症状が出現している患者」とし、日本緩和医療学会代議員に経験することの多い泌尿器症状についてのアンケート調査を行い、その結果を参考に、進行がん患者に生じる泌尿器症状の中で、特に緩和ケアの臨床で経験する機会の多いとされた、(1)血尿、(2)下部尿路症状、(3)上部尿路閉塞・腎後性腎不全、(4)膀胱部痛・膀胱けいれん、(5)陰部浮腫、(6)尿路感染症、(7)性機能障害を主に取り上げることとなりました。これらはまだ新しい分野でもあり、質の高いエビデンスのある論文がまだ希薄であったため、専門家の意見を取り入れながら、WPG員が多くのミーティングとデルファイ法を繰り返しながら推奨を作成するという努力を重ねられ、ついに、ここに「がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン2016年版」として上梓されることになりました。
 このような経緯と目的で作成された本ガイドラインは、泌尿器症状のある患者への適正処置の単なる内容紹介ではなく、その処置の患者への有益性と有害性とのバランスにまで言及した“患者中心”の内容となっており、その点が前マニュアルとは大きく異なっています。このガイドラインは緩和ケアの臨床の場で、有用な座右の書となってくれると思います。
 最後に本ガイドライン作成にあたり、アンケートに答えていただいた代議員と、多大なご尽力とご努力を傾注していただいた外部委員を含めた「泌尿器症状ガイドライン作成WPG」の皆様に対し、この場を借りて感謝の意を表すとともに、このガイドラインが緩和ケアの臨床現場で大いに役立ち、多くの泌尿器症状に苦しむがん患者さんのつらさの軽減に役立つことを祈念して、序文とさせていただきます。

2016年5月
特定非営利活動法人 日本緩和医療学会
理事長 細川 豊史