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認知症・パーキンソン症候群 臨床と画像との対応 MRI・SPECTを中心に
実地臨床で脳画像を正しく活用できるよう工夫した稀有な実践書!
認知症・パーキンソン症候群の臨床とMRI・SPECTを対比させ、実地臨床で脳画像を正しく活用できるよう工夫した稀有な実践書。前半では脳のアトラスから、VSRAD、SPM/DARTEL、3D-SSP/two-tail view、DaT View/DaTQUANTなど、最新の統計解析までをわかりやすく解説。後半の臨床編では鮮明な画像と著者の視点が、日常的に遭遇する疾患別にcolumnとして要約される。
略語一覧
Part 1.画像の基礎
1-1.脳MRI
●表示画像
●脳のアトラス
●VSRAD
●SPM/DARTEL解析
●代表的疾患のSPM/DARTEL解析パターン
1-2.脳血流SPECT
●脳血流SPECT製剤
●表示画像
●3D-SSP解析
●3D-SSP画像表示
●代表的疾患の3D-SSP解析パターン
1-3.DAT SPECT
●黒質線条体路、ドパミンシナプスと123 I-FP-CIT
●DAT SPECT収集条件、再構成条件
●DaT View
●代表的疾患のDAT SPECT画像
●留意すべきこと
●DaTQUANT
1-4.脳MRI・血流正常画像
Part 2.鑑別診断に有用な検査
2-1.MIBG心筋シンチグラフィー
2-2.MMSE
2-3.FAB
2-4.OSIT-J
Part 3.臨床編
3-1.認知症
01 アルツハイマー病(AD)
02 軽度認知障害(MCI)
03 混合型認知症(MD)
04 後部皮質萎縮症(PCA)
05 Lewy小体型認知症(DLB)
06 前頭側頭型認知症(FTD)─FLD type
07 前頭側頭型認知症(FTD)─Pick type
08 前頭側頭型認知症(FTD)─MND type
09 進行性非流暢性失語症(PNFA)
10 意味性認知症(SD)
11 Logopenic型PPA(lvPPA)
12 特発性正常圧水頭症(iNPH)
13 血管性認知症(VaD)
14 嗜銀顆粒性認知症(AGD)
15 神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)
3-2.パーキンソン症候群
16 パーキンソン病(PD)
17 認知症を伴うパーキンソン病(PDD)
18 常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソニズム(AR-JP)
19 脳血管障害+パーキンソン病(CVD+PD)
20 多系統萎縮症パーキンソニズム型(MSA-P)
21 多系統萎縮症小脳型(MSA-C)
22 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-RS
23 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-P
24 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-FTD
25 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-PAGF
26 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-C
27 大脳皮質基底核症候群(CBS)─CBS-CBD
28 大脳皮質基底核症候群(CBS)─CBS-FTD
3-3.その他の疾患
29 本態性振戦(ET)
30 薬剤性パーキンソン症候群(DIP)
31 血管性パーキンソン症候群(VP)
32 純粋自律神経不全症(PAF)
付録1.DaTQUANT値一覧
付録2.参考文献一覧
おわりに
Part 1.画像の基礎
1-1.脳MRI
●表示画像
●脳のアトラス
●VSRAD
●SPM/DARTEL解析
●代表的疾患のSPM/DARTEL解析パターン
1-2.脳血流SPECT
●脳血流SPECT製剤
●表示画像
●3D-SSP解析
●3D-SSP画像表示
●代表的疾患の3D-SSP解析パターン
1-3.DAT SPECT
●黒質線条体路、ドパミンシナプスと123 I-FP-CIT
●DAT SPECT収集条件、再構成条件
●DaT View
●代表的疾患のDAT SPECT画像
●留意すべきこと
●DaTQUANT
1-4.脳MRI・血流正常画像
Part 2.鑑別診断に有用な検査
2-1.MIBG心筋シンチグラフィー
2-2.MMSE
2-3.FAB
2-4.OSIT-J
Part 3.臨床編
3-1.認知症
01 アルツハイマー病(AD)
02 軽度認知障害(MCI)
03 混合型認知症(MD)
04 後部皮質萎縮症(PCA)
05 Lewy小体型認知症(DLB)
06 前頭側頭型認知症(FTD)─FLD type
07 前頭側頭型認知症(FTD)─Pick type
08 前頭側頭型認知症(FTD)─MND type
09 進行性非流暢性失語症(PNFA)
10 意味性認知症(SD)
11 Logopenic型PPA(lvPPA)
12 特発性正常圧水頭症(iNPH)
13 血管性認知症(VaD)
14 嗜銀顆粒性認知症(AGD)
15 神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)
3-2.パーキンソン症候群
16 パーキンソン病(PD)
17 認知症を伴うパーキンソン病(PDD)
18 常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソニズム(AR-JP)
19 脳血管障害+パーキンソン病(CVD+PD)
20 多系統萎縮症パーキンソニズム型(MSA-P)
21 多系統萎縮症小脳型(MSA-C)
22 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-RS
23 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-P
24 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-FTD
25 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-PAGF
26 進行性核上性麻痺(PSP)─PSP-C
27 大脳皮質基底核症候群(CBS)─CBS-CBD
28 大脳皮質基底核症候群(CBS)─CBS-FTD
3-3.その他の疾患
29 本態性振戦(ET)
30 薬剤性パーキンソン症候群(DIP)
31 血管性パーキンソン症候群(VP)
32 純粋自律神経不全症(PAF)
付録1.DaTQUANT値一覧
付録2.参考文献一覧
おわりに
●神経内科医の立場から
19世紀後半に40代前半であったわが国の平均寿命は、医学や衛生環境の飛躍的な向上により、わずか130年あまりでこれまで経験したことのない高齢化を迎えている。また、同時に少子化も急速に進んでいることから、高齢者になっても健康であること、すなわち健康長寿が社会的に重要視されるようになった。
脳卒中や虚血性心疾患などの血管系イベントの抑制には、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病のコントロールが重要であることがエビデンスをもって示され、その結果、多くの有効な薬剤が上市されてきた。また、癌においては検診率の増加に示されるように早期発見・早期治療の重要性が定着し、数十年前まで対症療法にとどまっていた難治性癌においても、より低侵襲でより良好な予後が期待できる新規治療が開発されている。
このような恩恵に恵まれた反面、われわれが現在、直面し避けられない社会的課題が、本書で取り扱う「認知症」や「パーキンソン症候群」である。2013年、日本神経治療学会は専門医を対象にアンケート調査を行ったが、unmet medical needsのきわめて高い疾患、ないしは新規治療の開発が急務である疾患として認知症やパーキンソン症候群を構成する背景疾患がいくつも指摘された。すなわち、この両者の克服には、たいへん高いハードルが存在している状況にあると理解できる。
さて、認知症とパーキンソン症候群についての現状をまず整理するが、これらのmajorityは脳変性疾患であること、そして臨床症状が出現するまでに中枢神経系内では各疾病に対応した領域においてほぼ確実に大多数の神経細胞に変性や脱落を生じていること、その変性過程を病理学的初期の段階で検出することは一般病院ではきわめて困難であること、こうした変性過程を抑制したり改善したりできる治療法がないこと、などである。しかし、iPS細胞研究をはじめとする国内外の先端基礎研究が進んでいるのも事実であるし、近年の神経科学の発展を勘案すると認知症やパーキンソン症候群の克服までは到達できないにせよ、その進行を遅らせ、上手に疾病と付き合いながら生涯をまっとうできる日はそう遠くないと確信している。
本書は脳初学者から専門医までを対象とした実践書である。前半では解剖学的な用語や脳のアトラスにはじまり、MRI VSRAD とSPM/DARTEL、脳血流SPECT 3D-SSP/two-tail view、ドパミントランスポータSPECT DaT View/DaTQUANTなど、最新の統計解析技術までがよくわかるように解説した。また、後半の臨床編では、主訴や病歴、神経所見などを記した症例を日常的に遭遇する疾患別に呈示しながら画像所見について概説し、columnには記憶にとどめておきたい内容を簡潔に付記した。
Molecular imagingを包含した脳核医学的手法は、今後ますますin vivo検査として発展し、発症後の鑑別診断にとどまらず、近未来的には発症前診断や治療効果判定に大きな役割を果たしていくと思われる。本書を手にした皆さまの日常臨床現場において、脳画像を正しく活用できるよう役立てていただければ望外の喜びである。
鈴木 正彦
●研究者の立場から
長い間、医療機の開発に携わり、システムが大きくなると関係者が増大してチーム運営が難しくなることを経験した。そこで、人間の全体最適化を司っている脳に興味を覚えた。視覚に訴える画像の世界からのアプローチを考えたが、専門外の脳構造、脳機能を理解することは容易でなかった。今回、本書において画像解析関連の執筆の機会を得て、これまでに遭遇した自分自身の疑問に答える形にしようと思った。そうすることで、脳画像、とくに脳機能画像に触れる機会が少なかった方の疑問が解け、画像に親しんでいただき、画像ならではの情報を実際の診療に役立てていただきたいと思った。以下に主な疑問点を記す。
・ベースとなる脳のアトラスがわからない。
・症例画像と比べるために正常画像をみたい。
・機能画像はMRIに比べて解像度が粗く部位を特定しづらい。
・典型的疾患パターンといわれるが、それがわからない。
・3D-SSP統計画像の小脳基準画像なのに小脳血流に増減がみられる。
・新規に実施可能となったDAT SPECTとは?
なお、本書では物語のように全体を通して読んでいただける構成を目指した。全体を通読していただくことで臨床診断に有用な画像がみえてくると思う。また、臨床編の画像は各症例のポイントとなる画像に絞ることなく、できるだけ脳全体の水平断画像と統計画像を載せた。そこからわれわれが気づいていない点を読者の皆さまが見い出し、それを診断に活かしていただけたらたいへん嬉しく思います。
川崎 敬一
19世紀後半に40代前半であったわが国の平均寿命は、医学や衛生環境の飛躍的な向上により、わずか130年あまりでこれまで経験したことのない高齢化を迎えている。また、同時に少子化も急速に進んでいることから、高齢者になっても健康であること、すなわち健康長寿が社会的に重要視されるようになった。
脳卒中や虚血性心疾患などの血管系イベントの抑制には、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病のコントロールが重要であることがエビデンスをもって示され、その結果、多くの有効な薬剤が上市されてきた。また、癌においては検診率の増加に示されるように早期発見・早期治療の重要性が定着し、数十年前まで対症療法にとどまっていた難治性癌においても、より低侵襲でより良好な予後が期待できる新規治療が開発されている。
このような恩恵に恵まれた反面、われわれが現在、直面し避けられない社会的課題が、本書で取り扱う「認知症」や「パーキンソン症候群」である。2013年、日本神経治療学会は専門医を対象にアンケート調査を行ったが、unmet medical needsのきわめて高い疾患、ないしは新規治療の開発が急務である疾患として認知症やパーキンソン症候群を構成する背景疾患がいくつも指摘された。すなわち、この両者の克服には、たいへん高いハードルが存在している状況にあると理解できる。
さて、認知症とパーキンソン症候群についての現状をまず整理するが、これらのmajorityは脳変性疾患であること、そして臨床症状が出現するまでに中枢神経系内では各疾病に対応した領域においてほぼ確実に大多数の神経細胞に変性や脱落を生じていること、その変性過程を病理学的初期の段階で検出することは一般病院ではきわめて困難であること、こうした変性過程を抑制したり改善したりできる治療法がないこと、などである。しかし、iPS細胞研究をはじめとする国内外の先端基礎研究が進んでいるのも事実であるし、近年の神経科学の発展を勘案すると認知症やパーキンソン症候群の克服までは到達できないにせよ、その進行を遅らせ、上手に疾病と付き合いながら生涯をまっとうできる日はそう遠くないと確信している。
本書は脳初学者から専門医までを対象とした実践書である。前半では解剖学的な用語や脳のアトラスにはじまり、MRI VSRAD とSPM/DARTEL、脳血流SPECT 3D-SSP/two-tail view、ドパミントランスポータSPECT DaT View/DaTQUANTなど、最新の統計解析技術までがよくわかるように解説した。また、後半の臨床編では、主訴や病歴、神経所見などを記した症例を日常的に遭遇する疾患別に呈示しながら画像所見について概説し、columnには記憶にとどめておきたい内容を簡潔に付記した。
Molecular imagingを包含した脳核医学的手法は、今後ますますin vivo検査として発展し、発症後の鑑別診断にとどまらず、近未来的には発症前診断や治療効果判定に大きな役割を果たしていくと思われる。本書を手にした皆さまの日常臨床現場において、脳画像を正しく活用できるよう役立てていただければ望外の喜びである。
鈴木 正彦
●研究者の立場から
長い間、医療機の開発に携わり、システムが大きくなると関係者が増大してチーム運営が難しくなることを経験した。そこで、人間の全体最適化を司っている脳に興味を覚えた。視覚に訴える画像の世界からのアプローチを考えたが、専門外の脳構造、脳機能を理解することは容易でなかった。今回、本書において画像解析関連の執筆の機会を得て、これまでに遭遇した自分自身の疑問に答える形にしようと思った。そうすることで、脳画像、とくに脳機能画像に触れる機会が少なかった方の疑問が解け、画像に親しんでいただき、画像ならではの情報を実際の診療に役立てていただきたいと思った。以下に主な疑問点を記す。
・ベースとなる脳のアトラスがわからない。
・症例画像と比べるために正常画像をみたい。
・機能画像はMRIに比べて解像度が粗く部位を特定しづらい。
・典型的疾患パターンといわれるが、それがわからない。
・3D-SSP統計画像の小脳基準画像なのに小脳血流に増減がみられる。
・新規に実施可能となったDAT SPECTとは?
なお、本書では物語のように全体を通して読んでいただける構成を目指した。全体を通読していただくことで臨床診断に有用な画像がみえてくると思う。また、臨床編の画像は各症例のポイントとなる画像に絞ることなく、できるだけ脳全体の水平断画像と統計画像を載せた。そこからわれわれが気づいていない点を読者の皆さまが見い出し、それを診断に活かしていただけたらたいへん嬉しく思います。
川崎 敬一