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HEATAPP!(ヒートアップ!) たった5日で臨床の質問力が飛躍的に向上する、すごいレクチャー
Dr.岩田の名ライブ講義がパワーアップして帰ってきた!
【書評1】"全医学生、そして医学教育に関わる(つまり全ての医療従事者)必読のぱねえ一冊"
評者:忽那 賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター 国際感染症対策室医長)
岩田先生の本の書評を書くときが来るとは……私ももう「上がり」と言っても良いのではないだろうか。私が医師になった2004年から、私の医師生活は岩田先生の本とともにあったと言っても過言ではない。『抗菌薬の考え方、使い方』『感染症外来の事件簿』などの感染症医的マストな作品だけでなく、『感染症は実在しない』とか『ケニアのスラムで高血圧を治さない』などの岩田節の効きまくった本も、「えっ、実在しないの?」とか、「治療せんのかい!」とか心のなかでツッコミを入れつつ読んできた私である。そんな岩ラーの私が岩田先生の書籍の書評を書くというのは「上がる」ということに他ならないのである。上がって果たしてどこに行くのかは分からないのである。
前作の『神戸大学感染症内科版TBL 問題解決型ライブ講義 集中!5日間』(通称サナダムシTBL)は、TBLをベースにした岩田先生と神戸大学医学部の学生さんとのやり取りを収録した作品であり、臨床推論の考え方を基本から学ぶ上で非常に参考になる内容であった。岩ラー的には、上位3位くらいに入る作品である。そして今作『HEATAPP!』は、前作の内容をさらに洗練させた内容となっている。
今作は、医学生の『質問力を上げる』ことを目標に5日間の講義が行われている。覚えることは得意だが、質問することは苦手というのが今の医学生の特徴だということで、患者さんにどのような質問をすれば診断を進めていくことができるのか、ということが講義の中心にあり、症例ベースで話が進んでいる。
前作もそうであったが、今作も「いかにして医学を学ぶのか」について岩田先生から医学生に多くの時間を割いて話されている。現代の医学の知識の総量は約2ヶ月で倍になるのだから、知識は覚えるよりも「どのように必要な情報を拾い上げるのか」を学ぶことの方が重要である、といったことや、試験前に徹夜して覚えたことは定着しないから日頃から長期的に勉強した方が長い目でみると時間の節約になる、とか医学生がこれから医学を学ぶ上で一生の財産になるであろう岩田先生のパールが散りばめられているのである。
そして、病棟回診の実況であった『テーブル回診LIVE@神戸大学感染症内科』では、初期研修医に対する「プロフェッショナルとは何か」という同じ医療のプロフェッショナルとしての厳しい一面も垣間見られたりもして、一読者として「ああ……この研修医の先生大変そうだなあ……」などと初期研修医の気持ちになり心窩部痛が起こる場面もあったが、この『HEATAPP!』では学生への愛がほとばしっており、安心して読める一冊なのである。
ぶっちゃけ私が医学生の頃なんて、「医学をどう学ぶのか」なんて誰も教えてくれなかったし、それどころか感染症についても学んだ記憶すらない。本書を読んで神戸大学の医学生は羨ましいなあと心から思うと同時に、私も大学で教育に関わりたいという思いが強くなった。全ての医学生、そして医学教育に関わる(つまり全ての)医療従事者必読のぱねえ一冊である。
<J-IDEO Vol.2 No.4、2018年7月号、中外医学社、p621より転載>
【書評2】研修医のいる病院に勤務するすべての医師が読むべき本
評者:國松 淳和(南多摩病院 総合内科)
まず、本書を読む前の評者の気持ちを吐露しよう。1つは、私は大学の教員の経験がなく学生に臨床を教えたことがないため、それを岩田先生がどのように実践されているのか知ることができるという“期待と喜び”である。他大学・他機関の講義がそのまま聴けるというのは、本当においしい。2つ目は、評者自身が「グループ学習」が非常に苦手であり、正直に言えば“いぶかしい気持ち”である。「さあ、隣の人と考えてみましょう!」という、声高でキラキラした笑顔のリーダーの呼びかけが本当に嫌いだからだ。最後に、4月の中頃に手にした本書、正直言うと多忙であり「(書評のためとはいえ)せっかく読むのだから、役に立つといいな。」という“浅ましい気持ち”。以上、3つの気持ちである。
そして読了後、これらの3つの気持ちはすべて裏切られた。書評の途中で恐縮だが、こういう書籍こそ読むべきである。何の裏切りもない本や、期待通りの本などは、読む必要がない。
まず本書は、「教員-学生」という関係性を通して、「指導医-研修医」の関係性にも通ずる重要点を提示している。冒頭「感染症内科の岩田です」と登場し、感染症の集中講義をすると宣言されている。しかし実際には、一般的な教育論、医師としての心構え、臨床内科学(一般内科)、勉強法、統計学、論文の読み方、プロフェッショナリズム、アカデミズム、など多岐にわたっている。卒後の研修医、専修医、指導医にとっても、教養的に入ってくるので退屈しない。
個人的には、「時間情報は検査できない(本書p.41)」という、さも自分が考えついたように使おうと心に決めたキラーフレーズは目から鱗だった。さらに、バクタ配合剤(スルファメトキサゾール トリメトプリム)のアレルギーの機序はまだよくわかっていないだとか、ratioとrateの違い、IGRA(インターフェロン-γ遊離試験)の(素人でも)非常にわかりやすい解説、なども勉強になった。「どんな分野の本か」と得心せずに読み始めても、最後には勉強になる。すごい仕かけである。
「岩田流」のグループ学習のもっていき方は、書籍タイトルにもなっていることもあって本書の主題の1つだが、あえてここで触れないでおく。これこそ、著者が読者に感じ取って実践して欲しいと考えているはずだからだ。私のような、グループ学習に苦手意識(というか嫌悪感)をもつ者にも、そうした考えが浅はかで経験不足であることを序盤から突きつけられる。ファシリテーターを要しないという手法にも目から鱗だった。グループ学習に斜に構えた考えの人こそ、ぜひ本書を読んでみるべきである。
読んでいる途中、飽きそう(?)になった頃合いに、なんと講義は突如英語で行われ始める! これは(実際の学生同様)、まさに文字どおり目が覚める。英語の重要性を学生に教える最良の手段だと思った。
あらゆる意味で、本書は「自分には読む必要がない」という考えを裏切ってくれる。研修医のいる病院に勤務する医師ならば、全員が読んでおいた方がいい本であると思った。
<総合診療 Vol.28 No.7、2018年7月号、医学書院、p1007より転載>
評者:忽那 賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター 国際感染症対策室医長)
岩田先生の本の書評を書くときが来るとは……私ももう「上がり」と言っても良いのではないだろうか。私が医師になった2004年から、私の医師生活は岩田先生の本とともにあったと言っても過言ではない。『抗菌薬の考え方、使い方』『感染症外来の事件簿』などの感染症医的マストな作品だけでなく、『感染症は実在しない』とか『ケニアのスラムで高血圧を治さない』などの岩田節の効きまくった本も、「えっ、実在しないの?」とか、「治療せんのかい!」とか心のなかでツッコミを入れつつ読んできた私である。そんな岩ラーの私が岩田先生の書籍の書評を書くというのは「上がる」ということに他ならないのである。上がって果たしてどこに行くのかは分からないのである。
前作の『神戸大学感染症内科版TBL 問題解決型ライブ講義 集中!5日間』(通称サナダムシTBL)は、TBLをベースにした岩田先生と神戸大学医学部の学生さんとのやり取りを収録した作品であり、臨床推論の考え方を基本から学ぶ上で非常に参考になる内容であった。岩ラー的には、上位3位くらいに入る作品である。そして今作『HEATAPP!』は、前作の内容をさらに洗練させた内容となっている。
今作は、医学生の『質問力を上げる』ことを目標に5日間の講義が行われている。覚えることは得意だが、質問することは苦手というのが今の医学生の特徴だということで、患者さんにどのような質問をすれば診断を進めていくことができるのか、ということが講義の中心にあり、症例ベースで話が進んでいる。
前作もそうであったが、今作も「いかにして医学を学ぶのか」について岩田先生から医学生に多くの時間を割いて話されている。現代の医学の知識の総量は約2ヶ月で倍になるのだから、知識は覚えるよりも「どのように必要な情報を拾い上げるのか」を学ぶことの方が重要である、といったことや、試験前に徹夜して覚えたことは定着しないから日頃から長期的に勉強した方が長い目でみると時間の節約になる、とか医学生がこれから医学を学ぶ上で一生の財産になるであろう岩田先生のパールが散りばめられているのである。
そして、病棟回診の実況であった『テーブル回診LIVE@神戸大学感染症内科』では、初期研修医に対する「プロフェッショナルとは何か」という同じ医療のプロフェッショナルとしての厳しい一面も垣間見られたりもして、一読者として「ああ……この研修医の先生大変そうだなあ……」などと初期研修医の気持ちになり心窩部痛が起こる場面もあったが、この『HEATAPP!』では学生への愛がほとばしっており、安心して読める一冊なのである。
ぶっちゃけ私が医学生の頃なんて、「医学をどう学ぶのか」なんて誰も教えてくれなかったし、それどころか感染症についても学んだ記憶すらない。本書を読んで神戸大学の医学生は羨ましいなあと心から思うと同時に、私も大学で教育に関わりたいという思いが強くなった。全ての医学生、そして医学教育に関わる(つまり全ての)医療従事者必読のぱねえ一冊である。
<J-IDEO Vol.2 No.4、2018年7月号、中外医学社、p621より転載>
【書評2】研修医のいる病院に勤務するすべての医師が読むべき本
評者:國松 淳和(南多摩病院 総合内科)
まず、本書を読む前の評者の気持ちを吐露しよう。1つは、私は大学の教員の経験がなく学生に臨床を教えたことがないため、それを岩田先生がどのように実践されているのか知ることができるという“期待と喜び”である。他大学・他機関の講義がそのまま聴けるというのは、本当においしい。2つ目は、評者自身が「グループ学習」が非常に苦手であり、正直に言えば“いぶかしい気持ち”である。「さあ、隣の人と考えてみましょう!」という、声高でキラキラした笑顔のリーダーの呼びかけが本当に嫌いだからだ。最後に、4月の中頃に手にした本書、正直言うと多忙であり「(書評のためとはいえ)せっかく読むのだから、役に立つといいな。」という“浅ましい気持ち”。以上、3つの気持ちである。
そして読了後、これらの3つの気持ちはすべて裏切られた。書評の途中で恐縮だが、こういう書籍こそ読むべきである。何の裏切りもない本や、期待通りの本などは、読む必要がない。
まず本書は、「教員-学生」という関係性を通して、「指導医-研修医」の関係性にも通ずる重要点を提示している。冒頭「感染症内科の岩田です」と登場し、感染症の集中講義をすると宣言されている。しかし実際には、一般的な教育論、医師としての心構え、臨床内科学(一般内科)、勉強法、統計学、論文の読み方、プロフェッショナリズム、アカデミズム、など多岐にわたっている。卒後の研修医、専修医、指導医にとっても、教養的に入ってくるので退屈しない。
個人的には、「時間情報は検査できない(本書p.41)」という、さも自分が考えついたように使おうと心に決めたキラーフレーズは目から鱗だった。さらに、バクタ配合剤(スルファメトキサゾール トリメトプリム)のアレルギーの機序はまだよくわかっていないだとか、ratioとrateの違い、IGRA(インターフェロン-γ遊離試験)の(素人でも)非常にわかりやすい解説、なども勉強になった。「どんな分野の本か」と得心せずに読み始めても、最後には勉強になる。すごい仕かけである。
「岩田流」のグループ学習のもっていき方は、書籍タイトルにもなっていることもあって本書の主題の1つだが、あえてここで触れないでおく。これこそ、著者が読者に感じ取って実践して欲しいと考えているはずだからだ。私のような、グループ学習に苦手意識(というか嫌悪感)をもつ者にも、そうした考えが浅はかで経験不足であることを序盤から突きつけられる。ファシリテーターを要しないという手法にも目から鱗だった。グループ学習に斜に構えた考えの人こそ、ぜひ本書を読んでみるべきである。
読んでいる途中、飽きそう(?)になった頃合いに、なんと講義は突如英語で行われ始める! これは(実際の学生同様)、まさに文字どおり目が覚める。英語の重要性を学生に教える最良の手段だと思った。
あらゆる意味で、本書は「自分には読む必要がない」という考えを裏切ってくれる。研修医のいる病院に勤務する医師ならば、全員が読んでおいた方がいい本であると思った。
<総合診療 Vol.28 No.7、2018年7月号、医学書院、p1007より転載>