コロナのせいにしてみよう。シャムズの話

コロナ時代を生き抜くために、シャムズを知って「雑談」しよう!

著 者 國松 淳和
定 価 1,430円
(1,300円+税)
発行日 2020/06/20
ISBN 978-4-307-10203-2

四六判・168頁

在庫状況 あり

新型コロナウイルス感染症が流行してからというもの、コロナに感染してもないのに「ちょっと変になってしまった」「何だか体調が悪くなってしまった」という方はいませんか。
実はこのコロナな世の中になって、本当に大勢の人が具合を悪くしているのです。
内科医の國松淳和氏はそういう人たちが置かれている状態のことを、シャムズ(CIAMS:COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)と名付けました。シャムズは病気ではありません。病院に行く必要もありません。シャムズのことを理解して、きちんと対策をすれば、具合はよくなるはずです。あなた・あの人の具合の悪さは、 みんなコロナのせいです。頭や精神がおかしくなったように見えても、別に精神疾患になってしまったわけではなく、みんなコロナのせいなのです。
シャムズになった人、なりそうな人への対応や予防には、身近にいる周りの人の助けが必要です。
本書はコロナとともにある社会で生きるための優しい処方箋です。


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この本を手に取った人へ

第1章 コロナで変わってしまった人たち 

第2章 シャムズの詳しい説明をします 

第3章 いつもと違うこと(シャムズ)を見抜けるのはあなた 

第4章 あの人に声をかけるのはあなた 

第5章 で、何をすればいいか 

第6章 不便な暮らしをどうするか〜コロナでも変わらないすごい人から学ぶ〜 

第7章 コロナのせいにしてみよう 

おわりに 

付章 医療従事者のみなさんへ
この本を手に取った人へ

 みなさんこんにちは。私は内科医の國松淳和と申します。
 普段は病院に勤めて、患者さんの診療をしています。内科の範囲で何でも診ているつもりですが、発熱や原因のわからない症状の診断・治療を頼まれることが多い医者です。

 新型コロナウイルスの感染拡大とその脅威によって、私たちの社会と生活は、一変しました。その一方で、私たちそのもの、つまり生き物としての「からだ」の質はそこまで変わってしまったようには思えません。
 実際には、みなさんのからだはいつも通りで、早く世の中が元に戻って欲しいとただ願っているだけなんだと思います。
 私たちのからだはパッと見は変わっていないのに、社会は変わってしまった。ただそれだけなのに、ものすごく体調が悪くなってしまった人たちが大勢います。人間は、こういう社会や環境の変化によって、こうもすぐに落ち着かなくなり、具合が悪くなってしまうものなのでしょうか?
 はい、私はそういうものだと思っています。人間の体調は、社会や環境の変化によって、大きく影響を受けてしまうのです。

 この本では、

【コロナが流行してからというもの、コロナに感染してもないのに「いつもと違ってちょっと変になってしまった」「いろいろと体調が悪くなってしまった」という人たちに、どんなことが起きているのか。】

 をお話ししたいと思います。それを通して、この「コロナ禍」においてみなさんがいったいどんなことに気をつけていけばいいか、どんなことをすればいいのかについて提案したいと思います。

 ただ、私は臨床医(患者さんに直接接して診察する医者)です。患者さんという人間が持っている病気や症状を診る専門家です。社会や経済や公衆衛生を扱う専門家ではありません。
 あくまで、体調が悪くなってしまった人にどんなことが起きていて、どんなことに気をつければいいか、どうしたらいいのか、を述べるだけです。

 実はこの本は、2020年5月の執筆時点で、新型コロナウイルス感染症診療の陣頭指揮を執り続けている国立国際医療研究センター病院、感染症医の忽那賢志先生に執筆を提案されて書きはじめました。
 同世代で、同じ「発熱」を日頃扱う臨床医として、盟友という以上のつながりを感じている相手でもあります。忽那先生はおそらく、私の感覚では、今回の新型コロナウイルス感染症の流行にあって、一番ウイルス自体に接している医者の一人であると認識しています。
 その彼が、私と同じような問題意識を持っていたことを教えてくれました。私の考えを本にすれば、患者さんのみならず、医療従事者も助かるのではないかということでした。
 確かに、私もいわゆる「防護服」と「マスクとフェイスシールド」を厳重にまとって診療することがたびたびありましたが、あれをやりながら患者さんの心配や不安に対して、時間をかけて説明してあげられないのです。
 きついマスク、キャップ、手袋を二重にしたままの状態ですので、顔や口にかなりの圧迫感があり、少ししゃべるのにも結構難儀します。ひと続きの会話ですら精一杯で、つらいです。
 とはいえ患者さんのほうこそ、一人一人ご自身の症状につらさを感じているし、見えないウイルスと未来に対して不安がいっぱいですよね。

 そこで私が「コロナに関する不安とその対処法」を本にして、一般の人に提案すれば、何より現場で防護服を着て対応される臨床医の先生方が、本来患者さんに時間をかけてすべき説明にとって替えられるかもしれない。と、そう思ったのです。これはまさしく私の本領だなと思います。忽那先生、さすが私のことをよくわかっていらっしゃる。

 実は私はこれまでもたくさんの本を書いてきましたが、いずれも医学書でした。つまり、主に医師という専門家が購入して読んで、自身の診療などに役立てるための本を書いてきました。本来は、患者さんや一般の人たちにではなく、お医者さんのために本を書いてきたのです。
 コロナウイルスに感染しているわけでもないのに具合が悪い・不安である、といった人たちに対する説明全般についての本を、臨床医のみなさんのために書けばいい。そう思ったのが、この本を書く一番の動機でした。

 前置きが長くなりました。この本の結論を雑に先に言ってしまえば、こうなります。あなた・あの人の具合の悪さは、みんなコロナのせいです。頭や精神がおかしくなったように見えても、別に精神疾患になってしまったわけではなく、みんなコロナのせいです。
 しかし、コロナで変わった社会をすぐに変えることはできません。ですから社会やあなた自身が「元どおり」になろうと目指す(=もがく)のではなく、新しい安定を自分自身でつくっていこうよ。と、私は言いたいのです。
 本書はなるべく、問題提起だけでおわらないように気をつけました。そして「みんなで頑張ろう」とか、そういう漠然とした結論も避けています。
 この本を読むことで、少しでもみなさんが自身の行動を自分で変えることによって、体調がよくなり、新たな安定を得ようとできたらうれしいです。

2020年5月吉日

医療法人社団 永生会 南多摩病院 総合内科・膠原病内科
國松 淳和
私たちがコロナに適応していく過程で生まれた「CIAMS」という概念

国立国際医療研究センター 国際感染症センター
忽那 賢志

 新型コロナが発生してから私たちの生活は大きく変わり、そしてもう後には戻れなくなりました。この「コロナ禍」と呼ばれる社会状況の中で、私たちみんながストレスを抱えながら生きています。
 そうした中で、ある頃から「あれ、この人こんなこと言う人だったかな」とか「急に会議で的外れな発言するようになったな」と思うような人たちが周りに増えてきました。その原因の一端は「コロナへの見えない不安」であることは、私にもわかっていました。
 國松医師はそれをCIAMS(COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)と名付けました。私はこの概念を聞いていろんなことが腑に落ちました。そうか、みんなシャムズだったのか、と。
 そしてこの本を通読しシャムズは決して悪いことではないことを理解しました。おそらくシャムズは人間の「コロナというストレス(この本で言う精神的加重)」に対して生じた、ある意味では生理的な反応なのでしょう。

 私は『Yahoo!』でコロナの記事を日々書いているのですが、特定のキーワードに過敏に反応する方々がいます。それはPCRであったり、アビガンであったり、BCGであったりです。
 彼らは非常に攻撃的に、執拗に、粘着的に持論をSNSなどで披露し(多くは理論的に破綻していますが)、私やその他の専門家を徹底的に叩こうとします。なぜこのような人たちがいるのか私にはわかりませんでしたが、シャムズという概念を理解し、彼らはコロナが不安であるがゆえにあのような振る舞いになるのだとわかりました。
 あれは「コロナが周りにいないか不安だからPCRをして正体を現せ!」「コロナで死ぬのが怖いからアビガンをよこせ!」「BCGがコロナに効くという仮説があるから俺は助かるに違いない!」という、コロナへの不安が顕在化したシャムズの一種の表現型なのでしょう。そう考えると、私に攻撃する彼らさえ愛しく思えてきました。

 おそらくコロナが怖くない人はいないと思います。本書は「コロナが不安な自分」から一歩引いて俯瞰的に自分を見ることができるようになる、ある意味啓発本のような役割を果たすかもしれません。そして、自身を俯瞰的に見られるようになったら、今度は周りにいるシャムズの人に手を差し伸べてください。
本書はコロナとともにある社会を生きるためのヒントが散りばめられた、コロナ時代必携の書です。