『標準東洋医学』で展開される独自の臓腑概念や生理観による処方解釈に基づく処方解説書。医療用製剤、匙倶楽部製品を主とする一般用も含めた漢方エキス製剤全処方を取りあげています。構成の特徴や作用が共通する類似処方をまとめて各章を構成し、そこに共通する東洋医学の概念や生理機能の理解を基に、実践と基礎が融合した漢方診療の習得を目指します。 実践から基礎へと遡る流れを「Z to A」として、綿密な症例分析から始め、生理機能と構成方意の理解に基づいた、従来とは異なる切り口から漢方診療を究めるための1冊です。
今、これをお読みの方は、経験の有無にかかわらず、「漢方薬を本格的に使いたい」というお気持ちから本書を手にされたに違いありません。 漢方治療の最大の魅力は「個の医療」です。成分や分量を調整する「匙加減」で、個人の特徴や病態に合わせた独自の治療が提供できます。ただ、そのためには原則、生薬を調剤する煎じ薬が必要となります。 一方で、現在、漢方治療と言えば、ほとんどが漢方エキス製剤を用いた治療です。薬としての成分品質の安定や均一さ、何よりも服用の簡便さから当然のことでしょうが、製剤化することで構成や分量が固定化されて匙加減ができず、さらに健康保険や薬事法で適用する効能効果が規定され、あたかも病名で薬が決まる現代薬の一つのように扱われています。 しかし、それを嘆くより、その処方の本来の意味を理解して、背景にある東洋医学の生理観、病理観、治療概念をそこに投入することで、製薬された制約あるエキス剤でも本格的な漢方治療ができる「エキス漢方」の世界に、本書で皆様をお誘いしようともくろんでいます。 さあ、Z to A のアルファベット26文字をもじった症例と共に、実践から基礎への道をたどってエキス漢方を究める旅に出かけましょう。