オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん

イケてない!効かない!意味がない!ダメ処方せんを痛快レビュー

著 者 國松 淳和 / オニマツ・ザ・ショーグン
定 価 3,300円
(3,000円+税)
発行日 2021/04/14
ISBN 978-4-307-10207-0

A5判・224頁

在庫状況 あり

あのDr.國松淳和がついに「コモン」を「治療」を語る! 前代未聞! 同一人物による共著! ? 頭痛やめまい、腹痛など7つの症状・テーマ別に國松とオニマツのコンビがガチレビュー。オニマツパートでは具体的なカルテ・処方せんを例に出して超毒舌の痛快ダメ出し! 國松パートでは薬の選び方・使い方を丁寧に解説。症状ごとに処方の考えかたを楽しく習得できる。片頭痛にトリプタン? 咳に気管支拡張薬? そんな「常識」は打ち破れ! こんな医学書、ほかにない!神出鬼没のオニマツが本当に"効く"一流臨床医の処方せん、教えます。

〜あらすじ〜
臨床医 國松淳和にはある秘密があります。
実は…國松は1年のうち1週間だけ、夜更けに「鬼」になるのです!
その名もオニマツ・ザ・ショーグン。
オニマツはダメな処方せんが大好物。
ダメ処方せんを見つけてはたちどころに口撃するのです。
「ダメな処方せん、いねが〜〜〜!!」
これはそんなオニマツと國松の1週間のお話し。
1日目 頭痛の処方せんをぶった斬り〜コモンなめんな!〜
 カルテ1 オハラ ナオキ 主訴:頭痛
 カルテ2 ニイガキ エリ 主訴:頭痛
 カルテ3 イトウ ケイスケ 主訴:頭痛
 國松先生●オニマツ降臨1日目・頭痛の解説
  ■はじめに
  ◆頭痛診療「梅」
  ◆頭痛診療「竹」
   1.頓服がうまくいっていない/2.薬剤性頭痛など他の要素がある/3.NSAIDSだけではうまくいかない本当の片頭痛
  ◆オニマツさんへ
  ◆頭痛診療「松」
   1.片頭痛によく似たもの(片頭痛ミミックス)/2.トリプタン、“それでも”使い分けたい/3.重大な鑑別疾患/4.鎮痛薬を出すからには:固定薬疹に注意

2日目 めまいの処方せんをぶった斬り〜ダメ処方せんは、ダメ診療〜
 カルテ4 マルヤマ カズヨ 主訴:めまい
 カルテ5 アイダ ヒトシ 主訴:めまい
 カルテ6 タマキ キミコ 主訴:回転性めまい
 國松先生●オニマツ降臨2日目・めまいの解説
  ■めまい診療は問診が命!
  ◆よくある回転性めまい「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」
   1.問診/2.似た疾患・見逃したくない疾患/3.BPPVの薬物治療
  ◆ちょっと難しい回転性めまい「前庭神経炎」
   1.問診/2.中枢性か否か?/3.前庭神経炎の薬物治療
  ◆オニマツさんへ
  ◆まとめ

3日目 咳の処方せんをぶった斬り〜どこがスマートやねん!〜
 カルテ7 サイトウ ヨシオ 主訴:咳、痰
 カルテ8 ウエダ ナルミ 主訴:2カ月近く続く咳
 カルテ9 イノウエ フミカ 主訴:1カ月続く咳
 國松先生●オニマツ降臨3日目・咳の解説
  ■日常な咳診療:まずは全体から
  ◆まずは俯瞰
   1.溶連菌性咽頭炎/2.細菌性肺炎/3.ウイルスかぜ/4.その他
  ◆そして「咳」の診療へ:気道粘膜の過敏という病態をとらえる
  ◆咳の薬物治療
  ◆いつでも大事なこと
   1.身体診察をしているか?/2.鑑別診断の重要性の観点から/3.治らないとき:診断以外の観点から
  ◆オニマツさんへ
  ◆まとめ

4日目 消化器症状の処方せんをぶった斬り〜腹痛、嘔吐・嘔気、下痢、便秘とか全部まとめて解決!〜
 カルテ10 トモダ ミユキ 主訴:下痢、嘔吐、発熱、腹痛
 カルテ11 シバヤマ ショウコ 主訴:嘔気
 カルテ12 ウチカワ アキエ 主訴:腹痛
 國松先生●オニマツ降臨4日目・消化器症状の解説
  ■消化器症状はコモン
  ◆急性腸炎のとらえ方
  ◆ウイルス腸炎
  ◆細菌性腸炎
   ●潜伏期間が短く臨床的に拾われやすい傾向にあるもの
   1.黄色ブドウ球菌/2.腸炎ビブリオ/3.サルモネラ
   ●潜伏期間が比較的長く散発的・市中発症のようにみえるもの
   1.カンピロバクター/2.腸管出血性大腸菌
  ◆オニマツさんへ その1
  ◆上部消化管症状のコモン
   1.嘔吐/2.胃痛/3.嘔気
  ◆下部消化管症状のコモン
   1.下痢/2.便秘
  ◆オニマツさんへ その2
  ◆まとめ

5日目 疼痛の処方せんをぶった斬り〜痛みの処方せんは、イタくなりがち〜
 カルテ13 モリタ コウジ 主訴:背部の皮疹と疼痛
 カルテ14 オイカワ タカヒロ 主訴:右足母趾付け根の腫れと痛み
 カルテ15 ミズタ ノア 主訴:身体中が痛い
 國松先生●オニマツ降臨5日目・疼痛の解説
  ■疼痛やしびれはコモン、「痛み」は症候界のキング
  ◆やっぱりこの話:侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛
  ◆侵害受容性疼痛
  ◆神経障害性疼痛
  ◆薬剤別の使い方
   1.NSAID/2.プレガバリン/3.ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液/4.デュロキセチン/5.トラマドール/6.アミトリプチリン
  ◆しびれの話
  ◆オニマツさんへ
  ◆まとめ

6日目 不眠の処方せんをぶった斬り〜もう正しいだけの時代は終わった〜
 カルテ16 イナモリ ミツオ 主訴:不眠
 カルテ17 タニウチ サヤカ 主訴:不眠
 カルテ18 エトウ タカコ 主訴:眠れない
 國松先生●オニマツ降臨6日目・不眠の解説
  ■不眠に対する処方をマスターしよう!
  ◆不眠診療のキホン
  ◆不眠診療「梅」
   1.漢方薬/2.ラメルテオン/3.ゾルピデム/4.トラゾドン/5.スボレキサント
  ◆不眠診療「竹」
   1.低酸素と身体不快を見抜く/2.ワンランク上の「竹」薬剤選択
  ◆不眠診療「松」
   1.とはいえ「ベンゾ」:その使いわけ/2.身体不定愁訴を伴う不眠/3.薬剤性(アカシジアも含めて)
  ◆オニマツさんへ

7日目 ポリファーマシーな処方せんをぶった斬り〜医師と薬剤師、お互い関われよっ〜
 カルテ19 イイダ ユリエ 主訴:ふらつき
 カルテ20 リキイシ チヅコ 主訴:浮腫、脱力
 カルテ21 ウサミ ユタカ 主訴:咳、動悸
 國松先生●オニマツ降臨7日目・ポリファーマシーの解説
  ■そろそろ「ポリファーマシー」について真剣に考えてみよう
  ◆ポリファーマシーに関する國松の所感
  ◆医師と薬剤師の連携
  ◆オニマツさんへ
  ◆最終日のさいごに:やっぱり「コモンなめんな」

付録:鬼手仏心の処方せん〜まずはこの一手〜
ときは令和―。

南の多摩に國松淳和といふ医者がおりました。
國松は日々困った患者に施しをいたすことに勤しむ臨床の御仁でございます。
毎日患者と話し、診て、薬を処方して暮らしております。

患者は「また来たい」とみな口をそろえて申すほどに穏やかにてつつましやかな内科医であります。
近頃ではなにやら「こんさるてーしょん」だとか「せかんどおぴにおん」といふ勤めもあり、大層多忙な日々を送っておりました。

そんな國松淳和には秘密がございます。

実は……國松の“なか”には鬼が棲まふのであります。
「つら胆」とかいふものがもうこの上なきほどに國松の中にいっぱいにたまると一年にいっぺんだけ。
一年のうち一週間だけ。
一日のうち夜更けにだけ。
そう、國松のなかに棲まふ鬼は目を覚ますのです。

鬼の名をオニマツ・ザ・ショーグンと申します。

オニマツはとにかくダメな処方せんが好きで好きでたまりません。
夜な夜な病院内のあらゆるデスクを漁っては、ダメな処方せんを探してバッサバサと斬りまくるのです。
夜中にかような恐ろしい姿になっていることとはつゆ知らず、クニマツは今日も笑顔で診療をしております。
これはそんなクニマツとオニマツのとある一週間のお話しでございます。
評者:児島悠史(薬剤師)

 「これ市販薬より効かねぇんじゃねえか?」「なんで胃薬入れちゃった?」「気管支広げたくらいで咳が止まるか!」……オニマツがダメ処方せんの内容や、それが出来上がっていく考え方を容赦なくぶった斬っていく本書、ちょっと快感を覚えてしまうのは私だけでしょうか。
 患者さんのお話を聞けば聞くほど、どうも処方が理に適っていない。けれど、疑義照会をしても「そのままで」の一言だけで一蹴されてしまった。薬剤師なら誰でもそんな経験があるはずです。その時に心の中に封じ込めたツッコミを、悔しさを、鬱憤を、オニマツが見事に代弁してくれます。超スッキリします。
 でも、スッキリだけで終わってはいけません。なぜその疑義照会は通らなかったのか、それはきっと“イケてない理由”をオニマツほどきちんと言語化できていなかったからです。赤ページのオニマツでスッキリした後は、白ページのやさしい國松先生からしっかり病態と薬を学びましょう。

<薬局 Vol.72 No.7、2021年6月号、南山堂、p18より転載>



評者:青島周一(医療法人社団 徳仁会 中野病院)

走鬼灯(そうにとう)に揺らめく臨床の世界

 本書を読み終え、僕はしばらく「正しいこと」と、「正しくないこと」の境界線を考えていた。むろん、そんな境界線を定義づけることが如何に不毛な作業なのか、それなりに理解しているつもりだ。正しさの境界線など、人の認識で明確に定義づけられるような代物ではない。図らずも人類の歴史がそれを証明してしまっている。だがしかし、それにも関わらず、オニマツ・ザ・ショーグンの背中は大きく思えた。ダメ処方に見え隠れする人の意図、その奥深さ(もしくは浅さ)を、端的な言葉で切り捨ててゆく姿は美しくも儚い。オニマツが見つめているのは、ダメ処方せんと言うよりはむしろ、人間そのものである。
 ポリファーマシーという言葉が流行りだした時、僕らは「潜在的不適切」という新しい概念を盾に、いわゆるダメ処方に関心を向けた。しかし、そこで生じたことのいくつかは、結局のところ薬を減らすことの正義っぽさを再確認したかっただけではなかろうか。
 ダメ処方とそうでない処方は何が違うのだろうか。本書を手に取り、オニマツのダメ出しに不快を覚えたのなら、その直感を大切にしてほしい。不快に思うところにこそ、しばしば重要な論点がある。逆に痛快や共感を覚えたのなら注意が必要かもしれない。その言葉の背景に目を凝らしてみるべきだ。オニマツがダメ出しと言う仕方で展開する「批判」は、価値観の違いで生じるようなベタな批判ではなく、もっとメタな批判なのだから。

<調剤と情報 Vol.27 No.9、2021年7月号、じほう、p65より転載>