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オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん
イケてない!効かない!意味がない!ダメ処方せんを痛快レビュー
著 者 | 國松 淳和 / オニマツ・ザ・ショーグン |
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定 価 | 3,300円 (3,000円+税) |
発行日 | 2021/04/14 |
ISBN | 978-4-307-10207-0 |
A5判・224頁
在庫状況 | あり |
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評者:児島悠史(薬剤師)
「これ市販薬より効かねぇんじゃねえか?」「なんで胃薬入れちゃった?」「気管支広げたくらいで咳が止まるか!」……オニマツがダメ処方せんの内容や、それが出来上がっていく考え方を容赦なくぶった斬っていく本書、ちょっと快感を覚えてしまうのは私だけでしょうか。
患者さんのお話を聞けば聞くほど、どうも処方が理に適っていない。けれど、疑義照会をしても「そのままで」の一言だけで一蹴されてしまった。薬剤師なら誰でもそんな経験があるはずです。その時に心の中に封じ込めたツッコミを、悔しさを、鬱憤を、オニマツが見事に代弁してくれます。超スッキリします。
でも、スッキリだけで終わってはいけません。なぜその疑義照会は通らなかったのか、それはきっと“イケてない理由”をオニマツほどきちんと言語化できていなかったからです。赤ページのオニマツでスッキリした後は、白ページのやさしい國松先生からしっかり病態と薬を学びましょう。
<薬局 Vol.72 No.7、2021年6月号、南山堂、p18より転載>
評者:青島周一(医療法人社団 徳仁会 中野病院)
走鬼灯(そうにとう)に揺らめく臨床の世界
本書を読み終え、僕はしばらく「正しいこと」と、「正しくないこと」の境界線を考えていた。むろん、そんな境界線を定義づけることが如何に不毛な作業なのか、それなりに理解しているつもりだ。正しさの境界線など、人の認識で明確に定義づけられるような代物ではない。図らずも人類の歴史がそれを証明してしまっている。だがしかし、それにも関わらず、オニマツ・ザ・ショーグンの背中は大きく思えた。ダメ処方に見え隠れする人の意図、その奥深さ(もしくは浅さ)を、端的な言葉で切り捨ててゆく姿は美しくも儚い。オニマツが見つめているのは、ダメ処方せんと言うよりはむしろ、人間そのものである。
ポリファーマシーという言葉が流行りだした時、僕らは「潜在的不適切」という新しい概念を盾に、いわゆるダメ処方に関心を向けた。しかし、そこで生じたことのいくつかは、結局のところ薬を減らすことの正義っぽさを再確認したかっただけではなかろうか。
ダメ処方とそうでない処方は何が違うのだろうか。本書を手に取り、オニマツのダメ出しに不快を覚えたのなら、その直感を大切にしてほしい。不快に思うところにこそ、しばしば重要な論点がある。逆に痛快や共感を覚えたのなら注意が必要かもしれない。その言葉の背景に目を凝らしてみるべきだ。オニマツがダメ出しと言う仕方で展開する「批判」は、価値観の違いで生じるようなベタな批判ではなく、もっとメタな批判なのだから。
<調剤と情報 Vol.27 No.9、2021年7月号、じほう、p65より転載>
「これ市販薬より効かねぇんじゃねえか?」「なんで胃薬入れちゃった?」「気管支広げたくらいで咳が止まるか!」……オニマツがダメ処方せんの内容や、それが出来上がっていく考え方を容赦なくぶった斬っていく本書、ちょっと快感を覚えてしまうのは私だけでしょうか。
患者さんのお話を聞けば聞くほど、どうも処方が理に適っていない。けれど、疑義照会をしても「そのままで」の一言だけで一蹴されてしまった。薬剤師なら誰でもそんな経験があるはずです。その時に心の中に封じ込めたツッコミを、悔しさを、鬱憤を、オニマツが見事に代弁してくれます。超スッキリします。
でも、スッキリだけで終わってはいけません。なぜその疑義照会は通らなかったのか、それはきっと“イケてない理由”をオニマツほどきちんと言語化できていなかったからです。赤ページのオニマツでスッキリした後は、白ページのやさしい國松先生からしっかり病態と薬を学びましょう。
<薬局 Vol.72 No.7、2021年6月号、南山堂、p18より転載>
評者:青島周一(医療法人社団 徳仁会 中野病院)
走鬼灯(そうにとう)に揺らめく臨床の世界
本書を読み終え、僕はしばらく「正しいこと」と、「正しくないこと」の境界線を考えていた。むろん、そんな境界線を定義づけることが如何に不毛な作業なのか、それなりに理解しているつもりだ。正しさの境界線など、人の認識で明確に定義づけられるような代物ではない。図らずも人類の歴史がそれを証明してしまっている。だがしかし、それにも関わらず、オニマツ・ザ・ショーグンの背中は大きく思えた。ダメ処方に見え隠れする人の意図、その奥深さ(もしくは浅さ)を、端的な言葉で切り捨ててゆく姿は美しくも儚い。オニマツが見つめているのは、ダメ処方せんと言うよりはむしろ、人間そのものである。
ポリファーマシーという言葉が流行りだした時、僕らは「潜在的不適切」という新しい概念を盾に、いわゆるダメ処方に関心を向けた。しかし、そこで生じたことのいくつかは、結局のところ薬を減らすことの正義っぽさを再確認したかっただけではなかろうか。
ダメ処方とそうでない処方は何が違うのだろうか。本書を手に取り、オニマツのダメ出しに不快を覚えたのなら、その直感を大切にしてほしい。不快に思うところにこそ、しばしば重要な論点がある。逆に痛快や共感を覚えたのなら注意が必要かもしれない。その言葉の背景に目を凝らしてみるべきだ。オニマツがダメ出しと言う仕方で展開する「批判」は、価値観の違いで生じるようなベタな批判ではなく、もっとメタな批判なのだから。
<調剤と情報 Vol.27 No.9、2021年7月号、じほう、p65より転載>