レジリアンス
現代精神医学の新しいパラダイム
21世紀の精神医学において最も期待される治療学!欧米にはないわが国独自の著作。本邦初!
編 集 |
加藤 敏 / 八木 剛平 |
定 価 |
4,180円 (3,800円+税) |
発行日 |
2009/05/20 |
ISBN |
978-4-307-15064-4 |
A5判・242頁
※222頁付表「The Connor-Davidson Resilience Scale(CD-RISC)」について、原作者のKathryn M. Connor博士、JonathanR.T.Davidson 博士のご了解を得ずに転載したことについてお詫び申し上げます。この表の出典は以下のとおりです。
Connor KM, Davidson JRT: Development of a New Resilience Scale: The Connor-Davidson Resilience Scale(CD-RISC).Depression and Anxiety 18; 76-82, 2003
二十一世紀の精神医学において期待されるのが、明確な予防・治療的視点を打ち出す「レジリアンスモデル」と言える。このモデルのなによりの特徴は、発病の誘因となる出来事、環境、ひいては病気そのものに抗し、跳ね返し、克服する復元力、あるいは回復力を重視・對重し、発病予防、回復過程、リハビリテーションに正面から取り組む観点を持っていることに求められる。
レジリアンスモデルは、心身複合体としての個人に備わる復元力ないし回復力を引き出すよう心がけ、統合的な観点から柔軟な前向きの仕方で治療にとりくむ理論布置を備えている。そこで、精神科臨床の実践をさらに進めるうえで、今日、「脆弱性モデルからレジリアンスモデルへ」、および「ストレスモデルからレジリアンスモデルへ」という形で、精神医学における治療論、回復論を正面から見据える方向でのパラダイムシフトが要請されている。私たちはこのような認識のもとに、本書を企画した。
レジリアンスをめぐる研究、またレジリアンスの観点からの治療の実践をめぐっては、広義の精神病理学と生物学的精神医学からなる様々なアプローチがあり、レジリアンスは領域横断的な概念である。この術語は、もともと欧米では、親からの虐待といったトラウマに曝された子どもの(広義の)外傷性精神疾患の病態理解、およびその予防を念頭において使用され、現在もこの考え方が主流のようである。本書では、レジリアンスの概念を拡大解釈してその発展的な使用を試み、統合失調症、気分障害などについても、この観点を敷衍して論じることにした。それゆえ、レジリアンスを扱った研究書としては、欧米にはない、わが国独自の著作になると思う。
ここで本書で用いるレジリアンスの用語について一言述べておきたい。我が国では、レジリアンスはレジリエンスとも表記され、まちまちで一定していない。レジリアンスとレジリエンスの発音は、それぞれフランス語resilience、英語resilienceに由来するが、日本語では「レジリアンス」のほうが発音しやすいのではないかという単純な理由から、レジリアンスの表記を採用した。
(「序」より)
序
執筆者一覧
【総論】
第1章 現代精神医学におけるレジリアンスの概念の意義
第2章 レジリアンス概念の歴史と現状 −フランス語圏を中心に
第3章 医学哲学からみた発病モデルと回復(レジアンス)モデル −自然治癒力思想の興亡−
【各論】
第1章 PTSDにおけるレジリアンス研究
第2章 うつ病のレジリアンス −内なる回復のリズム−
第3章 うつ病における脆弱性とレジリアンス −その遺伝・生物学的基盤−
第4章 レジリアンスを拓く統合失調症
第5章 レジリアンスモデルに基づく統合失調症の再発予防研究
第6章 脳画像からみた統合失調症の顕在発症防御機構
第7章 レジリアンスの視点からみた統合失調症の臨床生物学的知見
コラム
(1)前青年期の精神保健に関わるレジリアンス・マーカーとしての低心拍数
(2)双極性障害における脆弱性とレジリアンスの神経画像
(3)うつ病者には共通の“resilience mechanism”が存在する
(4)パーソナリティー障害からの回復に関わる小児期・青年期のポジティブな体験
(5)アルコール症に対する防御因子
編者紹介
あとがき
索引