行為と幻覚
−レジリアンスを拓く統合失調症−
統合失調症についてレジリアンスや自己治癒の観点から論じた、比類なき精神病理学論文
著 者 |
小林 聡幸 |
定 価 |
5,060円 (4,600円+税) |
発行日 |
2011/02/01 |
ISBN |
978-4-307-15065-1 |
A5判・256頁・カラー図数:1枚
「統合失調症」は表面的な理解では捉えがたい疾病である。精神病理学第四世代の著者が、操作的診断基準の席巻と行き過ぎたEBMの考え方への批判から、厚みと深みのある精神病理学への高まる関心に応える。前半で「レジリアンス」概念を傍らに、大きな視点で臨床を観察し、後半では「幻覚」の病理性とその自己治癒的な側面を見据えつつ、統合失調症患者の「行為」の次元を論じた比類なき書!
はじめに
1部 統合失調症のレジリアンス
第1章 レジリアンスを拓く統合失調症
1 統合失調症のあらゆる可能な回復に対する前提的問題
2 「締めくくること」と回帰性
3 主体を定立する病的体験
4 日常への狂気の繰り込み
第2章 レジリアンスの死、患者の自死
1 はじめに
2 症例
3 考察
第3章 自我境界のレジリアンス
1 「この私」
2 自我境界
3 予後不良だった症例
4 伸縮する自我境界
5 予後良好だった症例
6 レジリアントな自我境界
2部 経過からみた統合失調症
第4章 身体症状の仮面をかぶった統合失調症
1 「仮面統合失調症」
2 範例的症例
3 患者側の医療へのかかり方
4 医療側の患者への関わり方
5 身体という臨床の場
第5章 精神病症状としての知覚変容発作
1 知覚変容発作の多面性
2 症例
3 知覚変容発作の〈内容〉と〈容器〉
4 精神病症状としての知覚変容発作
5 レジリアンスの側面から
6 結語
第6章 頻発性高揚-低迷病相統合失調症
1 統合失調症と躁うつ病の間
2 症例
3 症例小括
4 精神病理と薬物療法
5 高揚−低迷状態の位相
6 結語
3部 幻覚論とその展開
第7章 幻覚−このハイパーリアルなもの
1 「対象なき知覚」
2 知覚としての幻覚
3 五感からあふれる幻覚
4 能動と受動
5 世界の変容としての幻覚
6 ソフトウェア化された精神は幻声を聴くか?
第8章 独語幻覚
1 独語と幻覚
2 症例
3 「独語幻覚」の症候論的検討
3-1 「独語幻覚」の小括
3-2 独語妄想との比較
3-3 従来の症候論による独語幻覚の記述
3-4 幻聴と運動幻覚との関係
4 言語と独語幻覚
4-1 内言と独語幻覚
4-2 自己中心的言語と独語幻覚
4-3 鏡像的ディスクールとしての独語幻覚
5 結語
第9章 加害的自生視覚表象
1 統合失調症の加害的体験
2 症例
3 加害的自生視覚表象と寛解過程
4 加害的自生視覚表象と「発話内の力」
第10章 急性偽記憶精神病
1 偽記憶
2 症例
3 偽りの記憶
4 急性偽記憶精神病
5 偽記憶の推移
6 自我障碍の層構造
7 結語
4部 行為と記述
第11章 統合失調症と言語、そして行為へ
1 言語と精神
2 言語と思考
3 思考に先立つ言語
4 他性としての言語
5 意味論
6 統辞論
7 語用論
第12章 予定体験と自由のディスクール
1 はじめに
2 症例
3 考察
3-1 予定体験
3-2 幻覚としての予定体験
3-3 自由のディスクール
3-4 時間と自由
3-5 予定体験のディスクール
4 おわりに
第13章 統合失調症における目と行為の精神病理
1 はじめに
2 「シテンが来ない」症例
3 行為と視点
4 「目に集中しすぎて体がずれてしまった」症例
5 向性的構造と志向的構造のずれ
6 「目」と「シテン」
7 結語
初出一覧
文献と註
あとがき
索引