かかりつけ医のための
こどものアトピー性皮膚炎診療&スキンケア指導
スムーズに保護者の納得と信頼を得て、カクジツに治療するために
著 者 |
山本 一哉 |
定 価 |
2,750円 (2,500円+税) |
発行日 |
2017/06/05 |
ISBN |
978-4-307-17072-7 |
A5判・136頁・カラー図数:78枚
こどものアトピー性皮膚炎治療には、医師の診療はもちろん、家庭での正しい投薬とスキンケアが必要。ただし、多忙かつメディアから種々の情報を得ているイマドキの保護者を、納得させ、日々確実にそれらを行ってもらえるような説明をするのは、必ずしも簡単ではない。本書では、診療しながらスムーズに保護者の信頼を得て、二人三脚で治療する「診かた・聞きかた・伝えかた」と、今や欠かせない「スキンケア指導」の要点を紹介する。
※本書は「アトピー性皮膚炎のみかた―よい治療につながる医師と患者の上手なつきあいかた」(1992年 金原出版発行)を再編集・加筆修正してまとめたものです。
I章 アトピー性皮膚炎診療
Scene1 こどもと家族を迎える
Scene2 こどもと保護者の話を聞く
Scene3 診察前―こどもとの交流
Scene4 衣服を脱がせる
Scene5 診察
Scene6 診察しながら再確認
Scene7 薬の処方・スキンケア指導
Scene8 さよならを言う前に
II章 スキンケア指導
Part1 スキンケアの必要性
Part2 指導のポイント
Part3 アトピー性皮膚炎の予防― 保護者に話すときのヒント
Column1 保護者のための自宅のチェックポイント
Column2 保護者のためのお風呂のチェックポイント
Column3 部位別 外用薬処方・指導のポイント
著者紹介
著者の言葉 ― 序文にかえて
1959年6月から1年間、米国で皮膚科のレジデントを経験しました。読者の皆様は驚かれるかもしれませんが、当時日本ではアトピー性皮膚炎という病名はまだ使われていませんでした。それから半世紀、今ではこの病名を知らぬ者はいないでしょう。診療のガイドラインが整い、薬剤のみならずスキンケア製品の種類も溢れるほどあります。同疾患をめぐる基礎研究も進歩し、アトピー性皮膚炎の悩みは解決されたかと思われるのに、なぜかアトピー性皮膚炎のこどもを抱えて悩む保護者と、対応に工夫を重ねて苦労している医師は一向に減りません。
理由はいろいろあると思われます。その一つは、たとえば発熱であれば家庭で静かにして治療に専念しますが、アトピー性皮膚炎ではそのままの日常生活を続けながら治療することです。これでは局所症状を落ち着かせるのは難しいでしょう。また、こどもは幼少であればあるほど、自分の皮疹部をきれいにし、保湿し、外用剤を塗ることなど到底できません。つまり、こども本人はほとんど何もせずに、ただ痒ければ掻いているのが現状なのかもしれません。それを考えれば、ガイドラインが実効を示すようにするには何としても多忙な保護者をうまく励まし、家庭での投薬やスキンケアを実行させる以外ありません。これはガイドラインの間隙と言えるかもしれませんが、ときに大変有用な方法となります。保護者の立場を理解し、受け入れたうえで、対策を一緒に考えてあげるわけです。
たとえば、こんなシーンを思い浮かべてください。保護者は医師の処方通りに外用薬を塗っているのに効かないと言います(ただし医師の目を見ていません)。こどもは黙って物悲しい目つきで、医師に何かを訴えています。おそらくこのシーンには嘘と真があらわれています。真実を見抜いて、ただし保護者の話を嘘だと決めつける言い方はせずに、保護者に合わせた話題でからめ手から真実を話させ、有効な治療方法を実行させるには、医師に広い知識と技術が必要になります。これはガイドラインでは表現できません。そのようなときに、知恵としてもっていても損にならないことを本書に書かせていただいたつもりです。お役にたてば幸いです。