小児感染症のトリセツREMAKE

あの「小児感染症のトリセツ」が7年の時を経て、完全リメイク!

監 修 笠井 正志
著 者 伊藤 健太
定 価 5,940円
(5,400円+税)
発行日 2019/04/24
ISBN 978-4-307-17073-4

B6変判・552頁

在庫状況 あり

「小児感染症と抗菌薬のトリセツ」(2012年)のリメイク版と銘打った今作は、そのすべてを全面刷新。小児感染症を攻略するスーパーマニュアルとして生まれ変わる!
「○○のときは××せよ」だけでなく「○○とわからないとき」や「××できないとき」にどうするか? 臨床のリアルに踏み込んだ解説は必読!
圧倒的な情報量の本編【Origin】と、持ち運びに便利な要約版【Essence】の2冊セット。さらに資料集【Reference】もウェブでダウンロードできる。

ページ数は、本編【Origin】:456頁、要約版【Essence】:96頁


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Origin編

<Chapter1>小児感染症診療の原則
01 小児感染症診療のトリセツ
02 診断の考えかた─検査特性・疫学の重要性
03 病歴・身体所見の取りかた
04 微生物検査の用いかた
05 抗微生物薬の選びかた
06 抗微生物薬のトリセツ
 1.抗菌薬
 2.抗真菌薬
 3.抗ウイルス薬
 4.抗微生物薬による予防投与

<Chapter2>小児感染症診療の実践
01 敗血症
02 中枢神経感染症
 1.細菌性髄膜炎
 2.ウイルス性髄膜炎
 3.真菌性髄膜炎
 4.急性脳炎・脳症・HSV脳炎
 5.再発性無菌性髄膜炎
 6.脳膿瘍/硬膜下膿瘍/血栓性静脈炎
 7.急性小脳失調/小脳炎
03 上気道・頭頸部感染症
 1.急性咽頭炎
 2.A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 3.クループ
 4.急性喉頭蓋炎
 5.伝染性単核球症
 6.急性中耳炎
 7.急性副鼻腔炎
 8.外耳道炎
 9.頸部リンパ節炎
 10.深頸部感染症/膿瘍
04 肺炎・下気道感染症
 1.細気管支炎
 2.気管支炎
 3.肺炎
 4.免疫不全者の肺炎
 5.肺炎随伴性胸水、膿胸
 6.壊死性肺炎・肺膿瘍
 7.間質性肺炎
 8.結核
05 尿路感染症・外陰部感染症
 1.腎盂腎炎
 2.膀胱炎
 3.尿道炎
 4.外陰腟炎
 5.精巣上体炎
06 血管内・血流感染症
 1.感染性心内膜炎
 2.感染性動脈瘤
 3.血栓性静脈炎
 4.縦隔炎
 5.心筋炎
07 消化管感染症
 1.消化器症状のある小児のマネジメント
 2.抗菌薬関連下痢症
 3.Clostridiodes difficile infection
08 腹腔内感染症
 1.急性虫垂炎
 2.腹膜炎
 3.腹腔内膿瘍
 4.肝膿瘍
 5.腎膿瘍
 6.脾膿瘍
 7.膵膿瘍
 8.後腹膜膿瘍
 9.急性胆管炎
 10.急性胆嚢炎
09 発熱性発疹症の診かた・皮膚軟部組織感染症
 1.発熱性発疹症
 2.トキシックショック症候群
 3.伝染性膿痂疹(とびひ)
 4.ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
 5.蜂窩織炎・皮下膿瘍
 6.猩紅熱
 7.多形紅斑
10 骨・関節感染症
 1.急性血行性骨髄炎
 2.化膿性関節炎
 3.反応性関節炎
 4.溶連菌感染症後関節炎
 5.単純性関節炎
11 眼の感染症
 1.眼瞼感染症(麦粒腫)
 2.結膜炎
 3.角膜炎
 4.眼内炎
 5.眼窩隔膜前蜂窩織炎/眼窩蜂窩織炎
12 発熱性好中球減少症
13 原発性免疫不全症
 1.原発性免疫不全症の分類
 2.各免疫不全とその代表疾患と診断アルゴリズム
<トリセツは代を重ねるたびにグレードアップする>

 『トリセツ』初版発行から約7年が経ちました(本稿執筆は2019年2月)。当時は小児感染症を教えてくれる師匠も少なく、仲間もまるでいないといっても過言ではありませんでした。巷で行われている小児への感染症診療の違和感、特に抗菌薬投与に関する疑義をモチベーションにネルソン小児科学やS. Long先生の『Principles and Practice of Pediatric Infectious Diseases』を参考につたない自分の経験と知識をもとに書籍化にしたのが、『トリセツ初版』でした。
 同時に決意したのが、自身の留学、研究や論文発表などのアカデミックキャリアを上げることよりも、日本で小児感染症の若い仲間を作る!ことでした。日本小児感染症学会教育セミナー、HAPPYこどものみかたワークショップなどの各地での勉強会・講演を立ち上げ、活動してきました。その最終ゴールといいますか、プロダクトが本書で、伊藤健太先生に本書の著者をバトンタッチできたことを誇りに思います。内容は初版と比較にならないくらいの質量となっており、読み応えがあります。覚悟してお読みください。
 小児感染症医とは、複雑な感染症や稀な病気、微生物を診断することだけが仕事ではありません。病歴聴取、身体診察、臨床推論、感染症の原則、抗微生物薬の適正使用を当たり前に質高くできる小児科医を育てることが、小児感染症医の役割とひとつと考えています。
 今後の私のミッションは、小児感染症の指導者を育てることだと考えています。その際には本書を傍らに、あたかも自分の本や言葉かのように利用させていただきます。トリセツ3が出るときには、伊藤健太先生を超える次の小児感染症医を見出し、育てることも目論んでいます。
 小児感染症医もトリセツも代(版)を重ねるたびにグレードアップします。

2019年4月
兵庫県立こども病院 感染症内科
監修 笠井 正志



<はじめに>

 「小児科」で「感染症」を勉強しようとするとぶち当たる問題に日本語で書かれた教科書がないということがあります。
 いえ、たくさん本は出ています。しかし、多くは「Byougentai Oriented Medicine:BOM」です。○○菌という項目にその病原体の診断、治療が書いてあります。しかし患者は病原体名を掲げて来院しません。その病原体を探すのが小児科医の仕事ですが、一方で病原体がわからないことが多いジレンマを抱えた小児科診療の問題解決には、BOM はそぐわないのです。
 またBOM本の内容の多くは「Aという病原体にはBという薬」「Aの診断にはC検査」という1対1対応の羅列です。「Aかどうかわかんないけど、検査や治療をするか? しないか?」というリアルな問題解決にも役立ちません。
 この本の前身である『トリセツ』は、非常に目につきやすい装幀と、BOM本にない臨床診断ベースのわかりやすい内容で、日本の若手小児科医のバイブルとして君臨しました。特に細菌性髄膜炎などの重症感染症に関してBOMが使える場所までの行き方、つまり臨床診断・病原体診断のつけ方とその対応を端的に記載してありました。そのおかげで、この世界の地雷除去はかなり進んできました。
 しかし、小児感染症で最も多く出会う気道感染症では地中深くに埋まっているBOMの感知が本当に難しく、臨床診断・病原体診断のつけ方やその対応について、ガイドラインも含めて満足のいく教科書はありません。またこのフィールドは思った以上に広く、至るところにニッチなBOM(だいたいほとんどが「小児の」という接頭語をつけた瞬間にニッチな感染症に早変わり!)は存在しています。

 ○トリセツREMAKEは、大胆にも日本語で書かれた小児感染症の成書を目指しました!
 
 予防接種や新生児感染症など書き残したことは実はまだまだありますが、日本語で書かれた小児感染症本の中では最も取り上げている臨床診断名が多いと自負しています。
 そして、特に上下気道感染症へのリアルな対峙の仕方について、ちょっとイカレてるくらい詳細に記載しました。小児科診療でこの疾患群が占める疾病負荷がハチャメチャに大きく、またこの疾患群への取り組み方が、その小児科医の感染症診療の姿勢として現れるといっても過言ではないからです。どれだけ臨床感染症実践を声高に叫んでも、上下気道感染症診療でつまずく若手小児科医はとても多いと思いますが、ぜひこの項だけは通読し、勇気を出して現場に立ってほしいと思います!
 そして「成書というからには!」と意気込んだ結果、総執筆量は膨れ上がり、本にまとめられなかった箇所が各項に「Reference」としてたくさん存在しています。小児感染症専門医を目指す方は、ぜひそちらまで目を通してみてください!
 トリセツを改訂ではなくトリセツ2として出さないか? と笠井正志先生にお声掛けいただいたのは2017年の1月でした。結局2年という月日を経て、REMAKEという形になりましたが、笠井先生および編集の中立さんの忍耐強いご指導ご鞭撻のおかげで何とか形にすることができました。感謝してもしきれません。ありがとうございます。

2019年4月
あいち小児保健医療総合センター 総合診療科
著者 伊藤 健太