子どものカゼのトリセツ

「小児トリセツ」のスピンオフ! 会話劇で学ぶカゼ診療のリアル

監 修 笠井 正志
著 者 伊藤 健太
定 価 3,740円
(3,400円+税)
発行日 2023/09/21
ISBN 978-4-307-17080-2

B6変判・204頁

在庫状況 あり

「カゼ」は小児科において究極のコモンディジーズである。しかし、子どものカゼ診療について、真剣に、体系的に勉強したことがあるという人は少ない。それはカゼをなめているからだ! マニュアル片手にカゼを診たって現実はうまくはいかない。カゼ診療へのモヤモヤやエビデンスに正解はない。そう、カゼに取説などないのだ。
本書はそんなトリセツ不要のカゼ診療に真正面から取り組みました。カゼ薬の効果や検査の考え方、見逃してはいけない合併症や鑑別疾患まで、最新のエビデンスと臨床のリアルを踏まえて、ユーモア満載の会話劇で解説します。コロナ禍を経た今だからこそ、ワクワクとドキドキを片手にカゼ診療を見直そう!
「臨床で知りたいことがすぐわかる! 小児トリセツシリーズ」。
「トリセツ」で小児科医療はもっと面白くなる。

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第1講 あなたの“カゼ”とわたしの“カゼ”
# 01 カゼを定義してみろ!
# 02 カゼと真正面から向き合え!
# 03 なぜカゼには繰り返しかかるの?
# 04 ふつうのカゼの自然経過を知ろう

第2講 カゼと検査とわたし
# 05 カゼに検査って必要なの?
# 06 迅速抗原検査をするか・しないか、それが問題だ
# 07 公衆衛生上の検査の立ち位置とわたしたち

第3講 カゼとクスリ〜上手な対症療法〜
# 08 カゼ薬ってなんすか?
# 09 カゼ薬のエビデンス
# 10 カゼ薬の上手な使い方とは、「説明処方」だ

第4講 カゼと抗菌薬
# 11 「カゼに抗菌薬」がNGなほんとうの理由
# 12 「カゼに抗菌薬」が引き起こす悲劇

第5講 カゼの合併症〜咽頭炎・中耳炎・副鼻腔炎〜
# 13 咽頭炎ってナンダ!?
# 14 GAS咽頭炎を診断せよ!
# 15 GAS咽頭炎を治療せよ?
# 16 中耳炎と副鼻腔炎を攻略せよ!

第6講 カゼと見逃せない鑑別疾患
# 17 カゼと肺炎
# 18 カゼと重症細菌感染症
# 19 重症感染症を疑ったときはどうする!?

第7講 カゼとコミュニケーション
# 20 小児科医がカゼを診る理由
はじめに

 さて、いきなりの「カゼのトリセツ」とその後に続く会話劇にびっくりされたことでしょう。しかも「カゼ診療に取説はない」とか言ってますし……。
 本を「そっ閉じ」する前に、なぜ『子どものカゼのトリセツ』がこのような形になったのか説明させてください。
 2019年4月に『小児感染症のトリセツREMAKE(以下REMAKE)』を執筆しましたが、子どもの感染症で最も多く遭遇する「カゼ」について『REMAKE』には項目自体がありませんでした。実は、すでに書きはじめてはいたんです。数万字くらい……。ですが、「カゼのトリセツ」を『REMAKE』のように書こうとすると、どうしても単一的な「まとめ」のような形になってしまいます。

 今一度、最初のページを開いて「カゼのトリセツ」を読んでみてください。どうでしょうか? これで実際のカゼを診察できる気がしますか?

 わたしの考えは「否」です。

 小児科医も、小児科専攻医でも、初期研修医でも、子どものカゼを診ない医者はまあほとんどいないと思います。なんなら医者になって最初の外来で、着の身着のまま診療しているかもしれないのが「カゼ」です。
 しかしカゼについての知識を体系的に習うことはほとんどありません。オンザジョブトレーニングで学ぶのが当たり前なのが今までの子どものカゼ診療です。
 では知識があれば診療できるのか? というと、それもまた「否」です。
 知識についてまとめた冒頭の「カゼのトリセツ」を読んでも、きっと現場ではたくさんのモヤモヤや、言いようのない不全感を抱えるのではないかと思うのです。
 そのため、本書では、野崎先生、前田先生という小児科専攻医と初期研修医に登場してもらい、会話形式で、カゼ診療のエッセンスとその行間にある感情や思いのようなものまで掘り下げることにしました。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で一時期子どもの感染症が減りました。しかし感染症法上5類疾患に変わった2023年5月以降、RSウイルス感染症や、ヘルパンギーナ、その他子どものカゼの範ちゅうで捉えうる感染症たちが再度増加してきています。COVID-19流行後、正解があったりなかったりする子どものカゼ診療について、COVID-19流行後であっても変わらない基礎となる知識と、COVID-19流行後だからこそ必要な実践的な考え方を、この会話劇を通して、どうぞみなさんに学んでいただき、明日への診療につなげていただきたいと思います。

 さあ、一度は閉じかけたこの本を大いに開いて、いざ「子どものカゼ」ワールドへレッツラゴー!

2023年9月
あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長
著者 伊藤 健太
評者:永田 理希(希惺会ながたクリニック院長・感染症倶楽部シリーズ統括代表)

 風邪の書籍といえば、2012〜2013 年に上梓された山本舜吾先生、岸田直樹先生による感染症内科/総合診療内科視点の風邪に紛れ込む重症疾患、稀な疾患、高齢者化社会の風邪診療を主軸にした2 大バイブル書があります.
 2021 年には拙著『風邪を診るすべての医療従事者のためのPhase で見極める!小児と成人の風邪の診かた& 治しかた』(日本医事新報社)を上梓しました.プライマリケア/耳鼻咽喉科視点のおとなとこどもの風邪診療、細菌性気道感染症診療を主軸に、日常診療の大半を占める風邪/気道細菌感染症の診かた/薬/検査の「なんで? どうみる?」を突き詰めた書籍です.これを世に出した際に、笠井正志先生に「やられた〜!」という言葉をいただき、頑張った甲斐があったなあと喜んでいました.しかし、あれもこれもと伝えたいことを書籍化したら分厚くなってしまい、気軽に読みにくいかもしれないという反省点も…….

 そんな中、2023 年9 月に笠井正志先生監修、伊藤健太先生著による小児科/小児感染症科視点の『子どものカゼのトリセツ』が笠井ブランドのトリセツシリーズのスピンオフとして、上梓されたのです! それを知ったときには、「やられ返された〜!」と.
 著者の伊藤医師とキャラの立った男女の研修医の3 人が、現場の“あるある”な話題や疑問をうまく掛け合いながら、論文を引用しつつ、現場のリアル感を絶妙に出しつつ、読者の日々の疑問を導いてしまう寸劇風のわかりやすい書籍です! そして、ところどころに30〜50 歳台前半にドンピシャの小ネタが散りばめられています.
 これを読んで、実はこの書籍のターゲットは、臨床現場に1 人立ちして風邪診療外来を始め、日々の診療の中、心の奥底で「本当にコレでいいのか?」と疑問に感じている6 年目〜20 年目層なのだろうと思いました.
 あとがきに書いてあるようにこれからの小児を診る医師は、「アレルギー・発達障害・カゼ」に質の高い診療をするスキルを身に着ける必然性と必要性があり、この世代はその未来を担っていかねばならない層であると私も実感しています.
 研修医やベテラン医師の先生方は散りばめられた小ネタには「??」の世代かもしれませんが、学びと気づきのためには必携な内容となっており、ぜひ、一読いただきたい書籍です!
 一気に最後まで読み通せる読みやすさ、それでいて重要なポイントは抜けることなく、そして、研修医という登場人物を通した本音?などが投入されています.著者の伊藤健太先生の素晴らしい文才と構成力は素晴らしく、そして、それらをバックアップする監修の笠井正志先生に「倍返しだ!」と私に突きつけられた感と、また、ともに感染症教育に想いのある仲間としての熱いメッセージを受け止めました.
 両先生とそのゆかいな仲間たちの企画力とバイタリティーがあれば、この書籍の内容でこのまま学会などで寸劇が出来るはず♪ いや、本当にやってしまいそう、○○ネットテレビあたりで企画もありかも^_^
 その際には、ぜひ、混ぜてください(^^)

 風邪診療は、1 人外来診療であるがゆえにブラックボックス.そして、基本は自然に治癒する感染症がゆえに、診れている/出来ている気になってしまいがち…….日本の医療費も限界にきており、やみくもに受診させ、検査、薬を出せばいい時代ではない.いまや外来耐性菌時代でもあり、根拠なく抗菌薬を処方する時代でもない.小児の一般外来診療や時間外救急診療のほとんどが発熱/風邪診療である事実をふまえ、本書はそのブラックボックスをさりげなく、ぶち壊し、明るみに出してくれちゃっています!
 本書での最大のメッセージは「カゼ診療で患者・家族、幸せにしたい」という想い.本気で風邪を診るということは、人や社会を診るということにもつながる.本書を読めば、あなたの中にも必ずカゼコラミンが分泌してきます! みんなで出そうカゼコラミン!

<小児科 Vol.64 No.12、2023年12月号、金原出版より転載>