これからの乳癌診療 2015-2016
国内外の新知見を集約した乳癌診療アニュアルレポ−ト最新刊!
監 修 |
園尾 博司 |
編 集 |
福田 護 / 池田 正 / 佐伯 俊昭 / 鹿間 直人 |
定 価 |
6,600円 (6,000円+税) |
発行日 |
2015/07/10 |
ISBN |
978-4-307-20346-3 |
B5判・172頁・図数:26枚・カラー図数:33枚
いま知っておくべき新知見を集約した"乳癌診療アニュアルレポ−ト"最新刊。2年毎に改訂される日本乳癌学会編「乳癌診療ガイドライン」と編集形態を共にし、各々「薬物療法」「外科療法」「放射線療法」「疫学・予防」「検診・診断」のアップデ−トに一役買う。さらに「トピックス」「チ−ム医療に必要な最新の知識」の章ではいっそうの最新情報と、医師をはじめとする多くのメディカルスタッフの連携に役立つ内容を盛り込んだ。
第1章 検診・診断
1.有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン2013年度版の解説
2.BI-RADS2013版概説
3.日本の乳がん検診の実態
第2章 外科療法
1.再建を前提としたNSM、SSMの適応と問題点
2.センチネルリンパ節生検の歴史と展望
3.非侵襲的手術療法の現状と展望─ラジオ波熱焼灼療法を中心に
第3章 薬物療法
1.Triple negative亜分類からみた治療戦略
2.術前化学療法の現状と展望─pCRの考え方を含めて
3.ER陽性乳癌に対するホルモン療法抵抗性への対策
第4章 放射線療法
1.乳房照射の標準化に向けての取り組み
2.人工乳房による再建術と放射線治療に関わる諸問題
3.高齢者乳癌における放射線療法の適応と問題点
第5章 疫学・予防
1.遺伝性乳癌の現状と展望─治療選択を含めて
2.我が国および世界の最新乳癌統計
第6章 トピックス
1.ASCO 2014のトピックス
2.ASCO 新ガイドラインの紹介
3.マイクロRNAとこれからの乳癌診療
4.乳癌におけるカルボプラチンへの期待
第7章 チーム医療に必要な最新の知識
1.放射線皮膚炎に対する適切な対応法─標準的な放射線皮膚炎の予防と治療に向けて
2.遺伝性乳癌のカウンセリング
3.分子標的薬の副作用対策
序
我が国における乳癌の罹患率および死亡率は相変わらず増加し続けている。乳がん検診の受診率は、市町村が実施している対策型検診が約20%、職域や人間ドックで行われている任意型検診を含めると約40%であるが、欧米の受診率約80%の半分の値に留まっている。2014年3月に国立がん研究センターが発刊した「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン2013年度版」では、対策型マンモグラフィ(MMG)単独法(40〜74歳)と対策型視触診・MMG併用法(40〜64歳)が、死亡率減少効果を示す方法として推奨されている。
現在、乳房温存術は全手術の約60%に行われているが、近年はこの値が頭打ちになっている。根治性と整容性を重視し、無理な温存を避け、乳房再建術を行うようになったためである。乳房再建術は、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の設立(2012年)と人工乳房(インプラント)の保険適用(2013年)によって、急速に普及・発展してきている。インプラントを用いた乳房再建は、所定のガイドラインに沿った適応と方法で行われている。また、今後は我が国でも乳癌罹患リスクが高いBRCA遺伝子変異陽性例に対して、リスク低減乳房切除とインプラントを用いた再建術が行われる時代を迎えることになろう。
一方、センチネルリンパ節生検は転移陰性例に対する腋窩リンパ節郭清を省略するために開発されたが、最近では一定の条件のもとでセンチネルリンパ節転移陽性例に対する腋窩郭清の省略も是認されつつある。
また、放射線治療では、乳房温存術後15回照射法の有用性が示され、治療期間の短縮が図られている。一方、インプラント乳房再建例に対する乳房照射、高齢者の早期乳癌における乳房温存術後照射の省略などの問題点については本文を参照願いたい。
さらに薬物療法のトピックスとしては、閉経前ER陽性乳癌の補助療法として、卵巣機能抑制を行えばアロマターゼ阻害薬がタモキシフェンより有意に良好な健存率を示すという報告や、化学療法にLH-RHアゴニストを併用することで、閉経前乳癌女性の妊孕性を保持できるという報告が挙げられる。また、再発乳癌において、HER2陽性症例に対するペルツヅマブおよびT-DM1の効果やER陽性ホルモン療法抵抗性症例に対するmTOR阻害薬の効果により予後改善がもたらされている。一方、トリプルネガティブ症例は、不均一性があり、治療が困難であるが、7つのサブグループに分けて、有効な分子標的薬の検討が進められており、今後の実用化と予後改善に期待したい。
本書は、乳癌に関する1年間の内外知見の膨大な情報の中から研究の進歩やトピックスを集約し、各領域のエクスパートによって簡潔に理解しやすく記述されている。乳癌診療に携わっている医師は勿論のこと、研修医、コメディカルの方々の明日からの乳癌診療や研究に役立てて頂ければ幸いである。
2015年6月
園尾 博司