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遺伝性腫瘍ハンドブック
遺伝性腫瘍の基礎から疾患の要点まで、わかりやすく解説!
編 集 | 日本家族性腫瘍学会 |
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定 価 | 4,180円 (3,800円+税) |
発行日 | 2019/06/15 |
ISBN | 978-4-307-20397-5 |
B5判・188頁・カラー図数:183枚
在庫状況 | あり |
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今まさに全盛期を迎えている“がんゲノム医療”。遺伝性腫瘍の理解は、二次的所見として診断される遺伝性腫瘍も含め、今日のがん診療においては極めて重要である。本書は研修ツールとして好評を得ている教育サイト「遺伝性腫瘍e-Learning」を書籍化。共通編4項目(遺伝性腫瘍概論ほか)、疾患編8疾患(Lynch症候群ほか)を通して、遺伝性腫瘍の基礎から疾患の要点まで、講義形式でビジュアルに解説した。
「遺伝性腫瘍e-Learning」との連携 〜より学習を進めるために〜
――I 共通編――
第1章 遺伝性腫瘍概論
補足編 遺伝子の基本構造と疾病の分子遺伝学的背景
1 細胞と染色体DNA
2 染色体DNAのさまざまな状態
3 細胞周期と染色体DNA
4 DNAの構造
5 遺伝子の構造
6 遺伝子変異と遺伝子機能の変化
本編 腫瘍発生の分子遺伝学的基礎と遺伝性腫瘍
1 発がんの多段階遺伝子変化説
2 がん遺伝子とがん抑制遺伝子 (1)
3 DNA 変化からみたがんの原因
4 遺伝子変異と遺伝子機能の変化:がん遺伝子
5 遺伝子変異と遺伝子機能の変化:がん抑制遺伝子
6 がん遺伝子とがん抑制遺伝子 (2)
7 ヒト腫瘍にみられるゲノム変化と階層構造
8 遺伝性腫瘍の遺伝学的基礎
9 遺伝子変異の遺伝と疾患の遺伝形式
10 遺伝性腫瘍性疾患の責任遺伝子
第2章 家系情報の聴き取り
1 聴き取りの目的と意義
2 聴き取りのポイント
3 家系図の描き方 a) 一般的な記号/ b) 関係線の定義/c) 遺伝学的評価に関する記号/ d) その他
4 実際の家系図(例)
第3章 遺伝カウンセリング
1 「遺伝カウンセリング」とは
2 遺伝カウンセリングの提供が考えられる場面(腫瘍領域の場合)
3 遺伝カウンセリングの意義
4 遺伝カウンセリングで扱う内容
5 遺伝情報の特徴〜遺伝情報を慎重に扱うのは?
6 遺伝性疾患の特殊性
7 遺伝カウンセリング担当者に求められる姿勢
8 遺伝カウンセリングの内容(1) 個人・家族の病歴の収集(家系情報の聴き取り)
9 遺伝カウンセリングの内容(2) リスク評価、遺伝性腫瘍の鑑別
10 遺伝カウンセリングの内容(3) 遺伝学的検査適応の判断
11 遺伝カウンセリングの内容(4) 遺伝学的検査前の説明・同意の取得
12 遺伝カウンセリングの内容(5) 遺伝学的検査の結果の開示
13 遺伝カウンセリングの内容(6) 心理社会的アセスメント、心理社会的支援
第4章 遺伝学的検査
1 遺伝子関連検査の分類と定義
2 遺伝性腫瘍における遺伝学的検査の手順
3 代表的な遺伝性腫瘍とその原因遺伝子・臨床像
4 遺伝学的検査時に提供すべき情報
5 遺伝学的検査を利用する際に注意が必要なこと
6 遺伝性腫瘍が疑われたときに実施する遺伝学的検査
7 遺伝学的検査に用いる物質(DNA, RNA, タンパク質)
8 遺伝学的検査 (1)サンガーシークエンス法 (2)NGS法
9 次世代シークエンサーを用いたリシークエンス
10 ゲノム情報単位とおもな遺伝子解析技術
11 MLPA法
12 染色体検査(RB1遺伝子[13q14.2]の例)
13 NGSの出力データから報告書まで
14 バリアントの5段階分類
15 遺伝性腫瘍原因遺伝子パネル検査結果報告書
16 バリアント評価時の参照サイト例
17 遺伝学的検査の結果解釈
――II 疾患編――
第5章 遺伝性乳がん卵巣がん症候群
1 乳がん、卵巣がんの発症に関わる遺伝子
2 BRCA1/2
3 BRCA1、BRCA2遺伝子の病的バリアント保有率
4 本邦乳がん患者における遺伝性乳がん関連遺伝子の大規模解析
5 乳がん発症リスク
6 卵巣がん発症リスク
7 BRCA1/2遺伝学的検査基準
8 BRCA1/2病的バリアント保有者の対策
9 サーベイランス―乳房MRIの意義
10 リスク低減手術の生存率への影響
11 PARP阻害薬による合成致死誘導
12 SOLO2/ENGOT-Ov21
13 OlympiAD試験(PhaseIII)
第6章 リンチ症候群
1 遺伝性大腸がん
2 リンチ症候群の歴史
3 リンチ症候群の概要
4 原因遺伝子:DNAミスマッチ修復遺伝子
5 ミスマッチ修復機構の機能不全
6 大腸がん症例からリンチ症候群を診断する流れ
7 大腸がんから拾い上げる基準
8 ミスマッチ修復タンパクの免疫組織化学染色(Immunohistochemistry:IHC)検査
9 ミスマッチ修復遺伝子の種類による関連がんの累積リスク
10 サーベイランス
11 リスク低減手術
12 薬物治療・化学予防
第7章 家族性大腸腺腫症
1 FAPの歴史
2 FAPの特徴
3 FAPの主な随伴病変
4 FAPにおける大腸外随伴病変
5 FAPの診断
6 鑑別を要する疾患・病態
7 FAP診断のフローチャート
8 FAPに対する術式
9 FAPに対する予防的大腸切除の術式選択
10 FAPに対する大腸切除後の残存直腸と主な随伴病変に対するサーベイランス
11 FAPに対する化学予防
第8章 リ・フラウメニ症候群
1 特徴
2 原因遺伝子
3 歴史
4 Liの古典的診断基準
5 診断クライテリアの変遷
6 ChompretのTP53検査基準
7 TP53遺伝学的検査の適応
8 腫瘍スペクトラム
9 浸透率
10 表現型と遺伝型の相関
11 サーベイランス
12 予防と治療
13 遺伝カウンセリング
第9章 遺伝性網膜芽細胞腫
1 疾患の歴史
2 疾患の特徴
3 原因遺伝子
4 遺伝性網膜芽細胞腫
5 治療
6 遺伝学的検査とサーベイランス
7 本人および家族における病的バリアント保有リスク(遺伝学的検査前)
8 サーベイランス(二次がん)
第10章 多発性内分泌腫瘍症1型
1 MEN1の歴史
2 MEN1の関連病変
3 MEN1の原因遺伝子:MEN1
4 MEN1の診断基準
5 MEN1の主要病変に伴う臨床症状
6 MEN1遺伝学的検査の対象
7 MEN1:原発性副甲状腺機能亢進症の治療方針
8 MEN1:膵消化管神経内分泌腫瘍の治療方針
9 MEN1:その他病変の治療方針
10 MEN1のサーベイランス
第11章 多発性内分泌腫瘍症2型
1 MEN2の歴史
2 MEN2(Multiple Endocrine Neoplasia type 2)
3 甲状腺髄様がん
4 甲状腺髄様がんにおける遺伝性と散発性の内訳
5 MEN2に発生する疾病と生涯浸透率
6 MEN2の診断基準
7 甲状腺髄様がん診断治療に関するアルゴリズム
8 RET遺伝子における病的バリアント存在部位は臨床病型と強く関連
9 RET病的バリアントによるRETタンパクの変化
10 RET遺伝子の病的バリアント存在部位とATAリスクレベル・構成疾患の頻度
11 EUROMEN study groupによる20歳未満のコドン634変異を有する小児207例の解析
12 MEN2のサーベイランス
13 甲状腺髄様がんに対するRET遺伝学的検査の保険適用・自費診療の区別
第12章 フォン・ヒッぺル・リンドウ病
1 VHL病(症候群)
2 歴史
3 VHLタンパク質の機能と腫瘍の発症機構
4 臨床診断基準
5 発症する腫瘍の年齢と頻度
6 各疾患の経過観察の開始時期と方法
7 遺伝カウンセリング、遺伝学的検査
8 中枢神経血管芽腫(小脳、延髄、脊髄)
9 網膜血管腫
10 腎細胞がん(淡明細胞型)
11 褐色細胞腫
12 膵神経内分泌腫瘍(嚢胞)
――I 共通編――
第1章 遺伝性腫瘍概論
補足編 遺伝子の基本構造と疾病の分子遺伝学的背景
1 細胞と染色体DNA
2 染色体DNAのさまざまな状態
3 細胞周期と染色体DNA
4 DNAの構造
5 遺伝子の構造
6 遺伝子変異と遺伝子機能の変化
本編 腫瘍発生の分子遺伝学的基礎と遺伝性腫瘍
1 発がんの多段階遺伝子変化説
2 がん遺伝子とがん抑制遺伝子 (1)
3 DNA 変化からみたがんの原因
4 遺伝子変異と遺伝子機能の変化:がん遺伝子
5 遺伝子変異と遺伝子機能の変化:がん抑制遺伝子
6 がん遺伝子とがん抑制遺伝子 (2)
7 ヒト腫瘍にみられるゲノム変化と階層構造
8 遺伝性腫瘍の遺伝学的基礎
9 遺伝子変異の遺伝と疾患の遺伝形式
10 遺伝性腫瘍性疾患の責任遺伝子
第2章 家系情報の聴き取り
1 聴き取りの目的と意義
2 聴き取りのポイント
3 家系図の描き方 a) 一般的な記号/ b) 関係線の定義/c) 遺伝学的評価に関する記号/ d) その他
4 実際の家系図(例)
第3章 遺伝カウンセリング
1 「遺伝カウンセリング」とは
2 遺伝カウンセリングの提供が考えられる場面(腫瘍領域の場合)
3 遺伝カウンセリングの意義
4 遺伝カウンセリングで扱う内容
5 遺伝情報の特徴〜遺伝情報を慎重に扱うのは?
6 遺伝性疾患の特殊性
7 遺伝カウンセリング担当者に求められる姿勢
8 遺伝カウンセリングの内容(1) 個人・家族の病歴の収集(家系情報の聴き取り)
9 遺伝カウンセリングの内容(2) リスク評価、遺伝性腫瘍の鑑別
10 遺伝カウンセリングの内容(3) 遺伝学的検査適応の判断
11 遺伝カウンセリングの内容(4) 遺伝学的検査前の説明・同意の取得
12 遺伝カウンセリングの内容(5) 遺伝学的検査の結果の開示
13 遺伝カウンセリングの内容(6) 心理社会的アセスメント、心理社会的支援
第4章 遺伝学的検査
1 遺伝子関連検査の分類と定義
2 遺伝性腫瘍における遺伝学的検査の手順
3 代表的な遺伝性腫瘍とその原因遺伝子・臨床像
4 遺伝学的検査時に提供すべき情報
5 遺伝学的検査を利用する際に注意が必要なこと
6 遺伝性腫瘍が疑われたときに実施する遺伝学的検査
7 遺伝学的検査に用いる物質(DNA, RNA, タンパク質)
8 遺伝学的検査 (1)サンガーシークエンス法 (2)NGS法
9 次世代シークエンサーを用いたリシークエンス
10 ゲノム情報単位とおもな遺伝子解析技術
11 MLPA法
12 染色体検査(RB1遺伝子[13q14.2]の例)
13 NGSの出力データから報告書まで
14 バリアントの5段階分類
15 遺伝性腫瘍原因遺伝子パネル検査結果報告書
16 バリアント評価時の参照サイト例
17 遺伝学的検査の結果解釈
――II 疾患編――
第5章 遺伝性乳がん卵巣がん症候群
1 乳がん、卵巣がんの発症に関わる遺伝子
2 BRCA1/2
3 BRCA1、BRCA2遺伝子の病的バリアント保有率
4 本邦乳がん患者における遺伝性乳がん関連遺伝子の大規模解析
5 乳がん発症リスク
6 卵巣がん発症リスク
7 BRCA1/2遺伝学的検査基準
8 BRCA1/2病的バリアント保有者の対策
9 サーベイランス―乳房MRIの意義
10 リスク低減手術の生存率への影響
11 PARP阻害薬による合成致死誘導
12 SOLO2/ENGOT-Ov21
13 OlympiAD試験(PhaseIII)
第6章 リンチ症候群
1 遺伝性大腸がん
2 リンチ症候群の歴史
3 リンチ症候群の概要
4 原因遺伝子:DNAミスマッチ修復遺伝子
5 ミスマッチ修復機構の機能不全
6 大腸がん症例からリンチ症候群を診断する流れ
7 大腸がんから拾い上げる基準
8 ミスマッチ修復タンパクの免疫組織化学染色(Immunohistochemistry:IHC)検査
9 ミスマッチ修復遺伝子の種類による関連がんの累積リスク
10 サーベイランス
11 リスク低減手術
12 薬物治療・化学予防
第7章 家族性大腸腺腫症
1 FAPの歴史
2 FAPの特徴
3 FAPの主な随伴病変
4 FAPにおける大腸外随伴病変
5 FAPの診断
6 鑑別を要する疾患・病態
7 FAP診断のフローチャート
8 FAPに対する術式
9 FAPに対する予防的大腸切除の術式選択
10 FAPに対する大腸切除後の残存直腸と主な随伴病変に対するサーベイランス
11 FAPに対する化学予防
第8章 リ・フラウメニ症候群
1 特徴
2 原因遺伝子
3 歴史
4 Liの古典的診断基準
5 診断クライテリアの変遷
6 ChompretのTP53検査基準
7 TP53遺伝学的検査の適応
8 腫瘍スペクトラム
9 浸透率
10 表現型と遺伝型の相関
11 サーベイランス
12 予防と治療
13 遺伝カウンセリング
第9章 遺伝性網膜芽細胞腫
1 疾患の歴史
2 疾患の特徴
3 原因遺伝子
4 遺伝性網膜芽細胞腫
5 治療
6 遺伝学的検査とサーベイランス
7 本人および家族における病的バリアント保有リスク(遺伝学的検査前)
8 サーベイランス(二次がん)
第10章 多発性内分泌腫瘍症1型
1 MEN1の歴史
2 MEN1の関連病変
3 MEN1の原因遺伝子:MEN1
4 MEN1の診断基準
5 MEN1の主要病変に伴う臨床症状
6 MEN1遺伝学的検査の対象
7 MEN1:原発性副甲状腺機能亢進症の治療方針
8 MEN1:膵消化管神経内分泌腫瘍の治療方針
9 MEN1:その他病変の治療方針
10 MEN1のサーベイランス
第11章 多発性内分泌腫瘍症2型
1 MEN2の歴史
2 MEN2(Multiple Endocrine Neoplasia type 2)
3 甲状腺髄様がん
4 甲状腺髄様がんにおける遺伝性と散発性の内訳
5 MEN2に発生する疾病と生涯浸透率
6 MEN2の診断基準
7 甲状腺髄様がん診断治療に関するアルゴリズム
8 RET遺伝子における病的バリアント存在部位は臨床病型と強く関連
9 RET病的バリアントによるRETタンパクの変化
10 RET遺伝子の病的バリアント存在部位とATAリスクレベル・構成疾患の頻度
11 EUROMEN study groupによる20歳未満のコドン634変異を有する小児207例の解析
12 MEN2のサーベイランス
13 甲状腺髄様がんに対するRET遺伝学的検査の保険適用・自費診療の区別
第12章 フォン・ヒッぺル・リンドウ病
1 VHL病(症候群)
2 歴史
3 VHLタンパク質の機能と腫瘍の発症機構
4 臨床診断基準
5 発症する腫瘍の年齢と頻度
6 各疾患の経過観察の開始時期と方法
7 遺伝カウンセリング、遺伝学的検査
8 中枢神経血管芽腫(小脳、延髄、脊髄)
9 網膜血管腫
10 腎細胞がん(淡明細胞型)
11 褐色細胞腫
12 膵神経内分泌腫瘍(嚢胞)
現代はゲノム医療の時代と言われるが、その先駆けとなったのが、“がんゲノム医療”である。“がんゲノム医療” は、次世代シークエンサー(NGS)を利用したがん組織におけるクリニカルシークエンスなどの技術革新も相俟って、いまや診断・治療両面においてがんの実臨床の中心となってきている。
この新しい“がんゲノム医療” に関する正しい情報提供を目的の一つとして、先年、e-Precision Medicine Japanの教育サイトが立ち上がった。これは、産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業 SCRUM-Japanを基盤として、がんに関係する諸学会の専門家の協力も得て構築されたe-learningサイトであり、一般に広く公開されている。2018年、その一環として、遺伝性腫瘍 e-learningが、一般社団法人日本家族性腫瘍学会の全面協力の下、作成された。共通編として、遺伝性腫瘍概論や遺伝カウンセリングなど4項目を、疾患編として、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)やLynch症候群など8つの代表的な遺伝性腫瘍を取り上げた。1項目10分ほどで聴講でき、いつでもどこでも簡便に受講できるe-learningのメリットが存分に活かされた研修ツールとして広く好評を得た。ただ、常に手元において必要時すぐに参照できる冊子体でも利用したいという声も多くいただき、今回、同じ内容をハンドブックとしても上梓することとなった。尚、日本家族性腫瘍学会は時代の要請もあり、日本遺伝性腫瘍学会へと名称変更する方向で進んでおり、本書の刊行が旧名称での最後の学会事業となる予定である。
本ハンドブックの基本的なコンテンツはe-learning と全く同様であるが、ハンドブックとして利用するに際に必要と思われる用語解説を随所に追加した。遺伝性腫瘍は稀なものも含めると数十疾患にも及ぶが、本書を通読されれば、代表的な遺伝性腫瘍を中心にこの分野の概略が、最新の情報と共に簡潔に把握できるような形式となっている。
今まさに全盛期を迎えている“がんゲノム医療” であるが、その源流は、がん遺伝子・がん抑制遺伝子・DNA修復遺伝子などに遡ることができる。すなわち、遺伝性腫瘍疾患におけるこれらのがん関連遺伝子の発見・同定がそのスタート地点であり、その観点からは、遺伝性腫瘍は“がんゲノム医療” のプロトタイプであると言っても過言ではない。また、前述のがんのクリニカルシークエンスにおいて二次的所見として診断されてくる遺伝性腫瘍の存在も大きな問題となっている。遺伝性腫瘍の理解は今日のがん診療において極めて重要であり、本ハンドブックがその一助となれば幸いである。
尚、本ハンドブックは、SCRUM-Japan/GI-SCREEN-Japan研究代表者の吉野孝之先生(国立がん研究センター東病院)のご理解とサポートが無ければ出来上がらなかったものであり、最後に、深甚なる謝意を表するものである。
2019年6月
一般社団法人日本家族性腫瘍学会 理事長 冨田 尚裕
(兵庫医科大学外科学講座 下部消化管外科)
この新しい“がんゲノム医療” に関する正しい情報提供を目的の一つとして、先年、e-Precision Medicine Japanの教育サイトが立ち上がった。これは、産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業 SCRUM-Japanを基盤として、がんに関係する諸学会の専門家の協力も得て構築されたe-learningサイトであり、一般に広く公開されている。2018年、その一環として、遺伝性腫瘍 e-learningが、一般社団法人日本家族性腫瘍学会の全面協力の下、作成された。共通編として、遺伝性腫瘍概論や遺伝カウンセリングなど4項目を、疾患編として、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)やLynch症候群など8つの代表的な遺伝性腫瘍を取り上げた。1項目10分ほどで聴講でき、いつでもどこでも簡便に受講できるe-learningのメリットが存分に活かされた研修ツールとして広く好評を得た。ただ、常に手元において必要時すぐに参照できる冊子体でも利用したいという声も多くいただき、今回、同じ内容をハンドブックとしても上梓することとなった。尚、日本家族性腫瘍学会は時代の要請もあり、日本遺伝性腫瘍学会へと名称変更する方向で進んでおり、本書の刊行が旧名称での最後の学会事業となる予定である。
本ハンドブックの基本的なコンテンツはe-learning と全く同様であるが、ハンドブックとして利用するに際に必要と思われる用語解説を随所に追加した。遺伝性腫瘍は稀なものも含めると数十疾患にも及ぶが、本書を通読されれば、代表的な遺伝性腫瘍を中心にこの分野の概略が、最新の情報と共に簡潔に把握できるような形式となっている。
今まさに全盛期を迎えている“がんゲノム医療” であるが、その源流は、がん遺伝子・がん抑制遺伝子・DNA修復遺伝子などに遡ることができる。すなわち、遺伝性腫瘍疾患におけるこれらのがん関連遺伝子の発見・同定がそのスタート地点であり、その観点からは、遺伝性腫瘍は“がんゲノム医療” のプロトタイプであると言っても過言ではない。また、前述のがんのクリニカルシークエンスにおいて二次的所見として診断されてくる遺伝性腫瘍の存在も大きな問題となっている。遺伝性腫瘍の理解は今日のがん診療において極めて重要であり、本ハンドブックがその一助となれば幸いである。
尚、本ハンドブックは、SCRUM-Japan/GI-SCREEN-Japan研究代表者の吉野孝之先生(国立がん研究センター東病院)のご理解とサポートが無ければ出来上がらなかったものであり、最後に、深甚なる謝意を表するものである。
2019年6月
一般社団法人日本家族性腫瘍学会 理事長 冨田 尚裕
(兵庫医科大学外科学講座 下部消化管外科)