Copyright© KANEHARA & Co., LTD. All Rights Reserved.
GIST診療ガイドライン 2022年4月改訂 第4版
8年ぶりの改訂! CQと連動したアルゴリズム等記載も充実
編 集 | 日本癌治療学会 |
---|---|
定 価 | 3,300円 (3,000円+税) |
発行日 | 2022/04/30 |
ISBN | 978-4-307-20446-0 |
B5判・136頁・図数:1枚・カラー図数:14枚
在庫状況 | あり |
---|
GIST(消化管間質腫瘍)は、有効な分子標的薬開発を機に大きな転換点を迎えた。8年ぶりの改訂となる第4版では「画像診断」「病理診断」「外科治療」「内科治療」の各領域で、最新のエビデンスを取り入れ、専門家間のコンセンサスも加味した本邦の臨床現場に即した内容としている。関連するCQ と連動した8つの診断・治療アルゴリズム等記載も充実し、GIST診療に必携の一冊となっている。
【関連情報】部分改訂のお知らせ(日本癌治療学会ホームページ)
【関連情報】部分改訂のお知らせ(日本癌治療学会ホームページ)
■本ガイドラインの概要
1.本ガイドラインの目的
2.本ガイドラインが対象とする利用者
3.本ガイドラインが対象とする患者
4.利用上の注意
5.診療ガイドライン改訂方法
1)改訂基本方針
2)スコープ作成
3)CQ・BQ作成
4)文献検索と採択基準
5)システマティックレビュー
6)推奨草案作成
7)推奨決定
6.外部評価
1)GIST診療ガイドライン評価ワーキンググループによる評価
2)日本癌治療学会会員向けパブリックコメント
3)日本癌治療学会がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEII評価
7.本ガイドラインの普及と改訂
8.利益相反(COI)
1)利益相反申告
2)利益相反申告に基づく推奨決定会議における制限
3)本ガイドラインの独立性
□第4版ガイドライン改訂関係者名簿
1)ガイドライン作成団体
2)ガイドライン作成組織
3)ガイドライン責任組織
4)外部評価組織
5)ガイドライン作成方法論アドバイザー
6)文献検索
7)協力団体
□Question・推奨一覧
□アルゴリズム・参考図表
1.アルゴリズム
1)アルゴリズム1 消化管粘膜下腫瘍の診断・治療の概略
2)アルゴリズム2 紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断
3)アルゴリズム3 類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断
4)アルゴリズム4 切除可能な限局性消化管粘膜下腫瘍の治療方針
5)アルゴリズム5 限局性GISTの外科治療
6)アルゴリズム6 限局性GISTの術後治療
7)アルゴリズム7 GISTの薬物治療(一次治療)
8)アルゴリズム8 イマチニブ耐性GISTの治療
2.参考図表
1)参考図表1 GISTの遺伝子型
2)参考図表2 多発GISTの鑑別
□略語一覧
■画像診断領域
1.総論
1)粘膜下腫瘍の診断に有用な画像検査
2)薬物療法の効果判定に有用な画像診断
2.CQ
・画像1(BQ) GISTが疑われる患者の確定診断にEUS-FNAは有用か
・画像2(BQ) GIST患者の病期診断や再発診断にCT、MRIは有用か
・画像3(BQ) GIST患者の病期診断や再発診断にFDG-PET/CTは有用か
・画像4(CQ) GISTに対する薬物療法の治療効果判定にFDG-PET/CTの追加は有用か
■病理診断領域
1.総論
1)GISTの病理診断
2)GISTの再発リスク分類
3)GISTの遺伝子異常
2.CQ
・病理1(BQ) GISTの鑑別にはHE 染色での形態診断とKIT免疫染色は有用か
・病理2(BQ) GISTの鑑別診断にKIT以外の免疫染色は有用か
・病理3(BQ) 免疫染色でKIT陰性または弱陽性のGISTの診断に遺伝子解析は有用か
・病理4(BQ) GISTは臓器別に頻度や悪性度に違いはあるか
・病理5(BQ) GISTの悪性度評価に再発リスク分類は有用か
・病理6(BQ) GISTの悪性度(再発リスク)評価に生検は有用か
・病理7(BQ) GISTにおいてKIT免疫染色とc-kit遺伝子変異とは関係があるか
・病理8(BQ) イマチニブ一次耐性GISTにおける遺伝子解析は有用か
・病理9(BQ) c-kit・PDGFRA遺伝子以外の異常により発生するGISTはあるか
・病理10(BQ) GISTが多発する病態はあるか
■外科治療領域
1.総論
1)原発GISTに対する外科治療
2)転移・再発GISTに対する外科治療
2.CQ
・外科1(CQ) 2cm未満の胃GISTに対して、外科切除は推奨されるか
・外科2(CQ) 2cm以上、5cm 未満の粘膜下腫瘍に対して、外科切除は推奨されるか
・外科3(CQ) 5cm以上の粘膜下腫瘍に対して、腹腔鏡下手術は推奨されるか
・外科4(BQ) 外科切除が適応となるGISTに対して、臓器機能温存手術は推奨されるか
・外科5(CQ) 大きなGISTや、不完全切除の可能性が高いと判断されるGISTに対して、イマチニブによる術前補助療法は有用か
・外科6(CQ) 術前もしくは術中に腫瘍破裂が確認されたGISTに対して、イマチニブによる術後補助療法は有用か
・外科7(BQ) 完全切除後のGISTに対して、定期フォローは有用か
・外科8(CQ) 転移性GISTに対して、初回治療としての外科切除は有用か
・外科9(CQ) イマチニブ奏効中の転移・再発GISTに対して、外科切除は有用か
・外科10(CQ) 薬剤耐性の転移・再発GISTに対して、外科切除は有用か
■内科治療領域
1.総論
1)転移・再発GISTの治療
2)術後補助療法
2.CQ
・内科1(CQ) 標準用量開始が可能な転移・再発GISTに対して、イマチニブの標準用量開始と比べて低用量開始は有用か
・内科2(BQ) 転移・再発GISTに対して、チロシンキナーゼ阻害薬が有効性を示した場合、治療中断は有用か
・内科3(CQ) 転移・再発GISTに対して、イマチニブの血中濃度測定は有用か
・内科4(CQ) イマチニブ400 mg/日投与中に増悪した転移・再発GISTに対して、投与量増加は有用か
・内科5-1(BQ) 再発高リスクまたは腫瘍破裂GISTに対して、完全切除後3年間のイマチニブによる術後補助療法は有用か
・内科5-2(CQ) 再発高リスクまたは腫瘍破裂GISTに対して、完全切除後3年間を超えるイマチニブによる術後補助療法は有用か
・内科6(BQ) イマチニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、スニチニブは有用か
・内科7(BQ) スニチニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、レゴラフェニブは有用か
・内科8(CQ) レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、イマチニブまたはスニチニブの再投与は有用か
・内科9(CQ) 転移・再発GISTに対して、放射線治療は有用か
・内科10(CQ) GISTの肝転移に対して、外科切除以外の局所療法は有用か
・内科11(CQ) スニチニブおよびレゴラフェニブの標準用法用量の不耐GISTに対して、スニチニブおよびレゴラフェニブの投与スケジュールの変更は推奨されるか
・内科12(CQ) GIST治療におけるチロシンキナーゼ阻害薬の選択に遺伝子解析は有用か
■附録
1.検索式
1)画像診断領域
2)病理診断領域
3)外科治療領域
4)内科治療領域
2.各Questionの投票結果内訳
3.外部評価対応
1)外部評価対応
2)がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEII評価結果
索引
1.本ガイドラインの目的
2.本ガイドラインが対象とする利用者
3.本ガイドラインが対象とする患者
4.利用上の注意
5.診療ガイドライン改訂方法
1)改訂基本方針
2)スコープ作成
3)CQ・BQ作成
4)文献検索と採択基準
5)システマティックレビュー
6)推奨草案作成
7)推奨決定
6.外部評価
1)GIST診療ガイドライン評価ワーキンググループによる評価
2)日本癌治療学会会員向けパブリックコメント
3)日本癌治療学会がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEII評価
7.本ガイドラインの普及と改訂
8.利益相反(COI)
1)利益相反申告
2)利益相反申告に基づく推奨決定会議における制限
3)本ガイドラインの独立性
□第4版ガイドライン改訂関係者名簿
1)ガイドライン作成団体
2)ガイドライン作成組織
3)ガイドライン責任組織
4)外部評価組織
5)ガイドライン作成方法論アドバイザー
6)文献検索
7)協力団体
□Question・推奨一覧
□アルゴリズム・参考図表
1.アルゴリズム
1)アルゴリズム1 消化管粘膜下腫瘍の診断・治療の概略
2)アルゴリズム2 紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断
3)アルゴリズム3 類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断
4)アルゴリズム4 切除可能な限局性消化管粘膜下腫瘍の治療方針
5)アルゴリズム5 限局性GISTの外科治療
6)アルゴリズム6 限局性GISTの術後治療
7)アルゴリズム7 GISTの薬物治療(一次治療)
8)アルゴリズム8 イマチニブ耐性GISTの治療
2.参考図表
1)参考図表1 GISTの遺伝子型
2)参考図表2 多発GISTの鑑別
□略語一覧
■画像診断領域
1.総論
1)粘膜下腫瘍の診断に有用な画像検査
2)薬物療法の効果判定に有用な画像診断
2.CQ
・画像1(BQ) GISTが疑われる患者の確定診断にEUS-FNAは有用か
・画像2(BQ) GIST患者の病期診断や再発診断にCT、MRIは有用か
・画像3(BQ) GIST患者の病期診断や再発診断にFDG-PET/CTは有用か
・画像4(CQ) GISTに対する薬物療法の治療効果判定にFDG-PET/CTの追加は有用か
■病理診断領域
1.総論
1)GISTの病理診断
2)GISTの再発リスク分類
3)GISTの遺伝子異常
2.CQ
・病理1(BQ) GISTの鑑別にはHE 染色での形態診断とKIT免疫染色は有用か
・病理2(BQ) GISTの鑑別診断にKIT以外の免疫染色は有用か
・病理3(BQ) 免疫染色でKIT陰性または弱陽性のGISTの診断に遺伝子解析は有用か
・病理4(BQ) GISTは臓器別に頻度や悪性度に違いはあるか
・病理5(BQ) GISTの悪性度評価に再発リスク分類は有用か
・病理6(BQ) GISTの悪性度(再発リスク)評価に生検は有用か
・病理7(BQ) GISTにおいてKIT免疫染色とc-kit遺伝子変異とは関係があるか
・病理8(BQ) イマチニブ一次耐性GISTにおける遺伝子解析は有用か
・病理9(BQ) c-kit・PDGFRA遺伝子以外の異常により発生するGISTはあるか
・病理10(BQ) GISTが多発する病態はあるか
■外科治療領域
1.総論
1)原発GISTに対する外科治療
2)転移・再発GISTに対する外科治療
2.CQ
・外科1(CQ) 2cm未満の胃GISTに対して、外科切除は推奨されるか
・外科2(CQ) 2cm以上、5cm 未満の粘膜下腫瘍に対して、外科切除は推奨されるか
・外科3(CQ) 5cm以上の粘膜下腫瘍に対して、腹腔鏡下手術は推奨されるか
・外科4(BQ) 外科切除が適応となるGISTに対して、臓器機能温存手術は推奨されるか
・外科5(CQ) 大きなGISTや、不完全切除の可能性が高いと判断されるGISTに対して、イマチニブによる術前補助療法は有用か
・外科6(CQ) 術前もしくは術中に腫瘍破裂が確認されたGISTに対して、イマチニブによる術後補助療法は有用か
・外科7(BQ) 完全切除後のGISTに対して、定期フォローは有用か
・外科8(CQ) 転移性GISTに対して、初回治療としての外科切除は有用か
・外科9(CQ) イマチニブ奏効中の転移・再発GISTに対して、外科切除は有用か
・外科10(CQ) 薬剤耐性の転移・再発GISTに対して、外科切除は有用か
■内科治療領域
1.総論
1)転移・再発GISTの治療
2)術後補助療法
2.CQ
・内科1(CQ) 標準用量開始が可能な転移・再発GISTに対して、イマチニブの標準用量開始と比べて低用量開始は有用か
・内科2(BQ) 転移・再発GISTに対して、チロシンキナーゼ阻害薬が有効性を示した場合、治療中断は有用か
・内科3(CQ) 転移・再発GISTに対して、イマチニブの血中濃度測定は有用か
・内科4(CQ) イマチニブ400 mg/日投与中に増悪した転移・再発GISTに対して、投与量増加は有用か
・内科5-1(BQ) 再発高リスクまたは腫瘍破裂GISTに対して、完全切除後3年間のイマチニブによる術後補助療法は有用か
・内科5-2(CQ) 再発高リスクまたは腫瘍破裂GISTに対して、完全切除後3年間を超えるイマチニブによる術後補助療法は有用か
・内科6(BQ) イマチニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、スニチニブは有用か
・内科7(BQ) スニチニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、レゴラフェニブは有用か
・内科8(CQ) レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、イマチニブまたはスニチニブの再投与は有用か
・内科9(CQ) 転移・再発GISTに対して、放射線治療は有用か
・内科10(CQ) GISTの肝転移に対して、外科切除以外の局所療法は有用か
・内科11(CQ) スニチニブおよびレゴラフェニブの標準用法用量の不耐GISTに対して、スニチニブおよびレゴラフェニブの投与スケジュールの変更は推奨されるか
・内科12(CQ) GIST治療におけるチロシンキナーゼ阻害薬の選択に遺伝子解析は有用か
■附録
1.検索式
1)画像診断領域
2)病理診断領域
3)外科治療領域
4)内科治療領域
2.各Questionの投票結果内訳
3.外部評価対応
1)外部評価対応
2)がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEII評価結果
索引
<発刊にあたって>
日本癌治療学会は、がんの予防、診断及び治療に関する研究の連絡、提携及び促進を図り、がんの医療の進歩普及に貢献し、もって学術文化の発展及び人類の福祉に寄与することを目的とし活動をしております。特に、尽力していますがん医療の均てん化のためには、エビデンスに基づくがん診療ガイドラインの作成と、新規のエビデンスに基づくリアルタイムな改訂は大変重要な任務と考えています。
GISTは、全消化管に発生する間葉系腫瘍で、疫学的には10万人に1〜2人と消化器がんの中で、希少がんに属する疾患です。一方で、その発生分子メカニズムの解明に伴う分子標的治療薬が開発・臨床応用されたことで、比較的早期から様々なエビデンスが構築されてきました。そういった背景を基に、希少がんとしてはいち早く2008年3月に日本癌治療学会、日本胃癌学会、GIST研究会によって『GIST診療ガイドライン』が作成・発行されました。さらに、その後、新規の薬剤開発とともに新たなエビデンスが発出されるにあわせて、2008年9月に第2版、2010年11月の第2版補訂版、2014年4月に第3版と改訂されてきました。第3版発行から、8年が経過し、その間に構築されたエビデンスを新たに取り入れ、他がんに倣う形で、Minds に沿った検討を行うこととし、改訂作業が進められ、ここに第4版として発刊の運びとなりました。
本ガイドライン改訂は、がん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」班(平成29〜令和元年度)、「学会連携を通じた希少癌の適切な医療の質向上と次世代を担う希少がん領域の人材育成に資する研究」班(令和2〜4年度)(主任研究者:小寺 泰弘)のサポートのもと実施されました。また、これまでのガイドラインは、日本癌治療学会、日本胃癌学会、GIST研究会の3学会合同での作成であったのに対し、本改訂は稀少腫瘍研究会(旧称:GIST研究会)の協力のもと、日本癌治療学会が中心となって作成を行いました。本ガイドラインは、最新の情報を網羅しかつ我が国の現状に即した内容となっており、GIST診療にご尽力されている医療従事者の方々の明日からの診療に必ずお役立ていただけるものと確信しております。
最後に、本ガイドラインの作成にご尽力いただきましたGIST診療ガイドライン改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一先生をはじめとして多くの関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2022年2月
一般社団法人日本癌治療学会理事長
土岐 祐一郎
<第4版 序>
この度、『GIST診療ガイドライン2022年4月改訂第4版』を刊行する運びとなりました。初めての『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』(Minds2014/2017)準拠だったこともあり、何もかも手探りでの改訂作業となりましたが、何度となく皆で議論を重ね、ようやく第4版刊行にこぎつけることができました。この場をお借りして、改訂にご尽力くださった全ての皆様に、心より御礼申し上げます。
GISTの診療は有効な分子標的薬開発を機に、大きな転換点を迎えました。その一方で、本邦と海外では医療状況が異なる部分があり、わが国の実臨床に即したガイドラインが求められていました。本ガイドライン初版は2008年3月に刊行され、その後、分子標的薬の適応拡大や新たな分子標的薬の開発に伴って改訂を重ね、第3版が2014年4月に刊行されました。
そして、3〜5年を目途に最新の知見に基づいた内容に改訂するという方針を踏まえて、新たな知見の反映および改善の必要性が指摘されていた箇所を変更すべく、2017年から第4版作成作業を開始しました。第4版はより信頼性の高い診療ガイドラインを目指して、すでに本邦診療ガイドライン作成手法の標準となりつつあったMinds2014/2017に準拠することとなりました。これに際し、改訂の中核を担う改訂ワーキンググループとは別に、独立したシステマティックレビューチーム(SR チーム)、さらに、GIST 診療の専門家4名からなる外部評価のための評価ワーキンググループが設置されました。
Minds2014/2017において、診療ガイドラインは「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています。このことから、第4版では患者の価値観や希望を取り入れ、医療従事者のみならず、患者・家族にとっても適切でわかりやすい情報提供を行うべく、委員には画像診断・病理診断・外科治療・内科治療の4領域の医師に加えて、多職種の専門家(統計・薬学・看護)、GIST患者・家族の代表者にも参加していただいています。
本ガイドラインにおけるClinical Question(CQ)は、極力明快なClosed Question形式とし、推奨決定会議の結果を開示することで、作成過程の透明性を確保しています。推奨決定に際してはGISTが稀少腫瘍であることを鑑みて、できるだけエビデンスは重視しつつも、益と害のバランスのみならず、患者の希望、医療経済的観点などを総合的に考慮しています。そのため、エビデンスが限定的であっても、専門家によるコンセンサスの下で「強い推奨」をつけたCQ もあります。
独特な手法によるシステマティックレビュー作業に不慣れなこともあり、エビデンスの評価・統合過程で多くの時間を費やしたため、当初予定よりも改訂完了が遅れましたが、本ガイドラインがGIST診療に関わる医療従事者と患者の共同意思決定および最適な医療提供のための道標となることを心から願っています。また、患者代表として本ガイドライン作成に携わり、発刊を間近に控えながら、GISTの病魔との戦いを終えられた故・荒木 美奈子委員のご冥福をお祈りするとともに、第4版改訂への貢献に対し敬意を表します。
2022年2月
がん診療ガイドライン作成・改訂委員会
GIST診療ガイドライン改訂ワーキンググループ
委員長 廣田 誠一
日本癌治療学会は、がんの予防、診断及び治療に関する研究の連絡、提携及び促進を図り、がんの医療の進歩普及に貢献し、もって学術文化の発展及び人類の福祉に寄与することを目的とし活動をしております。特に、尽力していますがん医療の均てん化のためには、エビデンスに基づくがん診療ガイドラインの作成と、新規のエビデンスに基づくリアルタイムな改訂は大変重要な任務と考えています。
GISTは、全消化管に発生する間葉系腫瘍で、疫学的には10万人に1〜2人と消化器がんの中で、希少がんに属する疾患です。一方で、その発生分子メカニズムの解明に伴う分子標的治療薬が開発・臨床応用されたことで、比較的早期から様々なエビデンスが構築されてきました。そういった背景を基に、希少がんとしてはいち早く2008年3月に日本癌治療学会、日本胃癌学会、GIST研究会によって『GIST診療ガイドライン』が作成・発行されました。さらに、その後、新規の薬剤開発とともに新たなエビデンスが発出されるにあわせて、2008年9月に第2版、2010年11月の第2版補訂版、2014年4月に第3版と改訂されてきました。第3版発行から、8年が経過し、その間に構築されたエビデンスを新たに取り入れ、他がんに倣う形で、Minds に沿った検討を行うこととし、改訂作業が進められ、ここに第4版として発刊の運びとなりました。
本ガイドライン改訂は、がん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」班(平成29〜令和元年度)、「学会連携を通じた希少癌の適切な医療の質向上と次世代を担う希少がん領域の人材育成に資する研究」班(令和2〜4年度)(主任研究者:小寺 泰弘)のサポートのもと実施されました。また、これまでのガイドラインは、日本癌治療学会、日本胃癌学会、GIST研究会の3学会合同での作成であったのに対し、本改訂は稀少腫瘍研究会(旧称:GIST研究会)の協力のもと、日本癌治療学会が中心となって作成を行いました。本ガイドラインは、最新の情報を網羅しかつ我が国の現状に即した内容となっており、GIST診療にご尽力されている医療従事者の方々の明日からの診療に必ずお役立ていただけるものと確信しております。
最後に、本ガイドラインの作成にご尽力いただきましたGIST診療ガイドライン改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一先生をはじめとして多くの関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2022年2月
一般社団法人日本癌治療学会理事長
土岐 祐一郎
<第4版 序>
この度、『GIST診療ガイドライン2022年4月改訂第4版』を刊行する運びとなりました。初めての『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』(Minds2014/2017)準拠だったこともあり、何もかも手探りでの改訂作業となりましたが、何度となく皆で議論を重ね、ようやく第4版刊行にこぎつけることができました。この場をお借りして、改訂にご尽力くださった全ての皆様に、心より御礼申し上げます。
GISTの診療は有効な分子標的薬開発を機に、大きな転換点を迎えました。その一方で、本邦と海外では医療状況が異なる部分があり、わが国の実臨床に即したガイドラインが求められていました。本ガイドライン初版は2008年3月に刊行され、その後、分子標的薬の適応拡大や新たな分子標的薬の開発に伴って改訂を重ね、第3版が2014年4月に刊行されました。
そして、3〜5年を目途に最新の知見に基づいた内容に改訂するという方針を踏まえて、新たな知見の反映および改善の必要性が指摘されていた箇所を変更すべく、2017年から第4版作成作業を開始しました。第4版はより信頼性の高い診療ガイドラインを目指して、すでに本邦診療ガイドライン作成手法の標準となりつつあったMinds2014/2017に準拠することとなりました。これに際し、改訂の中核を担う改訂ワーキンググループとは別に、独立したシステマティックレビューチーム(SR チーム)、さらに、GIST 診療の専門家4名からなる外部評価のための評価ワーキンググループが設置されました。
Minds2014/2017において、診療ガイドラインは「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています。このことから、第4版では患者の価値観や希望を取り入れ、医療従事者のみならず、患者・家族にとっても適切でわかりやすい情報提供を行うべく、委員には画像診断・病理診断・外科治療・内科治療の4領域の医師に加えて、多職種の専門家(統計・薬学・看護)、GIST患者・家族の代表者にも参加していただいています。
本ガイドラインにおけるClinical Question(CQ)は、極力明快なClosed Question形式とし、推奨決定会議の結果を開示することで、作成過程の透明性を確保しています。推奨決定に際してはGISTが稀少腫瘍であることを鑑みて、できるだけエビデンスは重視しつつも、益と害のバランスのみならず、患者の希望、医療経済的観点などを総合的に考慮しています。そのため、エビデンスが限定的であっても、専門家によるコンセンサスの下で「強い推奨」をつけたCQ もあります。
独特な手法によるシステマティックレビュー作業に不慣れなこともあり、エビデンスの評価・統合過程で多くの時間を費やしたため、当初予定よりも改訂完了が遅れましたが、本ガイドラインがGIST診療に関わる医療従事者と患者の共同意思決定および最適な医療提供のための道標となることを心から願っています。また、患者代表として本ガイドライン作成に携わり、発刊を間近に控えながら、GISTの病魔との戦いを終えられた故・荒木 美奈子委員のご冥福をお祈りするとともに、第4版改訂への貢献に対し敬意を表します。
2022年2月
がん診療ガイドライン作成・改訂委員会
GIST診療ガイドライン改訂ワーキンググループ
委員長 廣田 誠一