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遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2024年版
日進月歩の診断モダリティーに対応した遺伝性大腸癌診療の決定版
編 集 | 大腸癌研究会 |
---|---|
定 価 | 2,970円 (2,700円+税) |
発行日 | 2024/07/20 |
ISBN | 978-4-307-20475-0 |
B5判・184頁・図数:27枚・カラー図数:9枚
在庫状況 | あり |
---|
遺伝性大腸癌診療に有益な情報を提供してきた本ガイドライン。2024年版では診療のアルゴリズムを記載しCQ の位置付けを明確化。家族性大腸腺腫症におけるIntensive downstaging polypectomyやデスモイド腫瘍の新分類、リンチ症候群における免疫チェックポイント阻害剤のコンパニオン診断、CGPからの診断の流れなど、日進月歩の診断モダリティーに対応したガイドラインとなった。
「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024 年版」主な改訂点
総論
1.目的
2.使用法
3.作成の原則
4.本診療ガイドラインのトピック
5.本診療ガイドラインがカバーする視点
6.想定される利用者、利用施設
7.改訂の経緯と既存の診療ガイドラインとの関係
8.本診療ガイドラインがカバーする範囲(対象者)
9.重要臨床課題の抽出
10.エビデンスの収集(文献検索)
11.一次スクリーニング
12.二次スクリーニング
13.エビデンスの評価
14.推奨の強さ
15.解説文の記載
16.各論の記載
17.付録
18.公開
19.資金
20.利益相反
21.ガイドライン委員会
各論
I.遺伝性大腸癌の概要(Outlines of Hereditary Colorectal Cancer)
I-1 基本的事項
I-1-1 定義
I-1-2 分類
I-1-3 疫学
I-1-4 腫瘍発症リスク
I-1-5 発がんのメカニズム
I-2 診断
I-2-1 診断の意義
I-2-2 診断の流れ
I-2-3 がんゲノムプロファイリング検査における生殖細胞系列所見(二次的所見)
I-2-4 遺伝学的検査結果の解釈
I-3 遺伝カウンセリング
I-3-1 定義
I-3-2 リスクコミュニケーションと意思決定支援
I-3-3 心理社会的問題
I-3-4 手法
I-3-5 情報収集内容
I-3-6 情報提供内容
I-3-7 導入のタイミング
I-3-8 未成年への対応
I-3-9 遺伝学的検査・診断に関するガイドラインおよび指針
I-3-10 遺伝性腫瘍診療における遺伝カウンセリング体制
各論I 文献
II.家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)
II-1 概要
II-1-1 臨床的特徴
II-1-2 原因遺伝子と遺伝形式
II-1-3 関連腫瘍・随伴病変
II-1-4 疫学的特徴
II-2 診断
II-2-1 診断の流れ
II-2-2 鑑別を要する疾患・病態
II-3 サーベイランスと治療
II-3-1 大腸腺腫・癌
II-3-1-1 特徴・分類
II-3-1-2 サーベイランスと発がん予防
II-3-1-2-1 サーベイランス
II-3-1-2-2 化学予防
II-3-1-3 治療
II-3-1-3-1 内視鏡治療
II-3-1-3-2 外科治療
II-3-1-4 大腸術後下部消化管サーベイランス
II-3-2 胃底腺ポリポーシス・胃腺腫
II-3-2-1 特徴・分類
II-3-2-2 サーベイランス
II-3-2-3 治療
II-3-3 十二指腸腺腫・癌
II-3-3-1 特徴・分類
II-3-3-2 サーベイランス
II-3-3-3 治療
II-3-4 デスモイド腫瘍
II-3-4-1 特徴・分類
II-3-4-2 サーベイランス
II-3-4-3 治療
II-3-4-4 術後サーベイランス
II-3-5 その他の随伴病変
II-4 家族(血縁者)・小児への対応
II-4-1 家族(血縁者)への対応
II-4-2 小児への対応
II-4-2-1 小児期のFAP
II-4-2-2 小児慢性特定疾病事業と医療費助成
各論II 文献
Clinical Questions
CQ1:大腸腺腫性ポリポーシス患者に対して遺伝学的検査を行うべきか?
CQ2:大腸切除術を受けていない大腸癌未発症のFAP 患者に対する化学予防は効果があるか?
CQ3:FAP 患者の乳頭部を含む十二指腸腺腫に対して内視鏡治療は有用か?
CQ4:FAP 患者のデスモイド腫瘍に対してサーベイランスは有用か?
CQ5:FAP 患者の甲状腺癌に対してサーベイランスは有用か?
III.リンチ症候群(Lynch syndrome)
III-1 概要
III-1-1 臨床的特徴
III-1-2 原因遺伝子とがん化のメカニズム
III-1-2-1 原因遺伝子と遺伝形式
III-1-2-2 がん化のメカニズム
III-1-3 関連腫瘍
III-1-4 疫学的特徴
III-2 診断
III-2-1 診断の流れ
III-2-1-1 ユニバーサルスクリーニング
III-2-1-2 ミスマッチ修復(MMR)異常を示す大腸癌に特徴的な病理組織学的所見
III-2-1-3 リンチ症候群のスクリーニングに用いられる検査
III-2-1-3-1 MSI検査
III-2-1-3-2 MMR-IHC検査
III-2-1-3-3 BRAF V600Eバリアント検査
III-2-1-3-4 MLH1 プロモーターメチル化検査
III-2-1-4 確定診断のための検査
III-2-1-4-1 MMR 遺伝子などの遺伝学的検査
III-2-1-4-2 リンチ症候群診断に関わる検査における患者同意
III-2-2 鑑別を要する疾患・病態
III-2-2-1 MLH1プロモーター異常メチル化を伴う散発性MSI-High大腸癌
III-2-2-2 ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス
(polymerase proofreading-associated polyposis:PPAP)
III-2-2-3 Lynch-like syndrome
III-2-2-4 先天性ミスマッチ修復欠損(Constitutional mismatch repairdeficiency:CMMRD)症候群
III-2-2-5 家族性大腸癌タイプ?(Familial colorectal cancer type ?:FCCTX)
III-3 サーベイランスと治療
III-3-1 大腸腺腫・癌
III-3-1-1 特徴・分類
III-3-1-2 サーベイランスと発がん予防
III-3-1-2-1 大腸内視鏡検査
III-3-1-2-2 生活習慣の改善
III-3-1-2-3 化学予防
III-3-1-3 治療
III-3-1-3-1 手術
III-3-1-3-2 術後補助療法
III-3-1-3-3 切除不能進行・再発癌に対する薬物療法
III-3-2 婦人科腫瘍
III-3-2-1 特徴・分類
III-3-2-2 サーベイランス
III-3-2-3 治療
III-3-2-3-1 手術療法
III-3-2-3-2 化学予防
III-3-2-4 術後サーベイランス
III-3-3 泌尿器科腫瘍
III-3-3-1 特徴・分類
III-3-3-2 サーベイランス
III-3-3-3 治療
III-3-4 上部消化管腫瘍
III-3-4-1 特徴・分類
III-3-4-2 サーベイランス
III-3-4-3 治療
III-3-4-3-1 内視鏡・手術治療
III-3-4-3-2 薬物治療
III-3-5 その他の関連腫瘍
III-4 リンチ症候群であることが未確定の大腸癌患者への対応
III-4-1 検査未施行・VUS例
III-5 家族(血縁者)への対応
III-5-1 遺伝学的診断例
III-5-2 遺伝学的未確定例
各論III 文献
Clinical Questions
CQ6:リンチ症候群のスクリーニングを目的とした大腸癌に対してDNA ミスマッチ修復機能欠損を調べるユニバーサルスクリーニング(UTS)を行うべきか?
CQ7: リンチ症候群患者の大腸内視鏡サーベイランスは原因遺伝子により個別化すべきか?
CQ8: リンチ症候群患者に対して化学予防は経過観察と比較して効果があるか?
CQ9: リンチ症候群患者に対してリスク低減手術(子宮全摘出術,両側付属器摘出術)は有用か?
CQ10: リンチ症候群患者に対してHelicobacter pylori感染のスクリーニング検査は有用か?
遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024 年版の外部評価
付録
I.文献検索式
II.FAPと鑑別を要する稀な腺腫性ポリポーシス
III.家系図の記載法
IV.ゲノムバリアントの記載法
V.遺伝性大腸癌に関連する情報(2024年1月現在)
付録 文献
索引
総論
1.目的
2.使用法
3.作成の原則
4.本診療ガイドラインのトピック
5.本診療ガイドラインがカバーする視点
6.想定される利用者、利用施設
7.改訂の経緯と既存の診療ガイドラインとの関係
8.本診療ガイドラインがカバーする範囲(対象者)
9.重要臨床課題の抽出
10.エビデンスの収集(文献検索)
11.一次スクリーニング
12.二次スクリーニング
13.エビデンスの評価
14.推奨の強さ
15.解説文の記載
16.各論の記載
17.付録
18.公開
19.資金
20.利益相反
21.ガイドライン委員会
各論
I.遺伝性大腸癌の概要(Outlines of Hereditary Colorectal Cancer)
I-1 基本的事項
I-1-1 定義
I-1-2 分類
I-1-3 疫学
I-1-4 腫瘍発症リスク
I-1-5 発がんのメカニズム
I-2 診断
I-2-1 診断の意義
I-2-2 診断の流れ
I-2-3 がんゲノムプロファイリング検査における生殖細胞系列所見(二次的所見)
I-2-4 遺伝学的検査結果の解釈
I-3 遺伝カウンセリング
I-3-1 定義
I-3-2 リスクコミュニケーションと意思決定支援
I-3-3 心理社会的問題
I-3-4 手法
I-3-5 情報収集内容
I-3-6 情報提供内容
I-3-7 導入のタイミング
I-3-8 未成年への対応
I-3-9 遺伝学的検査・診断に関するガイドラインおよび指針
I-3-10 遺伝性腫瘍診療における遺伝カウンセリング体制
各論I 文献
II.家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)
II-1 概要
II-1-1 臨床的特徴
II-1-2 原因遺伝子と遺伝形式
II-1-3 関連腫瘍・随伴病変
II-1-4 疫学的特徴
II-2 診断
II-2-1 診断の流れ
II-2-2 鑑別を要する疾患・病態
II-3 サーベイランスと治療
II-3-1 大腸腺腫・癌
II-3-1-1 特徴・分類
II-3-1-2 サーベイランスと発がん予防
II-3-1-2-1 サーベイランス
II-3-1-2-2 化学予防
II-3-1-3 治療
II-3-1-3-1 内視鏡治療
II-3-1-3-2 外科治療
II-3-1-4 大腸術後下部消化管サーベイランス
II-3-2 胃底腺ポリポーシス・胃腺腫
II-3-2-1 特徴・分類
II-3-2-2 サーベイランス
II-3-2-3 治療
II-3-3 十二指腸腺腫・癌
II-3-3-1 特徴・分類
II-3-3-2 サーベイランス
II-3-3-3 治療
II-3-4 デスモイド腫瘍
II-3-4-1 特徴・分類
II-3-4-2 サーベイランス
II-3-4-3 治療
II-3-4-4 術後サーベイランス
II-3-5 その他の随伴病変
II-4 家族(血縁者)・小児への対応
II-4-1 家族(血縁者)への対応
II-4-2 小児への対応
II-4-2-1 小児期のFAP
II-4-2-2 小児慢性特定疾病事業と医療費助成
各論II 文献
Clinical Questions
CQ1:大腸腺腫性ポリポーシス患者に対して遺伝学的検査を行うべきか?
CQ2:大腸切除術を受けていない大腸癌未発症のFAP 患者に対する化学予防は効果があるか?
CQ3:FAP 患者の乳頭部を含む十二指腸腺腫に対して内視鏡治療は有用か?
CQ4:FAP 患者のデスモイド腫瘍に対してサーベイランスは有用か?
CQ5:FAP 患者の甲状腺癌に対してサーベイランスは有用か?
III.リンチ症候群(Lynch syndrome)
III-1 概要
III-1-1 臨床的特徴
III-1-2 原因遺伝子とがん化のメカニズム
III-1-2-1 原因遺伝子と遺伝形式
III-1-2-2 がん化のメカニズム
III-1-3 関連腫瘍
III-1-4 疫学的特徴
III-2 診断
III-2-1 診断の流れ
III-2-1-1 ユニバーサルスクリーニング
III-2-1-2 ミスマッチ修復(MMR)異常を示す大腸癌に特徴的な病理組織学的所見
III-2-1-3 リンチ症候群のスクリーニングに用いられる検査
III-2-1-3-1 MSI検査
III-2-1-3-2 MMR-IHC検査
III-2-1-3-3 BRAF V600Eバリアント検査
III-2-1-3-4 MLH1 プロモーターメチル化検査
III-2-1-4 確定診断のための検査
III-2-1-4-1 MMR 遺伝子などの遺伝学的検査
III-2-1-4-2 リンチ症候群診断に関わる検査における患者同意
III-2-2 鑑別を要する疾患・病態
III-2-2-1 MLH1プロモーター異常メチル化を伴う散発性MSI-High大腸癌
III-2-2-2 ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス
(polymerase proofreading-associated polyposis:PPAP)
III-2-2-3 Lynch-like syndrome
III-2-2-4 先天性ミスマッチ修復欠損(Constitutional mismatch repairdeficiency:CMMRD)症候群
III-2-2-5 家族性大腸癌タイプ?(Familial colorectal cancer type ?:FCCTX)
III-3 サーベイランスと治療
III-3-1 大腸腺腫・癌
III-3-1-1 特徴・分類
III-3-1-2 サーベイランスと発がん予防
III-3-1-2-1 大腸内視鏡検査
III-3-1-2-2 生活習慣の改善
III-3-1-2-3 化学予防
III-3-1-3 治療
III-3-1-3-1 手術
III-3-1-3-2 術後補助療法
III-3-1-3-3 切除不能進行・再発癌に対する薬物療法
III-3-2 婦人科腫瘍
III-3-2-1 特徴・分類
III-3-2-2 サーベイランス
III-3-2-3 治療
III-3-2-3-1 手術療法
III-3-2-3-2 化学予防
III-3-2-4 術後サーベイランス
III-3-3 泌尿器科腫瘍
III-3-3-1 特徴・分類
III-3-3-2 サーベイランス
III-3-3-3 治療
III-3-4 上部消化管腫瘍
III-3-4-1 特徴・分類
III-3-4-2 サーベイランス
III-3-4-3 治療
III-3-4-3-1 内視鏡・手術治療
III-3-4-3-2 薬物治療
III-3-5 その他の関連腫瘍
III-4 リンチ症候群であることが未確定の大腸癌患者への対応
III-4-1 検査未施行・VUS例
III-5 家族(血縁者)への対応
III-5-1 遺伝学的診断例
III-5-2 遺伝学的未確定例
各論III 文献
Clinical Questions
CQ6:リンチ症候群のスクリーニングを目的とした大腸癌に対してDNA ミスマッチ修復機能欠損を調べるユニバーサルスクリーニング(UTS)を行うべきか?
CQ7: リンチ症候群患者の大腸内視鏡サーベイランスは原因遺伝子により個別化すべきか?
CQ8: リンチ症候群患者に対して化学予防は経過観察と比較して効果があるか?
CQ9: リンチ症候群患者に対してリスク低減手術(子宮全摘出術,両側付属器摘出術)は有用か?
CQ10: リンチ症候群患者に対してHelicobacter pylori感染のスクリーニング検査は有用か?
遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024 年版の外部評価
付録
I.文献検索式
II.FAPと鑑別を要する稀な腺腫性ポリポーシス
III.家系図の記載法
IV.ゲノムバリアントの記載法
V.遺伝性大腸癌に関連する情報(2024年1月現在)
付録 文献
索引
はじめに
この度「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024年版」を刊行しました。
大腸癌研究会ではこれまでに「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版、2016年版、2020年版」を刊行してきました、本診療ガイドラインは家族性大腸腺腫症やリンチ症候群を適切に理解するためだけでなく、日常診療においても大いに役に立ってきました。ガイドライン作成に当たっては、日本における臨床のエビデンスを創出するために、家族性大腸癌委員会(現、遺伝性大腸癌委員会)で幾つかの多施設共同研究を行い、それらを英語論文として発表し、その成果を本ガイドラインに盛り込んできました。
2024年版の構成の大枠は、2020年版と同様に総論と各論に分かれ、各論はI.遺伝性大腸癌の概要、II.家族性大腸腺腫症、III.リンチ症候群、となっていますが、総論ではClinical Question(CQ)を含めた診断および診療のアルゴリズムを記載することで、各論のCQの位置付けを明確化しました。各論Iの遺伝性大腸癌の概要では、遺伝性腫瘍に対するマルチ遺伝子パネル検査の普及と技術的進歩に伴って、遺伝性大腸癌診断の主体が臨床情報や病理組織学的評価から遺伝学的検査にシフトしつつある現状を反映させ、腺腫性ポリポーシスや非ポリポーシスなどの様々な鑑別疾患の病態について追記しました。各論IIの家族性大腸腺腫症では、我が国で2022年に保険収載されたIntensive downstaging polypectomyや、本邦で提唱されたデスモイド腫瘍の新分類の記載を加えました。また、各論IIIのリンチ症候群では、免疫チェックポイント阻害剤のコンパニオン診断、あるいは包括的がんゲノムプロファイリング検査の結果からのリンチ症候群診断の流れを追記しました。日進月歩の診断モダリティーに、ガイドラインの記載がようやく追いつきました。リンチ症候群関連腫瘍の累積発生率については、本邦のデータも用いました。
CQは家族性大腸腺腫症、リンチ症候群でそれぞれ5項目となり、2020年版と比べ半減しましたが、今回の改定でCQから外れた内容は、既に確立された診療であるか、文献検索を行っても十分なデータが得られないものです。これらについては、全て各論の本文に移動しました。
本ガイドラインは、公聴会、パブリックコメント、家族性大腸腺腫症とリンチ症候群の2 つの患者家族会、アドバイザー、そしてガイドライン評価委員会などから、多くの意見を取り入れ作成されました。外部評価の詳細は省略いたしましたが、評価委員会からはガイドライン全体の質を平均6.5 点(最高7 点、最低1点)と高評価されました。非常に質の高いガイドラインが作成されたと思います。遺伝性大腸癌患者のより適切な診療と治療に役立つものと確信しています。
2024年5月7日
大腸癌研究会会長
味岡 洋一
この度「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024年版」を刊行しました。
大腸癌研究会ではこれまでに「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版、2016年版、2020年版」を刊行してきました、本診療ガイドラインは家族性大腸腺腫症やリンチ症候群を適切に理解するためだけでなく、日常診療においても大いに役に立ってきました。ガイドライン作成に当たっては、日本における臨床のエビデンスを創出するために、家族性大腸癌委員会(現、遺伝性大腸癌委員会)で幾つかの多施設共同研究を行い、それらを英語論文として発表し、その成果を本ガイドラインに盛り込んできました。
2024年版の構成の大枠は、2020年版と同様に総論と各論に分かれ、各論はI.遺伝性大腸癌の概要、II.家族性大腸腺腫症、III.リンチ症候群、となっていますが、総論ではClinical Question(CQ)を含めた診断および診療のアルゴリズムを記載することで、各論のCQの位置付けを明確化しました。各論Iの遺伝性大腸癌の概要では、遺伝性腫瘍に対するマルチ遺伝子パネル検査の普及と技術的進歩に伴って、遺伝性大腸癌診断の主体が臨床情報や病理組織学的評価から遺伝学的検査にシフトしつつある現状を反映させ、腺腫性ポリポーシスや非ポリポーシスなどの様々な鑑別疾患の病態について追記しました。各論IIの家族性大腸腺腫症では、我が国で2022年に保険収載されたIntensive downstaging polypectomyや、本邦で提唱されたデスモイド腫瘍の新分類の記載を加えました。また、各論IIIのリンチ症候群では、免疫チェックポイント阻害剤のコンパニオン診断、あるいは包括的がんゲノムプロファイリング検査の結果からのリンチ症候群診断の流れを追記しました。日進月歩の診断モダリティーに、ガイドラインの記載がようやく追いつきました。リンチ症候群関連腫瘍の累積発生率については、本邦のデータも用いました。
CQは家族性大腸腺腫症、リンチ症候群でそれぞれ5項目となり、2020年版と比べ半減しましたが、今回の改定でCQから外れた内容は、既に確立された診療であるか、文献検索を行っても十分なデータが得られないものです。これらについては、全て各論の本文に移動しました。
本ガイドラインは、公聴会、パブリックコメント、家族性大腸腺腫症とリンチ症候群の2 つの患者家族会、アドバイザー、そしてガイドライン評価委員会などから、多くの意見を取り入れ作成されました。外部評価の詳細は省略いたしましたが、評価委員会からはガイドライン全体の質を平均6.5 点(最高7 点、最低1点)と高評価されました。非常に質の高いガイドラインが作成されたと思います。遺伝性大腸癌患者のより適切な診療と治療に役立つものと確信しています。
2024年5月7日
大腸癌研究会会長
味岡 洋一
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