中皮腫瘍取扱い規約 第2版

最新TNM分類、WHO分類に準拠/質・量ともにボリュームアップ!

編 集 日本石綿・中皮腫学会 / 日本肺癌学会
定 価 4,950円
(4,500円+税)
発行日 2025/02/20
ISBN 978-4-307-20480-4

B5判・184頁・図数:39枚・カラー図数:98枚

在庫状況 あり

TNM分類第9版を見据え、画像診断、胸腔鏡所見、手術記載などで記載を反映。細胞診・病理診断はWHO分類第5版に従い整理され、良質画像が多数供覧される。臨床試験や免疫チェックポイント阻害薬の適応拡大など、各種中皮腫のレビューもアップデートされ、診断・治療に関わるすべての医療従事者のために丁寧に仕上げられた必携の一冊。
1.TNM分類
 I.はじめに
 II.胸膜中皮腫の病期分類(AJCC?TNM第9版)
  1.TNM分類
  2.病期分類
  3.胸膜厚pleural thicknessの測定方法

2.画像診断
 I.画像診断指針
  1.単純X線撮影
  2.CT
  3.MRI
  4.FDG-PET/CT
 II.記載の実際
  1.cT因子
  2.cN因子
 III.典型例の画像所見
  1.単純X線撮影
  2.CT
  3.MRI
  4.FDG-PET/CT
 IV.非典型例の画像所見
  1.胸水貯留のみの症例
  2.早期例
  3.単発腫瘤例(限局性胸膜中皮腫)
  4.縦隔腫瘍類似例
  5.胸壁腫瘍類似例
  6.高度石灰化・骨化例
  7.気胸発症例
 V.鑑別診断
  1.偽中皮腫性肺癌
  2.石綿関連良性胸膜病変
 VI.胸膜以外の中皮腫の画像
  1.腹膜中皮腫
  2.心膜中皮腫

3.組織採取法と胸腔鏡所見
 I.胸腔鏡による観察方法と組織採取法
  1.胸腔鏡の適応
  2.観察方法と組織採取法
 II.胸腔鏡所見
  1.正常胸膜
  2.胸膜中皮腫
  3.中皮腫と鑑別を要する疾患

4.手術記載
 I.胸膜中皮腫の手術記載法
  1.対象と定義
  2.手術
  3.原発巣
  4.リンパ節転移
  5.切除断端および合併切除臓器における癌浸潤の有無の判定
  6.切除術の根治性(切除後の遺残腫瘍)の評価
  7.胸膜プラーク
  8.手術関連死亡
  9.生存解析
  10.胸膜中皮腫の進行程度
  11.組織学的分類

5.細胞診
 I.はじめに
 II.検査方法
  1.検体採取
  2.性状確認・集細胞
  3.塗抹標本作製
  4.検体保存
  5.各種染色
  6.細胞転写法
  7.セルブロック
 III.成績の報告と細胞判定基準
  1.報告様式
  2.中皮腫細胞診断の判定基準

6.病理診断
 I.中皮腫検体の病理診断報告様式
 II.組織分類の方針
 III.検体の取り扱い・切り出し方法
 IV.組織分類
  1.胸膜・心膜腫瘍の分類
  2.腹膜腫瘍の分類
  3.傍精巣中皮腫瘍の分類
 V.胸膜腫瘍
  1.びまん性中皮腫
  2.限局性中皮腫
  3.前浸潤性中皮腫
  4.高分化乳頭状中皮腫瘍
  5.アデノマトイド腫瘍
 VI.腹膜腫瘍
  1.中皮腫瘍
  2.中皮腫と鑑別を要する病変

7.modified RECIST v1.1を用いた胸膜中皮腫の治療効果判定の手引き
 I.はじめに
 II.治療効果判定規準
  1.ベースラインにおける腫瘍の測定可能性
  2.腫瘍縮小効果の判定

8.胸膜中皮腫
 I.胸膜中皮腫の疫学と病因
  1.疫学
  2.発症リスク
  3.胸膜中皮腫における遺伝子異常
 II.胸膜中皮腫の診断
  1.症状
  2.腫瘍マーカー(血中、胸水)
  3.腫瘍の進展
 III.胸膜中皮腫の治療
  1.内科治療
  2.外科治療
  3.放射線治療

9.その他の中皮腫
 I.はじめに
 II.腹膜中皮腫
  1.概要および疫学
  2.発症要因
  3.臨床的特徴と診断
  4.病期分類および臨床病型分類
  5.肉眼所見と組織型
  6.治療
 III.心膜中皮腫
  1.概要および疫学
  2.発症要因
  3.臨床的特徴と診断
  4.病期分類および臨床病型分類
  5.肉眼所見と組織型
  6.治療
 IV.精巣鞘膜中皮腫
  1.概要および疫学
  2.発症要因
  3.臨床的特徴と診断
  4.病期分類および臨床病型分類
  5.肉眼所見と組織型
  6.治療

10.石綿ばく露評価
 I.石綿ばく露の概要
  1.石綿
  2.石綿ばく露の機会
  3.中皮腫での石綿ばく露
  4.石綿小体
  5.含鉄小体
  6.組織切片中の石綿小体
 II.石綿ばく露の評価
  1.BALFによる評価
  2.肺組織切片による評価
  3.肺組織の評価

11.労働者災害補償保険法、石綿健康被害救済法、および関連する制度等
 I.はじめに
 II.労災保険法による給付
 III.石綿救済法による救済給付
 IV.その他の関連制度
  1.建設アスベスト給付金制度
  2.石綿工場の元労働者やその遺族との和解による損害賠償金

索引
第2版の序

 中皮腫瘍取扱い規約の初版は2018年11月30日に発刊され、それから6年が過ぎました。その間、中皮腫の治療法が大きく変わってきました。薬物療法では、免疫チェックポイント阻害薬の有効性が確認されファーストラインで使用されるようになりました。現在、ニボルマブは胸膜中皮腫のみならず、腹膜、心膜、精巣鞘膜中皮腫においても保険診療で使用が可能となっています。外科療法では胸膜肺全摘術(EPP)に比べ、胸膜切除/肺?皮術(P/D)が多く施行されるようになってきました。こうしたこともあり、胸膜中皮腫患者の予後が確実に良くなってきたことが報告されています。診断については、補助的検査の併用により小さな生検標本や細胞診でも中皮腫の診断が可能になりました。さらに、病期分類については2024年にIASLCによりTNM第9版に向けた改訂が提案され、特にT因子の大幅な改訂が提案されました。2024年12月19日に胸膜中皮腫に関するAJCC-TNM第9版が発行され、それによると2025年1月1日より新しいTNM分類を使用することが求められています。
 このような背景から、中皮腫瘍取扱い規約の改訂の必要性が強く求められました。初版は3団体の共同によって編集されましたが、そのうちの2団体、石綿・中皮腫研究会と日本中皮腫研究機構が統合し、2019年2月22日に特定非営利活動法人日本石綿・中皮腫学会Japan Asbestos Mesothelioma Interest Group(JAMIG)が発足しました。第2版では、この新たに設立された日本石綿・中皮腫学会と日本肺癌学会が共同で編集を行い、3つの関連団体(日本臨床細胞学会、日本産科婦人科学会、中皮腫細胞診研究会)から後援をいただきました。
 2022年6月14日に第2版の作成準備会を開催して本格的に作成に着手しました。その後の作成において、初版の総責任者であった廣島健三博士にも多大なご協力をいただきました。さらに、章間の委員による相互レビューを行い、表記などについても一貫性をもたせました。図表や全体のレイアウトも読者にとってより分かりやすいように工夫を重ねました。
 重要な用語変更に関しては「上皮型、肉腫型、二相型」を改め「上皮様、肉腫様、二相性」で統一したことが挙げられます。これは、WHOの中皮腫の組織分類として「epithelioid、sarcomatoid、biphasic」がすでに用いられており、英語の用語を忠実に訳すことが望ましいと考えたからです。「上皮様、肉腫様、二相性」の用語が本邦において普及することを強く期待しています。
 「中皮腫瘍取扱い規約 第2版」が初版同様に全国の病院に配備され、中皮腫の日常診療に活用されることを期待します。

2025年1月

特定非営利活動法人日本石綿・中皮腫学会 理事長
愛知県がんセンター研究所 副所長
関戸 好孝