肺癌診療ガイドライン -悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む- 2024年版 第8版

肺癌・胸膜中皮腫・胸腺腫瘍の診療ガイドラインを最速でお届け!

編 集 日本肺癌学会
定 価 5,940円
(5,400円+税)
発行日 2024/10/18
ISBN 978-4-307-20486-6

B5判・624頁・カラー図数:35枚

在庫状況 あり

2024年版の改訂ポイントは、非小細胞肺癌の周術期領域で新たな治療レジメン(術前術後療法)の追加/進行期領域でEGFR遺伝子エクソン挿入変異に対する新たな標的療法の追加/小細胞癌の進展型領域で全身状態別に治療法の推奨を明確化、再発領域でT細胞誘導性作用を有する二重特異性抗体の記載追加/胸膜中皮腫で外科療法の記載整理/胸腺腫瘍で進行・再発胸腺癌における免疫チェックポイント阻害薬の新たなエビデンスの追加、等である。
□本ガイドラインについて
□2023年版(Web版)からの主な変更点一覧

第1部 肺癌診療ガイドライン2024年版
■肺癌の分類
I.肺癌の診断
 総論.肺癌の診断
 1.検出方法
 2.質的画像診断
 3.確定診断
 4.病理・細胞診断
 5.病期診断
 6.分子診断
II.非小細胞肺癌(NSCLC)
 1.外科治療
 2.光線力学的治療法
 3.放射線治療基本的事項
 4.周術期
 5.I-II期非小細胞肺癌の放射線療法
 6.III期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌
 7.IV期非小細胞肺癌
III.小細胞肺癌(SCLC)
 総論.小細胞肺癌の治療方針
 1.限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)
 2.進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)
 3.予防的全脳照射(PCI)
 4.再発小細胞肺癌
IV.転移など各病態に対する治療
 1.骨転移
 2.脳転移
 3.胸部病変に対する緩和的放射線治療
 4.癌性胸膜炎
 5.癌性心膜炎
 6.Oligometastatic disease(オリゴ転移)
V.緩和ケア
 1.緩和ケア

第2部 悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2024年版
■総論.悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2024年版を利用するにあたり
■胸膜中皮腫の分類
■樹形図
I.診断
 1.画像診断
 2.確定診断
 3.病理診断
 4.病期診断
II.治療
 1.外科治療
 2.放射線治療
 3.内科治療
 4.緩和治療

第3部 胸腺腫瘍診療ガイドライン2024年版
■総論.胸腺上皮性腫瘍
■胸腺上皮性腫瘍の病期分類
■樹形図
I.診断
 1.臨床症状と血液検査
 2.存在診断と画像的鑑別診断
 3.確定診断
 4.病期診断
II.治療
 1.外科治療
 2.放射線治療
 3.内科治療
 4.治療後の経過観察
 5.再発腫瘍の治療
 6.偶発的に発見された小さな前縦隔病変への対応
III.病理診断
 1.病理診断

□索引
2024年版 序

 肺癌診療ガイドライン−悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む−2024年版の発刊にあたりご挨拶申し上げます。
 
 我が国の肺癌診療ガイドラインは、厚生科学研究費の助成を受け、「EBMの手法による肺癌の診療ガイドライン策定に関する研究班」によって、その初版が「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン」として2003年に出版されました。日本肺癌学会では同年にガイドライン検討委員会を組織し、その後のガイドライン改正を本学会で行うこととし、改訂第2版を2005年に発刊いたしました。また、2016年版から悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン、胸腺腫瘍診療ガイドラインを加えました。これらの領域における医学の進歩は目覚ましく、研究成果も毎年数多く公表されます。そのため、本ガイドラインでは重要なエビデンスを確実にかつ迅速に臨床の場に生かせることを目標として、2011年以降は毎年Web上で公開し、隔年で書籍を発行していることが大きな特徴であり、その努力は外部評価でも高く評価されてきたところです。

 今回も複数の重要な改訂が行われました。樹形図の変更を要する主な改正点としては、非小細胞肺癌の周術期領域では新たな治療レジメン(術前術後療法)が加わりました。尚、本ガイドライン作成時には新TNM分類(第9版)が未導入であったこと、ガイドラインとして採用されているエビデンスの大部分が旧版に基づくことから、ガイドライン検討委員会の方針として、今回の改訂では第9版については記載整備に留める方針としました。しかしながら、周術期のCQに関しては、対象となる病態を明確にするために第9版を取り入れた記載になっています。進行期の領域に関しては、EGFR遺伝子エクソン挿入変異に対する新たな標的療法に関する記載が加わりました。次に、小細胞癌では、進展型領域で全身状態別の治療法に関する推奨の明確化、再発領域ではT細胞誘導性作用を有する二重特異性抗体に関する記載を加えました。胸膜中皮腫に関しては、今回のガイドラインから国内外の規約に準じて「悪性」という用語を除くことにし、外科療法に関する記載整理を行っています。最後に胸腺腫瘍については樹形図の変更はありませんが、進行・再発胸腺癌に関する免疫チェックポイント阻害薬に関する新たなエビデンスを加えました。

 2024年は、円安による急激な物価高、および深刻な資源不足ががん診療にまで及ぶようになっており、診療ガイドラインの果たす役割はさらに大きくなると思われます。このような中、外部評価としてAGREE II評価では、適用可能性に関して潜在的な資源の影響に対する配慮、ガイドラインに対する監査の基準が不明確であることが指摘されています。さらに、一般市民の価値観や希望に対する調査も求められています。今後、本ガイドラインをより成熟させるために、これらの指摘事項についてひとつひとつ丁寧に解決していくことが必要であると考えます。皆様のご意見、評価とともに、英知についてもお借りできれば幸いです。
 本ガイドライン作成にあたり、本学会のアーリーキャリア支援委員会との共同事業として「肺癌診療ガイドライン検討委員会への若手会員を対象としたオブザーバー参加企画」を新たに実施し、22名が参加されました。文献の抽出から推奨文、推奨度の決定に至る一連の作業に触れることでガイドライン作成の過程やエビデンスレベルの解釈などを学んで頂いたことは、本人のスキルアップはもちろん、ガイドライン作成の継続性、および質の向上の両面において本学会にとって大きな財産になったと考えています。今後も新たな提案については積極的に取り組んでいきたいと思います。

 今後、本ガイドラインに準じた患者さん向けの「患者さんと家族のための肺がんガイドブック−悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む−」の改訂版を作成する予定です。患者さんおよびご家族の方に対して適切な医療情報を提供できるものと考えます。医療従事者の方も是非利用して頂ければ幸いです。

 末筆となりましたが、本ガイドラインの作成のために、多くの業務を抱え、休日や深夜など僅かな私的な時間を捧げてご尽力を賜りました作成委員の皆様に深く感謝申し上げます。さらに本学会理事会およびパブリックコメントにて貴重なご意見を寄せて下さった多くの方々のご協力に深甚なる感謝の意を表します。

2024年9月

特定非営利活動法人日本肺癌学会 理事長 池田 徳彦
ガイドライン検討委員会 委員長 石川 仁