甲状腺腫瘍の遺伝子分類 −基礎から実臨床まで−

臨床医も必携! 遺伝子レベルで甲状腺腫瘍診療の未来を切りひらく!

著 者 菅間 博 / 千葉 知宏
定 価 5,940円
(5,400円+税)
発行日 2025/09/26
ISBN 978-4-307-20491-0

B5判・128頁・図数:11枚・カラー図数:71枚

在庫状況 なし

ついに誕生! 甲状腺腫瘍全体を遺伝子変化に基づき整理した「甲状腺腫瘍の遺伝子分類」、日本初の解説書。甲状腺腫瘍の「遺伝子診断のアルゴリズム」から始まり診断の流れと概要を把握。そして「基礎と病理」「遺伝子分類」「遺伝子変化」「実例」の順に学び理解を深める。Key Pointとともに図表を用いてわかりやすく解説され、基礎から臨床応用までを網羅する。甲状腺腫瘍診療に革新を起こす一冊。
I 甲状腺腫瘍の遺伝子分類の概説
 1.甲状腺腫瘍の遺伝子分類の概説
  (1)遺伝子診断のアルゴリズム
  (2)概説

II 甲状腺腫瘍の基礎・病理
 2.甲状腺の発生、組織とホルモン合成
 3.腫瘍の病理学
 4.腫瘍の標準的な分類
 5.甲状腺癌の疫学
 6.甲状腺腫瘍の組織診断
  (1)分類の基本的な枠組みと変遷
  (2)腫瘍様病変・濾胞性腫瘍
  (3)乳頭癌・低分化癌・未分化癌
  (4)髄様癌・その他の腫瘍
 7.甲状腺腫瘍の細胞診断

III 腫瘍の遺伝子分類の基礎
 8.遺伝子変異の種類
 9.遺伝子変異の原因
 10.遺伝子変化の解析法
 11.甲状腺腫瘍のドライバー変異と細胞増殖シグナル
 12.甲状腺腫瘍のリスク変異とTERTプロモーター

IV 甲状腺腫瘍の遺伝子変化
 13.腫瘍様病変の遺伝子変化
 14.RAS系腫瘍の遺伝子変化
 15.BRAF系腫瘍の遺伝子変化
 16.膨大細胞腫瘍の遺伝子変化
 17.高異型度分化癌、低分化癌、未分化癌の遺伝子変化
 18.甲状腺髄様癌の遺伝子変化
 19.特殊な組織型の遺伝子変化

V 甲状腺腫瘍の遺伝子分類の実際
 20.細胞診・組織診検体からの遺伝子標本調製
 21.甲状腺腫瘍の遺伝子検査の現況
  (1)米国の現況
  (2)日本の現況
 22.甲状腺腫瘍の遺伝子変異と分子標的薬
 23.甲状腺腫瘍の超音波検査
 24.甲状腺遺伝子分類の実例

略語一覧
索引
 腫瘍が遺伝子の病気であることは、現代医学の常識である。これまで特定臓器の腫瘍が遺伝子変化に基づいて分類されることはなかった。本書は甲状腺の腫瘍全体を遺伝子変化に基づき整理した、「甲状腺腫瘍の遺伝子分類」の本邦初の解説書である。
 甲状腺腫瘍の分類は、これまで病理組織学的な所見を基になされ、さらに臨床医学的な観点が加味されて細分化され、複雑なものになっている。甲状腺を専門としない病理医や一般の臨床医にとっては難解である。また、組織診断する病理医間の個人差、地域差が生じている。その結果、実臨床上の治療方針に違いが生じ、甲状腺腫瘍の過剰診断や過剰治療の社会的な批判を受ける要因となっている。
 甲状腺は内分泌臓器で、細胞増殖と分化機能を制御する細胞内情報伝達系が比較的明瞭である。甲状腺の腫瘍発生には細胞内情報伝達物質をコードする遺伝子の変異が関わっている。甲状腺腫瘍の遺伝子変異量は少なく、変異パターンは比較的単純である。主な濾胞細胞由来腫瘍は、ドライバー遺伝子の変異からRAS系腫瘍、BRAF系腫瘍、特殊腫瘍、腫瘍様病変の4種に、さらにリスク遺伝子の変異の加算により、低・中・高リスクに分類される。これらの遺伝子変異は、次世代シーケンサーを用いて、一括で解析される。甲状腺腫瘍を、病理組織所見を確認することなく、遺伝子変化に基づいて分類、遺伝子診断することが可能である。
 本書の最初には、甲状腺腫瘍の遺伝子分類のアルゴリズムが配置されている。次に遺伝子分類の理解に必要な、基礎的項目が網羅的に記載されている。各項目は、Key Pointとともに図表を用いてわかりやすく解説されている。最後に代表的な甲状腺腫瘍の遺伝子診断の実例が提示されている。甲状腺専門の内科医、外科医、病理医だけでなく、コメディカルや医学生にも理解しやすく、この一冊で甲状腺腫瘍の遺伝子分類のすべてわかる内容となっている。
 本書は初めての甲状腺腫瘍の遺伝子分類である。米国では数種の甲状腺腫瘍の遺伝子検査が実用化、保険適用されている。国内でも細胞診標本からのNGSパネル検査の開発が進み、臨床応用が始まろうとしている。本書により、甲状腺腫瘍の遺伝子分類についての理解が進み、本邦の甲状腺腫瘍診療のレベルアップに繋がることを期待したい。

2025年8月
著者代表 菅間 博