乳腺腫瘍学 第5版

乳癌取扱い規約 第19版に準拠。乳腺診療に携わる医療者必携テキスト!

編 集 日本乳癌学会
定 価 9,240円
(8,400円+税)
発行日 2025/07/10
ISBN 978-4-307-20494-1

B5判・544頁

在庫状況 あり

「乳癌取扱い規約(第19版)」「乳癌診療ガイドライン2022年版」に準拠し、乳腺診療の最新情報を反映するとともに、治療分野では高齢者乳癌の記載を充実させた。前版からの治療法別の構成や多角的な視点からのアプローチはそのままに、知識の整理・アップデートにさらに役立つ内容とした。乳腺専門医を目指す医師だけでなく、専門医や認定医となった医師、メディカルスタッフや医学生にも必携の一冊。
『乳腺腫瘍学』について
日本乳癌学会の歩み
専門医制度と教育システム
乳癌取扱い規約の活用法―主に第19版改訂について―
乳癌診療ガイドラインの活用法
NCD登録の意義と活用

第1章 乳癌の基礎知識
1 . 疫学
2 . 乳房と腋窩の解剖と基本的な組織像
 A. 乳房の発生と解剖
 B. 正常乳房の組織像
 C. 腋窩の解剖と領域リンパ節
3 . 病理
 A. 先天異常と発達異常
 B. 上皮性腫瘍
 C. 線維上皮性腫瘍
 D. 軟部腫瘍
 E. リンパ腫および造血器腫瘍
 F. その他の組織型
 G. がんの病理学的記載事項
 H. がんのバイオマーカー評価
 I. 組織学的治療効果の判定
 J. 病理標本の取り扱い
 K. がんゲノム検査における標本選択
 L. 体腔液検体などのセルブロック診断
4 . バイオロジー
 A. 自然史、増殖・進展、がん免疫微小環境
 B. がん関連遺伝子
 C. 相同組換え修復欠損(HRD)
 COLUMN 腸内細菌叢研究の話題
5 . 女性ホルモン環境と乳腺の生理、妊孕性
6 . 検診
7 . 遺伝性乳癌

第2章 診断
1 . 問診・病歴の取り方、視触診
2 . 初診時精査の進め方(総論)
3 . 画像診断
 A. マンモグラフィ(トモシンセシスを含む)
 COLUMN 造影マンモグラフィ
 B. 超音波検査
 COLUMN Glandular tissue component(GTC)
 C. MRI
 D. PET
 E. 遠隔転移の画像診断
 COLUMN 画像診断におけるAIの利用
4 . 細胞診・組織診
 A. 細胞診・組織診の位置づけ、適応(総論)
 B. 細胞診
 C. 針生検(CNB)
 D. 吸引式組織生検(VAB)
 E. 外科的生検
 F. 転移・再発巣の組織生検
5 . リンパ節転移診断
6 . がんゲノムプロファイリング検査(CGP検査)
7 . 多遺伝子アッセイ
8 . 血中バイオマーカー
 A. 腫瘍マーカー
 B. リキッドバイオプシー

第3章 治療
1 . 良性疾患の治療
 A. 乳腺炎・膿瘍・乳腺症・異型乳管過形成
 B. 乳管内乳頭腫・乳頭部腺腫
 C. 線維腺腫・葉状腫瘍・過誤腫
 D. 乳管拡張症・腫瘍様病変
 E. 女性化乳房症
 F. 陥没乳頭
2 . 乳癌の治療体系
 A. 原発乳癌治療のプランニング
 B. 進行・再発乳癌治療のプランニング
3 . 外科的治療
 A. 乳房全切除術
 B. 乳房温存療法
 C. センチネルリンパ節生検
 D. 腋窩リンパ節郭清
 E. 鏡視下手術
 F. 乳房再建術
 G. 原発乳癌に対する低侵襲療法
 H. 非手術治療の可能性
 I. 転移・再発乳癌に対する外科治療
 J. 周術期管理
 K. 外科手術に伴う合併症
 L. 根治術後リハビリテーション
 M. 原発乳癌術後フォローアップ
 N. リンパ浮腫
4 . 薬物療法
 A. がん薬物療法(総論)
  [1]化学療法
  [2]内分泌療法
  [3]分子標的治療
  [4]免疫療法
  [5]PARP阻害薬
  [6]ジェネリック医薬品とバイオシミラー
  [7]薬剤耐性
 B. 周術期化学療法(術前治療の意義)
 C. 周術期薬物療法の適応と実際:ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌
  [1]内分泌療法の選択と治療期間
  [2]化学療法の適応と実際
  [3]術前内分泌療法の意義と展望
 D. 周術期薬物療法の適応と実際:HER2陽性乳癌
 E. 周術期薬物療法の適応と実際:トリプルネガティブ乳癌
 F. 転移・再発乳癌治療総論(シークエンス)
 G. 転移・再発乳癌治療:ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌
 H. 転移・再発乳癌治療:HER2陽性乳癌
 I. 転移・再発乳癌治療:トリプルネガティブ乳癌
 J. 臓器別治療
 K. 代表的な有害事象とその対策(支持療法)
5 . 放射線療法
 A. 乳房部分切除術後の照射
 B. 乳房全切除術後の照射
 C. 領域リンパ節への照射(主に乳房部分切除術後)
 D. 薬物療法と放射線療法のバランス
 E. 転移・再発病巣に対する放射線療法
 F. 放射線療法の有害事象
6 . 乳癌以外の乳房悪性腫瘍
7 . 特殊な病態
 A. 男性乳癌
 B. 炎症性乳癌
 C. 潜在性乳癌
 D. AYA世代の乳癌
 E. 高齢者の乳癌
8 . 緩和医療と精神的ケア
 A. 症状緩和と終末期医療
 B. サイコオンコロジー

第4章 医療の質
1 . チーム医療・クリティカルパス
2 . Shared decision making―Informed consentとの違い―
3 . クオリティオブライフ/患者報告型アウトカム
4 . サバイバーシップ(乳がん患者のサポート)
5 . 医療安全
6 . 医療倫理
7 . 臨床試験(臨床研究)
8 . 臨床試験を読み解くための統計知識
9 . 利益相反
10 . 医療保障・医療経済

索引
 本書「乳腺腫瘍学」は、乳腺領域の専門医を目指す際に、基礎・疫学、診断、治療、さらに医療の質に関わる幅広い知識を網羅する教科書として、2012年に初版が日本乳癌学会主導で刊行されました。以降、2016年に第2版が、2020年に第3版が、2022年に第4版が刊行され、今年2025年に第5版の発刊を迎えております。
 乳腺領域を取り巻く環境は大きく様変わりし、治療におきましてはサブタイプを基本にした新たな薬剤の開発、外科手技や放射線診断・治療をはじめとする新規医療技術の導入、遺伝子変異に応じた薬剤や予防切除といった治療選択、など急速な発展を遂げております。また、チーム医療やサバイバーシップ、医療安全・医療倫理や医療経済など専門医として学んでおくべき知識や領域が広がり、多様化しています。
 これらを幅広く包括して、各領域の第一人者の皆様により詳細な解説がなされている本書は、乳腺領域の専門医を目指す皆様にはもちろんのこと、乳腺診療に関わるすべての方々が最新の情報や知識を学ぶためのツールとしてぜひご活用いただければと願っております。日本乳癌学会では、本書に加えまして「乳癌診療ガイドライン」、「乳癌取扱い規約」も発刊しております。「乳癌診療ガイドライン」は最新情報がWEB版で適宜更新されており、急速な時代の流れに遅れないよう工夫されております。また、「乳癌取扱い規約」は、今年2025年に第19版が出版されており、病理との連携がますます深まるものと期待しております。さらに、英文誌である「Breast Cancer」も刊行しており、国内外からの最先端の研究成果を閲覧することができます。本書と合わせまして、これらもぜひご活用いただければ幸いです。
 最後になりますが、本書の作成にご尽力いただきました各領域の執筆者の皆様、教育・研修委員会委員の皆様、および金原出版の皆様に心より厚く御礼申し上げます。

2025年6月
日本乳癌学会 理事長 石田 孝宣