臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第7版

臨床・病理ともに10年ぶりの大改訂が行われた最新版

編 集 日本肝癌研究会
定 価 4,400円
(4,000円+税)
発行日 2025/11/05
ISBN 978-4-307-20495-8

B5判・144頁・図数:10枚・カラー図数:89枚

在庫状況 なし

病理ではWHO分類を反映した亜型・亜分類の追加とそれに伴う新規写真の追加、生検診断の章の新設などの大改訂が行われた。臨床では肝癌治療効果判定基準、アブレーション、経動脈的治療、全身薬物療法の項目が改訂された。また、近年の薬物療法の進歩を踏まえて、日本肝胆膵外科学会との合同事業で提唱された「肝細胞癌の腫瘍学的切除可能性分類」、日本肝癌研究会のワーキンググループが作成した「Conversionの定義」の項目を新たに収載している。
略語表

総説
 I.目的
 II.対象
 III.記載法の原則

第I部 臨床的事項
A.解剖学的事項
 I.肝葉と肝区域
 II.リンパ節
 III.胆管
B.画像診断所見
 I.占居部位(Image-Lo)
 II.腫瘍個数(Image-Number)
 III.大きさ(Image-Size)
 IV.辺縁(Image-Border)
 V.腫瘍内部(Image-Inside)
 VI.血管侵襲(Image-V)・胆管侵襲(Image-B)
 VII.遠隔臓器転移(Image-M)
C.臨床検査所見
 I.肝障害度(liver damage)
 II.食道・胃静脈瘤の内視鏡所見(EV)
 III.針生検による肝線維化の組織所見(f)
D.肉眼分類
 I.肝細胞癌
 II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
 III.粘液嚢胞腺癌
E.手術所見、切除標本肉眼所見
 I.占居部位(Lo)
 II.大きさ、個数、存在範囲(H)
 III.肉眼所見
F.肝切除術
 I.肝切除範囲(Hr)
 II.リンパ節郭清(D)
 III.癌の遺残(R)
G.アブレーション
H.経動脈的治療
I.全身薬物療法
 I.肝細胞癌
 II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
J.進行度分類(Stage)
 I.肝細胞癌
 II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
  参考:肝癌統合ステージング
K.肝細胞癌の腫瘍学的切除可能性分類(Expert Consensus 2023)
L.Conversion の定義
 I.Conversion Surgery の定義
 II.Neoadjuvant therapy の定義
 III.Conversion therapy としてのアブレーションの定義
 IV.TACE の扱いについて
M.肝切除術の治癒度
 I.肝細胞癌
 II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
N.肝癌治療効果判定基準
 I.対象
 II.記載法
 III.標的結節の直接治療効果判定
 IV.治療効果の総合評価
 V.細則
O.再発肝癌
P.肝癌症例の統計的処理

第II部 病理組織学的事項
A.材料の取扱い
 I.手術材料の取扱いおよび検索方法
 II.剖検材料の取扱いおよび検索方法
B.肝癌の分類
 I.分類の総則
 II.肝細胞癌
 III.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
 IV.細胆管細胞癌
 V.粘液嚢胞腺腫・粘液嚢胞腺癌(粘液嚢胞性腫瘍:MCN)
 VI.混合型肝癌
 VII.肝芽腫
 VIII.未分化癌
 IX.その他
C.非癌部の組織学的所見

第III部 肝結節性病変の生検診断
 I.本項の目的
 II.肝腫瘍生検施行時および検査提出時の注意点
 III.肝腫瘍生検組織診断報告

病理写真
第7版 序
 原発性肝癌取扱い規約は1983年6月に初版が刊行され、肝癌の診断・治療の発達に伴い、適宜改訂されてきた。直近では第6版補訂版が2019年3月に発刊されたが、第6版は2015年7月まで遡り、この第7版は約10年ぶりの大改訂ということになる。
 まず、第II部 病理組織学的事項では2019年に改訂されたWHO消化器腫瘍分類を反映した修正が行われた。肝細胞癌では臨床病理学的あるいは分子遺伝学的な特徴に基づく8つの亜型が、肝内胆管癌ではSmall duct typeとLarge duct type亜分類が追記され、それに伴って多数の写真が追加された。前版掲載写真もこれを機に大幅に差し替えられた。また、第III部として肝結節性病変の生検診断が新設された。
 肝癌治療効果判定基準では国際共同治験や臨床試験において、RECIST version1.1やmodifiedRECISTが一般的に使用されている点を鑑み、両基準を追記した。一方で肝細胞癌の特性を考慮した我が国独自のRECICLにも一定の有用性があると考えられるため、これら3基準の相違をまとめた比較表を掲載した。それぞれの長短所を理解し、個々の条件に応じて適切に使い分ける一助となれば幸いである。今回、十分な時間が取れなかったが、薬物療法と並び、進歩著しい放射線療法の効果判定基準の整備については、次版の課題としたい。
 最近の肝細胞癌に対する薬物療法の目覚ましい進歩は衆知の通りだが、これを応用して薬物療法と既存の局所療法との組み合わせが積極的に実施されている。このような状況を踏まえ、日本肝胆膵外科学会と日本肝癌研究会の合同事業として「いわゆるborderline resectable HCCに関するWG」が立ち上げられ、2023年11月に「肝細胞癌の腫瘍学的切除可能性分類(ExpertConsensus 2023)」が提唱された。さらに薬物療法が奏効して、根治治療につなげるConversion therapyの概念を整備する必要性が高まり、日本肝癌研究会主導のWGにより、2024年7月に「HCC conversion治療の定義」が発表された。これら新定義は本第7版に追加収載された。
 その他、必要に応じ、各章で細かい修正・追記がなされている。いずれも膨大な労力と時間を要する作業だったと想像されるが、取扱い規約委員会のすべての委員の先生方には深く感謝する。また、本委員会の委員長は第6版補訂版発刊時の國土典宏先生と第7版発刊時の私との間に島田光生先生(徳島大学消化器・移植外科教授:当時)がおられた。第7版の改訂作業の大部分は島田前委員長の指揮下に遂行され、その功績大である点を付記しておきたい。
 最後に本改訂事業に多大なるご理解とご協力をいただいた日本肝癌研究会の会員のみなさま、膨大な編集・校正作業にご尽力いただいた金原出版 須之内和也氏に篤く御礼申し上げます。

2025年10月
原発性肝癌取扱い規約委員会 委員長
長谷川 潔