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十二指腸癌診療ガイドライン 2025年版 第2版
十二指腸癌診療の指標となるガイドラインを4年ぶりに改訂

編 集 | 十二指腸癌診療ガイドライン作成委員会 |
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定 価 | 3,630円 (3,300円+税) |
発行日 | 2025/09/26 |
ISBN | 978-4-307-20497-2 |
B5判・132頁・図数:6枚・カラー図数:7枚
在庫状況 | なし |
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十二指腸癌診療における本邦初のガイドラインとして作成された初版を4年ぶりに改訂した。腹腔鏡・内視鏡合同手術のCQなどを新たに追加した他、治療手技や薬物療法の進歩に伴い集積された最新のエビデンスを取り入れて、全面的にCQをアップデートしている。十二指腸癌は希少癌に属するが、近年の診断モダリティの進歩により、発見される機会の増加が予想される。初版に引き続き、専門医のみならず十二指腸癌診療に携わるすべての臨床医に対し、広く十二指腸癌診療の指標を示した。
推奨決定会議における投票の棄権
総論・CQ 担当者一覧
本ガイドラインについて
1 本ガイドラインの目的
2 改訂の目的
3 本ガイドラインの適応が想定される対象者、および想定される利用対象者
4 本ガイドラインを使用する場合の注意事項
5 本ガイドラインの特徴
6 エビデンス収集方法(文献検索)
7 エビデンスの評価・システマティックレビューの方法
8 推奨決定の方法
9 ガイドライン作成作業の実際
10 外部評価およびパブリックコメント
11 今後の改訂
12 資金
13 利益相反に関して
14 ガイドライン普及と活用促進のための工夫
15 協力者
16 参考文献
CQ/ ステートメント一覧
総論
診断
I 治療前診断
II 術後、再発・転移のモニタリング
III 病理診断
治療
I 内視鏡治療
II 外科的治療
III 薬物療法
診断・治療アルゴリズム
診断アルゴリズム
治療アルゴリズム
各論
診断・内視鏡治療 CQ1-1 十二指腸癌の疫学について
診断・内視鏡治療 CQ1-2 十二指腸癌のリスクは何か?
診断・内視鏡治療 CQ2-1 十二指腸腺腫に対し治療は推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ2-2 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍における腺腫と癌の鑑別に生検を行うことは推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ3-1 粘膜内癌と粘膜下層癌の鑑別に白色光観察に加えて超音波内視鏡を行うことは推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ3-2 転移診断には造影CT 検査が推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ4 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対するESD は推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ5 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する内視鏡治療後の偶発症予防は推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ6-1 内視鏡治療後に粘膜下層浸潤や脈管侵襲陽性と判断された場合に、追加外科的治療が推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ6-2 内視鏡治療後局所再発ならびに異時性多発の早期発見のために、内視鏡によるサーベイランスは推奨されるか?
外科治療 CQ1 十二指腸癌に対する外科的治療においてリンパ節郭清は推奨されるか?
外科治療 CQ2 十二指腸球部癌と水平部癌に対して膵頭十二指腸切除以外の術式は推奨されるか?
外科治療 CQ3 十二指腸癌に対する低侵襲手術(腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術)は推奨されるか?
内視鏡・外科治療 CQ1 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術は推奨されるか?
内視鏡・外科治療 CQ2 閉塞症状を伴う切除不能十二指腸癌に対する消化管吻合術や内視鏡的ステント挿入は推奨されるか?
薬物療法 CQ1 切除可能十二指腸癌を含む小腸癌に周術期補助療法を行うことは推奨されるか?
薬物療法 CQ2 切除不能・再発十二指腸癌を含む小腸癌に対して遺伝子パネル検査を行うことは推奨されるか?
薬物療法 CQ3 切除不能・再発十二指腸癌を含む小腸癌に対して一次薬物療法は推奨されるか?
薬物療法 CQ4 切除不能・再発十二指腸癌を含む小腸癌に対して二次治療を含む後方治療は推奨されるか?
検索式
索引
総論・CQ 担当者一覧
本ガイドラインについて
1 本ガイドラインの目的
2 改訂の目的
3 本ガイドラインの適応が想定される対象者、および想定される利用対象者
4 本ガイドラインを使用する場合の注意事項
5 本ガイドラインの特徴
6 エビデンス収集方法(文献検索)
7 エビデンスの評価・システマティックレビューの方法
8 推奨決定の方法
9 ガイドライン作成作業の実際
10 外部評価およびパブリックコメント
11 今後の改訂
12 資金
13 利益相反に関して
14 ガイドライン普及と活用促進のための工夫
15 協力者
16 参考文献
CQ/ ステートメント一覧
総論
診断
I 治療前診断
II 術後、再発・転移のモニタリング
III 病理診断
治療
I 内視鏡治療
II 外科的治療
III 薬物療法
診断・治療アルゴリズム
診断アルゴリズム
治療アルゴリズム
各論
診断・内視鏡治療 CQ1-1 十二指腸癌の疫学について
診断・内視鏡治療 CQ1-2 十二指腸癌のリスクは何か?
診断・内視鏡治療 CQ2-1 十二指腸腺腫に対し治療は推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ2-2 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍における腺腫と癌の鑑別に生検を行うことは推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ3-1 粘膜内癌と粘膜下層癌の鑑別に白色光観察に加えて超音波内視鏡を行うことは推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ3-2 転移診断には造影CT 検査が推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ4 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対するESD は推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ5 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する内視鏡治療後の偶発症予防は推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ6-1 内視鏡治療後に粘膜下層浸潤や脈管侵襲陽性と判断された場合に、追加外科的治療が推奨されるか?
診断・内視鏡治療 CQ6-2 内視鏡治療後局所再発ならびに異時性多発の早期発見のために、内視鏡によるサーベイランスは推奨されるか?
外科治療 CQ1 十二指腸癌に対する外科的治療においてリンパ節郭清は推奨されるか?
外科治療 CQ2 十二指腸球部癌と水平部癌に対して膵頭十二指腸切除以外の術式は推奨されるか?
外科治療 CQ3 十二指腸癌に対する低侵襲手術(腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術)は推奨されるか?
内視鏡・外科治療 CQ1 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術は推奨されるか?
内視鏡・外科治療 CQ2 閉塞症状を伴う切除不能十二指腸癌に対する消化管吻合術や内視鏡的ステント挿入は推奨されるか?
薬物療法 CQ1 切除可能十二指腸癌を含む小腸癌に周術期補助療法を行うことは推奨されるか?
薬物療法 CQ2 切除不能・再発十二指腸癌を含む小腸癌に対して遺伝子パネル検査を行うことは推奨されるか?
薬物療法 CQ3 切除不能・再発十二指腸癌を含む小腸癌に対して一次薬物療法は推奨されるか?
薬物療法 CQ4 切除不能・再発十二指腸癌を含む小腸癌に対して二次治療を含む後方治療は推奨されるか?
検索式
索引
<2025年版 序文>
日本癌治療学会でガイドライン作成改訂委員長を仰せつかったのを契機に、2017年にがん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」に採択いただき、さまざまな希少癌のガイドラインを作らせていただくことになった。私が専門とする消化器の領域では元来罹患数の多い癌が多くこの研究の対象となりにくいため、これまでなじみのなかった診療領域の先生方にアポイントをいただき、エビデンスが極めて乏しい中でガイドラインを作っていただくという無理なお願いをして回った。そうした中で十二指腸癌のガイドラインを作ることを思いつきはしたが、当初周囲の外科医の反応は芳しくなかった。消化器癌の領域では、通常は豊富なエビデンスを基にガイドラインを作成・改訂することができるのだから、敢えて希少癌のようなやっかいな領域に踏み込むには覚悟が要ったことであろう。作成委員長をお引き受けいただいた庄雅之教授には改めて感謝申し上げる次第である。
とは言え、ガイドラインの作成が開始された当初には内視鏡医の熱意に圧倒された印象がある。そして、実は十二指腸疾患の分野が内視鏡医の世界ではそれなりに盛り上がっていることを日本消化器病学会等に出席して知ることになった。胃癌検診の柱が内視鏡検査になって久しいが、精度の高いスクリーニング検査を推進すれば本来の目的とは異なる疾患も一定の頻度で検出されるものであり、十二指腸疾患の診断の契機としてはそうしたケースが多いことも、本ガイドラインに付随した研究でわかってきた。このような形で偶然診断された病変の中には、外科手術によって切除するには益と害のバランスが悪そうなものも含まれるが、さりとて十二指腸病変の内視鏡的切除は難易度が高く、一歩間違えると重篤な合併症に繋がりうる。なかなか悩ましい一方で、幸い緊急性にも乏しいことから結果的に適切な集約化がなされているおかげであろうか、内視鏡的切除の超スペシャリストのもとでは十二指腸腫瘍は今やそれほど希少な疾患ではなくなっている模様である。そして、そのようなHigh volume centerで内視鏡医とともに腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)などを手がけつつ、時には内視鏡的切除の合併症などにも対応してくれている一部の上部消化管の外科医もまた、このニッチな領域に高い関心を持ってくれていた。
一方、そうやって芽が摘まれていることもあって、本格的な外科手術の適応になるところまで増大した十二指腸癌は文字通り希少癌である。内視鏡的切除やLECSで対処できない病変はほぼ膵頭十二指腸切除術の適応になってしまうので、上部消化管よりは肝胆膵外科を専門とする外科医によって手術がなされているケースも多いと思われるが、個々の施設が持っているデータ量は少なく、ガイドライン2021年版の作成はエビデンスというよりも活発な合議によるコンセンサスを重視して手探りで進められた感がある。この版は出版後にAGREE II の各項目に沿ってがん診療ガイドライン評価委員会の評価を受けたが、こうした努力の甲斐もあり、希少癌ではなかなかこれ以上のものは求められないような高い評価をいただくことができた。
その間、2期6年間にわたったがん対策推進総合研究事業は、十二指腸癌を含むいくつかの希少癌のガイドラインを生み出すという成果と共に終了し、各年度末に相当な時間と労力をかけていた報告書の作成もようやく一段落したはずだったのだが、こうした研究は終了後も一定期間社会に及ぼす影響が続くはずとする国の意向のもと、さらに5年間定期的に簡略な報告を求められるという厳しい現実を後から知ることとなった。毎年何とか成果を拾い集めて報告し続けているものの、乏しいエビデンスを絞りつくして無理矢理作成するしかない希少癌のガイドラインの改訂など、容易に成し遂げられるものではない。そうした中で、十二指腸癌診療ガイドラインにおいてはここに見事に第2版(2025年版)が出来上がったため、誇らしく報告書に書き込むことができた。私としてはgood job!! と叫びたい気分である。山上裕機統括委員、庄作成委員長以下作成委員、協力委員、事務局の方々の熱意には心底感服した。ここに改めて深く御礼申し上げる次第である。
国立病院機構名古屋医療センター
小寺 泰弘
<2025年版の序>
この度、十二指腸癌診療ガイドラインの第2版となる2025年版を刊行する運びとなりました。初版(2021年版)の発刊から4年が経過し、この間に蓄積された新たな知見を反映した改訂版をお届けできますことを、大変幸甚に存じます。
十二指腸癌は希少癌でありながら、上部消化管内視鏡検査の普及等により発見される機会が増加しており、その診断と治療に対する関心も高まっています。特に表在性病変に対する内視鏡治療の進歩は目覚ましく、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)などの技術革新により、従来は外科的切除が必要であった症例に対しても低侵襲な治療選択肢が提供されるようになりました。
第2版では、初版から大幅な構成の見直しを行いました。診断・内視鏡治療領域では、十二指腸腺腫の治療適応をより明確化し、生検の適応についても具体的な推奨を示しました。内視鏡治療については、ESDの適応基準を病変の大きさや施設の経験に応じて細分化し、偶発症予防策についても具体的な手技を推奨しています。外科治療では、新たに低侵襲手術に関するクリニカルクエスチョンを設け、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術の現状と課題を整理しました。薬物療法領域では、遺伝子パネル検査やバイオマーカーに基づく個別化医療の重要性を強調し、免疫チェックポイント阻害薬を含む最新の治療戦略を盛り込みました。
希少癌のガイドライン作成は、限られたエビデンスの中で最適な診療指針を示すという困難な作業です。しかし、この分野に情熱を注ぐ多くの専門家のご協力により、現時点における実臨床に即した実用的なガイドラインを完成させることができました。本ガイドラインが、十二指腸癌の診療に携わるすべての医療従事者にとって有用な指針となり、患者さんの予後改善と生活の質向上に寄与することを心より願っています。
最後に、本ガイドラインの作成にあたり、ご指導いただきました統括委員の小寺泰弘先生、山上裕機先生、多大なご貢献をいただきました作成委員、協力委員の皆様、ならびにご評価いただきました皆様、事務局の方々に深く感謝申し上げます。関係各位のご尽力なくしては本ガイドラインの完成はありませんでした。改めて心より御礼申し上げます。
2025年6月吉日
十二指腸癌診療ガイドライン作成委員会 委員長
庄 雅之
日本癌治療学会でガイドライン作成改訂委員長を仰せつかったのを契機に、2017年にがん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」に採択いただき、さまざまな希少癌のガイドラインを作らせていただくことになった。私が専門とする消化器の領域では元来罹患数の多い癌が多くこの研究の対象となりにくいため、これまでなじみのなかった診療領域の先生方にアポイントをいただき、エビデンスが極めて乏しい中でガイドラインを作っていただくという無理なお願いをして回った。そうした中で十二指腸癌のガイドラインを作ることを思いつきはしたが、当初周囲の外科医の反応は芳しくなかった。消化器癌の領域では、通常は豊富なエビデンスを基にガイドラインを作成・改訂することができるのだから、敢えて希少癌のようなやっかいな領域に踏み込むには覚悟が要ったことであろう。作成委員長をお引き受けいただいた庄雅之教授には改めて感謝申し上げる次第である。
とは言え、ガイドラインの作成が開始された当初には内視鏡医の熱意に圧倒された印象がある。そして、実は十二指腸疾患の分野が内視鏡医の世界ではそれなりに盛り上がっていることを日本消化器病学会等に出席して知ることになった。胃癌検診の柱が内視鏡検査になって久しいが、精度の高いスクリーニング検査を推進すれば本来の目的とは異なる疾患も一定の頻度で検出されるものであり、十二指腸疾患の診断の契機としてはそうしたケースが多いことも、本ガイドラインに付随した研究でわかってきた。このような形で偶然診断された病変の中には、外科手術によって切除するには益と害のバランスが悪そうなものも含まれるが、さりとて十二指腸病変の内視鏡的切除は難易度が高く、一歩間違えると重篤な合併症に繋がりうる。なかなか悩ましい一方で、幸い緊急性にも乏しいことから結果的に適切な集約化がなされているおかげであろうか、内視鏡的切除の超スペシャリストのもとでは十二指腸腫瘍は今やそれほど希少な疾患ではなくなっている模様である。そして、そのようなHigh volume centerで内視鏡医とともに腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)などを手がけつつ、時には内視鏡的切除の合併症などにも対応してくれている一部の上部消化管の外科医もまた、このニッチな領域に高い関心を持ってくれていた。
一方、そうやって芽が摘まれていることもあって、本格的な外科手術の適応になるところまで増大した十二指腸癌は文字通り希少癌である。内視鏡的切除やLECSで対処できない病変はほぼ膵頭十二指腸切除術の適応になってしまうので、上部消化管よりは肝胆膵外科を専門とする外科医によって手術がなされているケースも多いと思われるが、個々の施設が持っているデータ量は少なく、ガイドライン2021年版の作成はエビデンスというよりも活発な合議によるコンセンサスを重視して手探りで進められた感がある。この版は出版後にAGREE II の各項目に沿ってがん診療ガイドライン評価委員会の評価を受けたが、こうした努力の甲斐もあり、希少癌ではなかなかこれ以上のものは求められないような高い評価をいただくことができた。
その間、2期6年間にわたったがん対策推進総合研究事業は、十二指腸癌を含むいくつかの希少癌のガイドラインを生み出すという成果と共に終了し、各年度末に相当な時間と労力をかけていた報告書の作成もようやく一段落したはずだったのだが、こうした研究は終了後も一定期間社会に及ぼす影響が続くはずとする国の意向のもと、さらに5年間定期的に簡略な報告を求められるという厳しい現実を後から知ることとなった。毎年何とか成果を拾い集めて報告し続けているものの、乏しいエビデンスを絞りつくして無理矢理作成するしかない希少癌のガイドラインの改訂など、容易に成し遂げられるものではない。そうした中で、十二指腸癌診療ガイドラインにおいてはここに見事に第2版(2025年版)が出来上がったため、誇らしく報告書に書き込むことができた。私としてはgood job!! と叫びたい気分である。山上裕機統括委員、庄作成委員長以下作成委員、協力委員、事務局の方々の熱意には心底感服した。ここに改めて深く御礼申し上げる次第である。
国立病院機構名古屋医療センター
小寺 泰弘
<2025年版の序>
この度、十二指腸癌診療ガイドラインの第2版となる2025年版を刊行する運びとなりました。初版(2021年版)の発刊から4年が経過し、この間に蓄積された新たな知見を反映した改訂版をお届けできますことを、大変幸甚に存じます。
十二指腸癌は希少癌でありながら、上部消化管内視鏡検査の普及等により発見される機会が増加しており、その診断と治療に対する関心も高まっています。特に表在性病変に対する内視鏡治療の進歩は目覚ましく、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)などの技術革新により、従来は外科的切除が必要であった症例に対しても低侵襲な治療選択肢が提供されるようになりました。
第2版では、初版から大幅な構成の見直しを行いました。診断・内視鏡治療領域では、十二指腸腺腫の治療適応をより明確化し、生検の適応についても具体的な推奨を示しました。内視鏡治療については、ESDの適応基準を病変の大きさや施設の経験に応じて細分化し、偶発症予防策についても具体的な手技を推奨しています。外科治療では、新たに低侵襲手術に関するクリニカルクエスチョンを設け、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術の現状と課題を整理しました。薬物療法領域では、遺伝子パネル検査やバイオマーカーに基づく個別化医療の重要性を強調し、免疫チェックポイント阻害薬を含む最新の治療戦略を盛り込みました。
希少癌のガイドライン作成は、限られたエビデンスの中で最適な診療指針を示すという困難な作業です。しかし、この分野に情熱を注ぐ多くの専門家のご協力により、現時点における実臨床に即した実用的なガイドラインを完成させることができました。本ガイドラインが、十二指腸癌の診療に携わるすべての医療従事者にとって有用な指針となり、患者さんの予後改善と生活の質向上に寄与することを心より願っています。
最後に、本ガイドラインの作成にあたり、ご指導いただきました統括委員の小寺泰弘先生、山上裕機先生、多大なご貢献をいただきました作成委員、協力委員の皆様、ならびにご評価いただきました皆様、事務局の方々に深く感謝申し上げます。関係各位のご尽力なくしては本ガイドラインの完成はありませんでした。改めて心より御礼申し上げます。
2025年6月吉日
十二指腸癌診療ガイドライン作成委員会 委員長
庄 雅之